難航する日産とルノーの出資比率見直し交渉、追い詰められたのは日産か? ルノーか?

2022年11月11日 11:12

印刷

(c) 123rf / askarimullin

(c) 123rf / askarimullin[写真拡大]

 仏ルノーグループは、予定通り8日にフランスで投資家向けの事業説明会を開催した。ルカ・デメオCEO(最高経営責任者)は、今後の計画を5つのテーマに分けて説明した。

【こちらも】日産とルノーの出資見直しで、対等な関係構築へ (下)

 (1)電気自動車(EV)及びソフトウエアについて、(2)究極的な排ガスゼロ車について、(3)新モビリティ(金融も含む)、データベース、エネルギーのサービスについて、(4)バッテリーを含む材料の循環経済(サーキュラーエコノミー)について、(5)未来を志向した低炭素エンジン車とハイブリッド車の開発継続についてだ。

 今後のルノーグループを託す5つのテーマは、更に具体的な説明が続いた。(1)では、現在までルノーが担って来たEV事業は、1年後と想定する新規株式公開(IPO)で設立される新会社(アンペア)に移行する。

 同社に対しては米クアルコムが出資してルノーブランドのソフトウエア定義車両(SDV)を共同開発する。グーグルもSDV用のアンドロイドプラットフォーム等で協力する。

 (2)の究極的な排ガスゼロ車は、F1(フォーミュラ1)への参戦実績を持つ、グループ企業Alpine(アルピーヌ)の守備範囲とする。(3)は21年1月に新ブランドとしてルノーが生み出したMobilize(モビライズ)が担当する。モビライズは当初からモビリティやエネルギーサービスに特化している。

 (4)のサーキュラーエコノミーは、設立間もないグループ新会社の「The Future Is NEUTRAL」が、製造の各段階でのリサイクル技術の提供を行う。(5)はルノーグループの歴史を刻んだ中核的な事業で、引き続きルノーの商用車ブランドやグループ企業であるルーマニアのDaciaが開発を継続する。別に中国の浙江吉利控股集団傘下の吉利汽車と、エンジンやHEV用パワートレーンに関わる合弁会社(サプライヤー)を設立し、「HORSEプロジェクト」と名付けて、世界を対象にしたビジネスを目指す。

 事業説明会を開催したルノーグループにとって最大の誤算は、日産と続けて来た出資比率引き下げ交渉で得られた成果を、盛り込めなかったことだ。

 (1)のEV新会社は事業説明会の最大の目玉だから、そこに日産と三菱自動車が技術と資金でどんな関わりをするのかが明示されていなければ、説得力を欠くことは否めないが、日産の幹部が「出資比率の見直しとEVへの出資はセットだ」と語っているから、良いとこ取りは出来ない。

 デメオCEOは「現在協議中で、数週間の内に説明する」と言及する他なかった。アンペアを設立するまでに残された期間が僅か1年しかないルノーと、先を急ぐ理由がない日産を比べると、ルノーが追い詰められていると感じるのは自明のことだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事