雇用が問題か? (3) 水素社会で雇用確保 e-gasでエンジン可動を

2020年12月11日 09:17

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 また、現存のガソリンスタンドについても、FCV(燃料電池車)に用いる純粋水素(99.99%)を取り扱う水素スタンド(1カ所約5億円)に比較して少ない投資で「e-gas(メタンガス)」対応とできることから、「雇用の創出」に寄与し、自動車産業全体の雇用規模を保てることになる。さらに、自然エネルギーで発電して余分になった電力を「水素」の形で貯蔵すると30日間ぐらいは貯蔵できるメリットもあるようだ。

【前回は】雇用が問題か? (2) 日本の2050年ZEV目標は、政治ショーか?

 それを太陽光パネル、風力発電などが使えない時間にFC(燃料電池)で発電すれば、平準化が難しいとされている自然エネルギー発電の実用化の目途が立ってくる。空気中のCO2と化合させて「e-gas(メタンガス)」にして、エンジンを回して発電することも可能だ。すると、現在の火力発電と同じような実用性が確保できる。

 そうすれば、これまでのエンジンにおける技術生産能力が全て使えることとなり、現在の産業規模を確保できるかもしれない。それはすなわち、雇用規模を確保できるということだ。これは、エンジン技術に必要な精密加工技術に強いドイツなど欧州メーカーや、日本メーカーにとって有利に働くこととなる。

 つまりエンジンを使い続ければ、FCV(燃料電池車)に用いる純粋水素の必要性がなくなった場合、水素スタンドの高額投資を待たなくても済むかもしれない。BEVブームに沸く中で、労働者の雇用問題が忘れられがちだ。だが、「アメリカのラストベルト」問題でわかるように、「EV・AI」の開発を進めて自動車産業の雇用を無くしても、自然に「新規産業が生まれて雇用の心配がない」とする見方は、楽観的過ぎることが強く予想される。

 日本にも迫っている産業の移行においては、これまでの仕事に慣れた40~50歳台の労働者が、新産業が生まれても簡単に移行できないことが心配される。例えば、ベテランの溶接工が即座にSEになれるとは思えない。

 また、エンジンが生き残ったとしてもAIロボットが展開されてくると、それを補う新規雇用の創出が急がれる状況では、水素利用を考えた方が有利と見るべきであろう。さらに、水素社会が実現すれば、日本では中東の石油に依存しなくてもよくなるのであり、タンカー輸送のシーレーン確保の重要度が劇的に下がることとなる。これは、中国の南シナ海進出対応策にもなる。

 金融知識の中だけで考えて、政治が社会の実際の雇用変化を調整する技術を持たない事態だけは避けなければなるまい。現在は、産業育成、雇用創出について金融知識は無力であり、「投資」の効率を優先してしまう。新資本主義は、人間社会の成り立ちから見ると誤りである可能性が高い。

 どちらにしても「電動化」の流れは、CO2排出の問題を除外してもパッケージングなどを考えると進んでいくように感じる。「全固体電池」などで電池のエネルギー密度が高まってから結論が出るであろう。要するに、BEVは地球温暖化の切り札として確定したわけではないということだ。

 日本にとっては「グリーン水素」社会が、エネルギー政策全般からも理想的であろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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