日揮、成長分野の競争力強化と拡大により利益倍増を目指す

2021年9月24日 07:31

印刷

 日揮ホールディングスは9月17日、IHIプラントと、医薬品プラントEPC(設計、調達、建設)事業の譲受に関する契約書を締結したと発表した。譲渡完了は2022年4月の予定。日揮は医薬品分野で、これまでに600件以上の施設・設備の建設プロジェクトを遂行してきたが、今回の譲受により、医薬品製造分野における人材・知財を融合し、更なる拡大を目指す。

【こちらも】日立、社会イノベーション事業のグローバル展開により成長を目指す

 日揮は「社会の基盤を支える存在でありたい」という理念のもと、1928年に「日本揮発油株式会社」として実吉雅郎により設立された。日本で最初のエンジニアリング会社として、石油精製・化学プラントを建設してきた。1962年に東証2部に上場。LNGプラント建設、原子力・医薬・病院分野に参入拡大し、1969年には東証1部に上場した。

 積極的に海外進出を行い、世界的エンジニアリング企業としての地位を確立、2019年には持株会社体制へ移行した。

 2020年3月期の売上高は4,339億円。事業別の構成比は、LNGや原子力からヘルスケアまで幅広い事業領域を支える総合エンジニアリング事業が89.5%、機能材製造事業が9.4%、エネルギー・環境コンサルティングなどのその他事業が0.1%を占める日揮の動きを見ていこう。

■前期(2021年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は4,339億円(前年比9.7%減)、営業利益は前年よりも26億円増加の228億円(同13.1%増)であった

 営業利益増加の要因としては、国内外案件の遂行強化により総合エンジニアリング事業が47億円の増益であった。一方、新型コロナウイルスの影響により機能材製造事業が9億円、コンサルティングなどの不振によりその他事業が11億円の減益であった。

 今第1四半期(4-6月)実績は、売上高1,070億円(前年同期比10.5%増)、営業利益41億円(同0.7%減)の中、今期は売上高4,700億円(前年比8.3%増)、営業利益は大型案件の減による稼働率低下を織り込んで160億円(同30.1%減)を見込んでいる。

■中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)による推進戦略

 2026年3月期に売上高8,000億円(前期比84.4%増)、営業利益600億円(同163.2%増)を目指して次の戦略を推進する。

●1. EPC事業(エンジニアリングで設計・調達・建設までの一括請負)の深化

 ・DX化推進など能力向上により大型プロジェクトの競争力、収益力の向上。
 ・LPG、ガス、太陽光、医療、ケミカルなど成長分野の拡大とアジア市場の進出強化。

●2. 高機能材製造事業の拡大

 ・パワー半導体向けケイ素基盤など戦略商品ラインナップ増加による収益拡大。
 ・高速通信材料、全固体電池材料など次世代事業の開発。

●3. 将来の成長基盤の整備

 ・高速通信、全固体電池材料など次世代事業の開発と洋上風力、水素、燃料アンモニアなど成長分野への進出拡大。
 ・EPC事業へ700億円、高機能材製造事業へ500億円、成長分野などへ800億円と2,000億円の戦略投資。
 ・デジタル人財、開発人財、マネジメント人財の再配置と拡充推進。

 「人と地球の健やかな未来づくりに貢献する」という長期ビジョンにもとづいて、社会の変革に対応し、グローバルに事業を展開する日揮の動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事