「100人乗っても大丈夫!」 稲葉製作所の「イナバ物置」の根拠

2022年1月5日 11:06

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 私にとっては、元旦の夜から2日の眠りの中で見る夢が「初夢」。今年こそ「一富士二鷹三茄子」を・・・と床についたが、73回目の今年も見ることが出来なかった。が、夢は見た。「物置」。

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 伏線はどうやら近場の親しいご主人が、大晦日に物置の上であっちこっちと動き回りながら木々の剪定をしていたのを、「イナバの物置ですね」と茶化したことらしい。そう「100人乗っても大丈夫!」のキャッチコピーで有名な、かの物置である。

 キャッチコピーは知っていた。だがその意図するところの正確な意味は知らなかった。2日、目が覚めるのと同時に調べて見た。

 稲葉製作所(以下、稲葉)の「イナバの物置」は、天井部分の負荷重力が6000kg。そう6t。人間の平均体重60kg(稲葉試算)に置き換えると、100人分。そんな経緯で生まれたのが「100人」云々のキャッチコピーだという。

 稲葉は故稲葉庄市氏が創業したプレス加工業の稲葉製作所が発端。1961年に現業を象徴する鋼製事務所机を発売、鋼製物置は1976年に登場している。80年を超える歴史を誇り、主力商品で名キャッチコピーを生み出した稲葉とはどんな会社か。株原稿を書くに際し、稲葉を取り上げた記憶はない。

 前2021年7月期は期中に上方修正、「9.3%の増収、46.2%の営業増益、73.6%の最終増益、6円の特配32円配」。対して今期は「収益認識に関する会計基準」適用。「売上高:376億8000万円、営業利益20億8000万円、純益16億7000万円、特配剥落26円配」計画。「収益認識」云々もあるが、今期の計画数値は前期の「過大収益の要因」剥落が大きな背景。前期決算を確認し今期の環境を勘案すると・・・

 『鋼製物置』―暮らしの中での収納ニーズの高まりに加え、コロナウイルス感染防止策として「物置」「ガレージ」「倉庫」の想定以上の需要増。結果、12.3%の増収/22.0%の営業増益。だが今期は需要増一巡に加え、鋼材需給逼迫/値上がりで横這い計画。

 『オフィス家具』―コロナ禍での働き方改革に伴う、積極的な提案(コンサルティング)営業が奏功。また「GIGAスクール構想(教育現場での一人に一台のPC)」の推進で、PC充電保管庫の受注が急増。結果、3.1%の増収/184.2%営業増益。も、第4四半期以降はコロナウイルス禍拡大で提案営業の機会激減、GIGAスクール構想効果にも一巡感。

 今期の収益計画を映し出し株価も昨年来高値:1500円台から大発会は200円方下値で終わった。

 だが80年余の老舗企業。伊達に襲い来る波にも屈することなく、巧みに潜り抜けてきたということか。犬山工場(愛知県。物置製造工場)で生産ラインの再構築が進んでおり、自動化推進設備体制も図られている。強風や地震に備えた耐久性強化の物置の新規投入も計画されている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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