100億光年以上の彼方にある二重クエーサーを発見 NASA

2023年4月11日 08:21

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ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、宇宙が誕生してわずか30億年だった頃に存在した一対のクエーサー(画像: NASAの発表資料より (c) NASA、ESA、Yu-Ching Chen (UIUC)、Hsiang-Chih Hwang (IAS)、Nadia Zakamska (JHU)、Yue Shen (UIUC)

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、宇宙が誕生してわずか30億年だった頃に存在した一対のクエーサー(画像: NASAの発表資料より (c) NASA、ESA、Yu-Ching Chen (UIUC)、Hsiang-Chih Hwang (IAS)、Nadia Zakamska (JHU)、Yue Shen (UIUC)[写真拡大]

 クエーサーとは、銀河並みの強いエネルギーを発している非常に古く遠方にある天体だが、地球上では恒星のように点としてしか捉えることができないため、謎多き存在である。現在では銀河の中心核で非常に大きなエネルギーを発している存在と考えられているが、はじめて発見されたのはたかだか50年ほど前だ。

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 確認されている数は14万個ほどしかなく、宇宙に無数に存在している銀河の数と比べれば非常にわずかで、このため謎の解明も非常に困難な現状にある。

 NASAは6日、宇宙誕生から30億年しか経過していない時期に存在した二重クエーサーを発見したと発表した。今回発見された二重クエーサーは、J0749+2255と呼ばれ、イリノイ大学の研究者らによってハッブル宇宙望遠鏡や地上の複数の望遠鏡で観測され、その存在が明らかにされたものだ。

 この2つのクエーサーは、地球から100億光年以上離れた宇宙空間にあり、2つの距離はたった1万光年ほどしかないという。クエーサーがこのように非常に接近した状態で発見されたのははじめてのことであり、珍しいことだ。

 今後同じような存在が続々と発見されてゆけば、銀河が巨大化していくプロセスが、銀河同士の合体によるものであるという仮説を裏付ける非常に有力な証拠となっていくことだろう。

 クエーサーの中心には、超巨大ブラックホールが存在していると考えられているが、宇宙が誕生して間もないころには、このようなブラックホールが無数に存在していたのかもしれない。また、クエーサーは銀河に成長する前段階の天体なのかもしれない。

 今回発見された二重クエーサーは、100億年以上前の姿であり、現在は別の形へと進化を遂げている。だが、人類はそれを直接確かめることができない。クエーサーや銀河の進化のプロセスを確かめるには、様々な距離にあるクエーサーや銀河をできるだけたくさん観測するしか手がないのだ。

 だが銀河はあらゆる距離で観測可能なのに、クエーサーは非常に遠方の宇宙でしか捉えることができない。クエーサーの謎の解明に人類は当面手こずることになるだろう。なお今回の研究論文は雑誌Natureに投稿されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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