光合成と別の新しい光エネルギー利用機構を微生物から発見 東大などの研究

2020年11月6日 13:38

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研究の概要(画像:東京大学の発表資料より)

研究の概要(画像:東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学は10月30日、光合成微生物「シアノバクテリア」で新たな光エネルギー利用機構を発見したと発表した。

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■植物がもつ光エネルギー利用機構

 地球上に生息する生物の大半は、太陽光からのエネルギーを利用して生命活動を行う。とりわけ「光合成」と呼ばれる太陽光からのエネルギーを有機物へと変えるメカニズムが知られている。

 陸上の植物や藻類などの生物は、「クロロフィル」と呼ばれる光合成色素で光を吸収し、いくつかの過程を経て化学エネルギーへと変換する。この化学エネルギーにより、二酸化炭素から糖が合成される。

 光合成以外で太陽光からエネルギーを受け取るメカニズムの存在が、近年示唆された。ヒトの目の中で視覚を担う膜タンパク質の一種「ロドプシン」が細菌などの微生物でも発見され、光エネルギーの利用方法の多様性が明らかになった。

 1970年代に塩湖に生息する好塩古細菌から発見され、遺伝子解析により海洋表層や河川、湖沼や温泉などロドプシンをもつ微生物が広く分布することが判明している。だがこうしたロドプシンによる光の受容は、光合成を行わずに有機物を食べて生活する従属栄養微生物だけがもつメカニズムだと考えられてきた。

■光合成とロドプシン双方で効率よく光利用

 東京大学大気海洋研究所、理化学研究所、岡山大学、産業技術総合研究所などの研究者らから構成されるグループが着目したのは、シアノバクテリアだ。光合成を行う細菌として知られていたが、一部からロドプシン遺伝子が発見され、光を受容するメカニズムをもつ可能性が示唆されていた。

 研究グループは、比較ゲノム解析を実施した結果、多くの系統でロドプシン遺伝子をもつことが判明。一部では、クロロフィルが利用しない緑色光を吸収し、光エネルギーで細胞内から外へと水素イオンを排出するメカニズムをもつことが明らかになった。これは、クロロフィルとロドプシンの両方を用いて効率的に光を示す可能性を示唆する。

 研究グループによると、今回発見されたメカニズムと光合成は何億年ものあいだ、共に働いてきたことを示すという。本研究成果は、生物が光を利用する旧来の考えに一石を投じるものだとしている。

 研究の詳細は、オープンアクセス誌Scientific Reportsにて10月7日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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