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学校の代わりと「学びの本質」を提供するためのカリキュラム オンライン配信にFacebookを選んだ理由とは?(連載第2回)

2020年7月8日 08:56

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記事提供元:biblion

 2020年3月、突然の休校により一変した教育現場。子ども達が奪われた「学びの場」を取り戻すため「オンライン学校」という新しい教育プロジェクトが立ち上がりました。既存のe-learnigとは異なり、リアルタイム配信、学びの本質の追求、双方向のコミュニケーションにこだわった画期的な取り組み。Withコロナの時代、これまでの学校と家庭の役割を見つめ直し、新しい教育の在り方を考えるきっかけとして、この記事を広く活用していただけることを願っています。

学校の代わりと「学びの本質」を提供するためのカリキュラム。オンライン配信にFacebookを選んだ理由とは?(連載第2回)

 本記事の原稿は、コロナで学校の休校が始まった2020年4月に開校した、オンライン上(Facebook)で学校を提供するプロジェクト「緊急開校 オンライン学校」の立ち上げメンバーの方々に寄稿していただきました。
 休校によって子どもたちが自宅に閉じ込められ、生活リズムと学びの習慣が失われていることに危機感を持って集まった有志によるこのプロジェクトは、最終的には延べ1000名を超える参加者を含む、大きな活動の輪となりました。
 本記事を掲載する現在、多くの学校は再開していますが、このプロジェクトで実施された様々な学びの企画・実験は、今後の子どもたちの学びや教育を考えるうえで重要なヒントを多く含んだものになっていると考えております。

 「緊急開校 オンライン学校」Webサイト
https://peraichi.com/landing_pages/view/online-school

 (グーテンブック編集部)

プロジェクトWebサイト「緊急開校 オンライン学校」

プロジェクトWebサイト「緊急開校 オンライン学校」本記事でご紹介していただいたプロジェクト「緊急開校 オンライン学校」のWebサイトです。

前回記事(連載1回目)はこちら

前回記事(連載1回目)はこちら「オンライン学校」開講の経緯と狙い。「コロナ休校に対して始めた1日2回のFacebook上の学校。取り戻したかったものは子どもの生活リズムと学びの習慣」

学習内容の保証と「学びの本質」の提供

 教科としては当初から、国語・算数・理科・社会・英語を準備したのですが、内容を決めていくプロセスでは様々な葛藤がありました。
 まず、スタート当初は対象学年を絞っていなかったので、カリキュラムの作成や難易度設定にかなり苦労をしました。また、学校の休校対策として実施している「オンライン学校」ですが、学校の授業とまったく同じではなく、「学びの本質」を提供したいという考えが強くありました。「学びの本質」というのは、「学ぶ楽しさ」でもあり、「なぜそれを学ぶのか?」といった問いに対する一つの回答でもあります。その部分を色濃くすると、教科としての独立性や、学習内容の習得という要素が薄れ、学校での授業からは遠ざかってしまいます。

 「学校の代わり」として学びの場を提供するという命題と、この「学びの本質」を提供したいという間のジレンマを感じ続けることになりました。

「学校の代わり」を提供するために

 例えば英語では、「学びの本質」と「学校の代わり」のバランスが取れた授業が提供できたと思います。英語は他の教科と異なり、実社会でどう使えるのか、どう役立つのかが明確です。英語は言語ですので、「話せる・理解できる」ことがゴールとしてイメージしやすいのです。
 とはいえ、英語を杓子定規に「文法」「文型」「構文」を伝えていっても、学ぶ必要性の認識の前に脱落してしまう可能性があります。また、英語は言語であり、どこまでいっても話すツールにすぎないので、「間違えてはいけない」という概念を取り払い、「間違えていても伝わることが重要である」というメッセージを伝えられるよう工夫をしました。

学校とはひと味違う「特別授業」

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 「オンライン学校」では、平日の五教科の授業とは別に、毎週土曜と日曜には特別授業を行ってきました。特別授業で伝えたかったメッセージは、主に3つのカテゴリーに分けられます。
 1つ目は、自分が知らないこと、わからないことに対しての興味関心を持ってほしいというメッセージです。自分が住んでいる世界や見ている世界がすべてではなく、もっと知らない世界がある。それを知るにはまず「関心」を持つことであり、それは子ども達がもともとたくさん持っている好奇心に他ならないと思っています。

