日本でもデジタル通貨の実証実験開始へ 解禁へのスケジュールが見えて来た

2021年12月11日 11:13

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 日本でデジタル通貨を発行する環境整備が進んでいる。

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 6月3日にディーカレット(本社:東京都千代田区)が事務局となって開催されたデジタル通貨勉強会には、座長としてフューチャー(前日本銀行決済機構局長・山岡浩巳取締役)が座り、参加企業には3大メガバンク(みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行)、インターネットイニシアティブ・KDDI・セブン銀行(セブン&アイ・ホールディングス)・NTTグループ・JR東日本・森・濱田松本法律事務所が名を連ね、協力企業としてアクセンチュア・シグマクシスが参加していた。

 もちろん金融・流通・通信・運輸(森・濱田松本法律事務所は有識者の立場)の分野で日本を代表する有力企業が顔を出していたと見ることも出来るが、広がりとしての物足りなさは否めないメンバー構成だったと言えるだろう。注目すべきは、金融庁・財務省・総務省・経済産業省・日本銀行という、日本の通貨と流通をガバナンスする錚々たる顔ぶれがオブザーバーとして参加していたことだ。

 国家運営の血液とも言える通貨を、目視出来ないデジタルな存在へと切り替えるための、重要な会議と位置付けられたことが、一目瞭然と理解されるメンバー構成である。

 この勉強会は9月30日までに合計9回の会議で議論が交わされ、11月19日付の「日本の決済インフラのイノベーションとデジタル通貨の可能性」と名付けられた、最終報告書がまとめられた。

 この報告書でデジタル通貨に求められる属性として掲げられたのは、(1)安定性・安全性・インフラの信頼性(2)可用性・即時性・相互運用性(3)プログラマビリティなどを通じた発展性、であるのは至極当然であろう。

 更にまとめとして、この勉強会を発展的に拡大して新たにイオン他26の企業と自治体(気仙沼市)を加えた、「デジタル通貨フォーラム」に改組されることが公表された。

 11月24日にはデジタル通貨フォーラム名で、デジタル通貨(仮称:DCJPY)に関するホワイトペーパー(概要)とプログレスレポートが発表され、年内から年明けにかけて参加企業70社による実証実験が開始されることが公表された。

 DCJPYは銀行預金を裏付け資産とすることで信用力を確保しつつ、民間銀行が発行するデジタル通貨で、送金業務の効率化やコスト削減の可能性を探る。当面の利用者として想定されるのは国内の法人や個人とされ、早ければ22年の後半にも実用化される可能性がある。

 中国がデジタル人民元を北京五輪の2022年2月に発行し、世界にアピールすることが想定されている。デジタル人民元は国家が発行するデジタル通貨なので、民間銀行が発行するデジタル通貨とは性格を異にするが、タイミングとしては悪くない。日本に於いても社会の認知を進める時期を迎えているとの判断だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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