火星の古代湖の存在に否定的な見解 香港大の研究

2021年8月11日 16:46

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ゲールクレーターの古代湖の想像図 左が従来の説によるもの。右が香港大学の研究者が唱えるイメージ(この説ではゲールクレーターにかつて巨大な湖が存在したという従来説に対して否定的な見解を示している。)
(c) ESA / HRSC / DLR

ゲールクレーターの古代湖の想像図 左が従来の説によるもの。右が香港大学の研究者が唱えるイメージ(この説ではゲールクレーターにかつて巨大な湖が存在したという従来説に対して否定的な見解を示している。) (c) ESA / HRSC / DLR[写真拡大]

 従来火星のゲールクレーターは、古代に存在していた湖の痕跡であると多くの科学者たちによって考えられてきた。そのためNASAは、2012年8月6日に火星探査車キュリオシティをゲールクレーターに着陸させ、これまでに探査活動を継続し、様々な情報を得てきた。

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 ゲールクレーターは火星の赤道付近にある直径154kmもある巨大な地形である。また、2020年11月にはコーネル大学の研究者たちによって、今から40億年ほど前に巨大な洪水に見舞われていたとの見解が示された。この論文では、洪水は巨大隕石の衝突に伴うもので、24mの高さにも及び、時速36kmで押し寄せたとの推論がなされている。

 火星の平均気温は-60度で、普通ならば氷の世界のため、洪水は起こりようがない。だが隕石衝突によって急激な温度上昇が起こり、氷層が蒸発して大量の炭酸ガスやメタンが火星大気中に放出。それらが温室効果ガスとなって一時的に火星に温暖化をもたらした結果、洪水や湖が出現したのではないかとの主張がなされている。

 だが、香港大学は研究者たちは、この見解を否定する研究論文を発表した。キュリオシティの着陸地点の近くに露出しているイエローナイフベイ層では、地球上の湖沼堆積物に類似した粘土鉱物に富む堆積物が存在する。だがこの地層が堆積されたプロセスは、地球上に存在する湖の堆積層と比較すると、湖底を起源とするものではない可能性があるという。

 そう主張する根拠は、堆積層内の斜交層理砂岩の存在により、湖底では堆積層の傾斜が起きる原因となる事象が起きるとは考えにくいためだ。塵や火山灰の落下堆積とその表層が大気によって風化され、それらが折り重なって現在観察されるような状態となったと考えたほうが、地層形成メカニズムを説明しやすいためである。

 なおこの論文では、堆積層の風化に関する考察もなされており、今回調査した地層で風化が起きていた証拠を定量的に示している。つまり湖底では、地層が大気にさらされることはないが、今回調査した地層では風化の痕跡が多数見られ、しかも火星の大気が中性あるいは弱い酸性の雰囲気を持つことも示唆する結果が得られている。

 この論文では古代湖の存在の可能性を完全に否定したわけではないが、先のコーネル大学の主張とは明らかに異なっている。この論争の決着を見るのはまだ先の話になるが、火星探査から目が離せない状況はこれからも続くことだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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