欧州宇宙機関、世界初の火星サンプルリターン計画の開発にエアバスを指名

2020年10月16日 16:48

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マーズサンプルリターンのイメージ図 (c) ESA–K. Oldenburg

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 2020年7月30日、アメリカの火星探査プロジェクト「MARS2020」による火星ローバー「パーサヴィアランス」が打ち上げられ、2021年2月18日の火星着陸を目指している。これはアメリカ航空宇宙局(NASA)が、2033年までに人類を火星に送り込む壮大な構想の初めの一歩に過ぎない。

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 2019年7月25日、欧州宇宙機関(ESA)はNASAと協力し、MARS2020で採集した火星の土壌サンプルを地球に持ち帰るプロジェクト「MSR(マーズサンプルリターン)」に関する構想を明らかにしている。その概要は、2026年にNASA主導のSRLとESA主導の地球帰還オービター(ERO)をそれぞれに打ち上げ、SRLが火星に着陸。MARS2020で採集したサンプルを捜索回収し、火星を周回しているEROに持ち帰り、EROがそれを地球まで運ぶ計画となっている。

 これが人類史上初の火星からのサンプルリターンになるが、このほどESAがEROの製作企業として、フランスのエアバスを指名したとのニュースが報じられた。これはエアバスが持つATV(Automated Transfer Vehicle)技術と、2022年6月に打ち上げが予定されているヨーロッパ初の木星探査ミッション「JUICE」向けに開発された、光学ナビゲーションによる自律ランデブーとのドッキングを可能にする技術が評価された結果だ。EROにもこの技術が採用されることになっている。

 このサンプルリターン計画の目的は、火星における生命の存在の確認だけでなく、人類が火星に到達した際に、火星の土壌に毒性が含まれていないかを確認することもある。このミッションを怠り、いきなり人類を火星に送り込んだとした場合、無防備で火星に挑まねばならず、ただでさえ命を危険にさらす宇宙航海の果てに、死の世界が待っていたというシナリオになりかねない。できるだけ早く火星に人類を送り込みたいのは、人類の念願ではあるが、人命尊重の観点から石橋をたたいて渡る道を科学者たちは選択したのだ。

 EROが地球にサンプルを持ち帰るのは2031年で、サンプル分析を急いで実施すれば、NASAがもくろむ2033年までに人類を火星に送り込む計画にはぎりぎり間に合うだろう。ただしこの夢は、11月のアメリカ大統領選の結果次第では別のシナリオに変わってしまう可能性もある。というのも、共和党のブッシュ政権時代に構想された有人月面探査計画が、そのあと政権をとった民主党のオバマ大統領によって中止の決断がなされた前例があるからだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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