 2つ目は、社会について深く知ってほしいというメッセージです。子ども達はまだ出たことのない世界ですが、実はすぐ近くにある社会という存在。そこで起きていること、社会で働くということ、社会にあるお金のこと、環境問題やSDGsとは何なのか。一見するとすべてバラバラなことですが、実は社会全体としてつながっているということ。そしてその社会には、これからの時代を生きる子ども達にも関係する様々な問題・課題があるということを知ってもらいたいと思いました。
 3つ目は、生き方について考えてほしいというメッセージです。自分が知らないことへの関心を持ち、社会について知った先に、「自分は何になりたいか」ではなく「自分はどう生きたいか」という問いを立ててもらいたいと思いました。普段はあまり考えないことかもしれませんが、本気で生きる大人達との出会いを通して、夢を持つこと、志を持つこと、幸せとは何なのか、プロフェッショナルな生き方とは、自分はこの先社会でどう生きていきたいのか、ということを漠然でもいいので感じてもらいたいと思いました。

学びの新しい提供方法「オンライン配信」

 (5772)

 配信方法については、様々な議論を経て決定しました。配信方法を決定する上で重視したのは、以下の点です。

 ・より多くの子ども達に、手軽に受講してほしい。
 ・ITリテラシーによる学習機会の差を最小限にする。
 ・専門性の高いツールは避ける。

 当初はオンラインミーティングツールである「Zoom」や「ハングアウト(Google)」といったツールの検討も行いました。しかしそれらは多少の専門性も感じられ、まだ広く認知されているとは言えない状況でしたので、早い段階で選択肢からなくなりました。

 その後に検討したのが、YouTubeです。動画配信には最適であり最も認知度も高く、子どもであっても手軽に見られることがメリットでした。一方で、YouTube上では、カリキュラムの案内や告知といった事務的な連絡が出しにくいこと、動画ごとにコメントはつけられるのですが、オンライン学校全体へのコメントは出せないこともあり、優先順位を下げました。

 そして最後に行き着いたのが、実際に設立することとなった、Facebookのグループページです。ここであれば、学校全体の告知やメッセージ、次回の授業の案内も手軽に出すことができます。子ども達は親御さんのアカウントを借りて一旦グループに登録しておけば、授業の案内も自動的に受信でき、ライブ授業動画も同じページで閲覧できます。一度オンラインで配信した授業動画はストックされ、動画一覧で過去の授業動画も閲覧することができるということも、決め手の一つとなりました。

「オンライン配信」のメリット

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 ライブ配信なので、先生と子ども達とはコメント上でリアルタイムのやり取りが可能です。質問や思ったこと、先生の問いに対する答えなどをどんどん書き込むことができます。その意味では、狙いとしていたリアリティと相互コミュニケーションは担保することができました。ライブ配信をしたことで子ども達からの評判も良く、親御さんからも、ライブの授業があるから、その時間に毎朝きちんと起きるようになったという感想もいただいています。

 ライブの授業に重きを置きつつも、過去の動画(アーカイブされた過去の授業動画)へのアクセスも容易なものとしていました。予定などがあってライブの時間に間に合わなかったり、ついつい見逃してしまったりしたときのためにこのアーカイブ動画はあったのですが、実際のアクセス数を見ると、ライブ配信後のアクセスもかなりの数になっていました。多いもので1000回以上再生された授業もありました。ライブ配信後に1000名以上の方々にアクセスしてもらったことになります。

「オンライン配信」のデメリット

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 通常は対面での授業提供や説明に慣れている先生が多かったため、オンライン配信になったことにより、資料の作り方、見せ方、話し方、問いかけ方などのすべてを見直しながら、試行錯誤をしてきました。これまでの対面授業の準備は、相手の反応を見ながら進めることを前提としたものでした。スタート当初はまさに手探りの状況でした。

 また、授業を提供する先生は、限られた時間の中、どんなコメントや質問がくるかわからない状況の中で、予定する内容をきちんと伝えることが求められます。また、ライブなので間違うことができないというプレッシャーが常につきまとっていたのは事実です。

 できるだけ多くの方に見てほしいという観点から選択したFacebookでのライブ配信ですが、この方法だと、先生は受講者の顔が見られないというデメリットがありました。子ども達の反応がわからないので、理解度を確認するのが難しいのです。
 ただしこの点は、コメントへ書き込んでもらうシステムを利用することで、ある程度の理解度と満足度を得ることができるようになってきたと思っています。

 「オンライン学校」の運営において最大の課題は、オンライン配信という新しい提供方法そのものでした。これまでの授業の在り方を大きく変えなければならないという壁がありました。しかし、コミュニケーションや相互の意思確認を常に行うなどしながら進めることで、これらの課題はうまく解決していくことができるのではないかと考えています。(次回へ続く)

この記事の著者

 ■香坂 公嗣(こうさか まさし)さん
 株式会社グローレン 代表取締役
 18歳で実家を飛び出し、やりたい事が見つからずに1年近く放浪する。
 20歳で大学に入学し、生物化学を専攻、25歳で大学院(修士課程)を修了。35歳で起業することだけを決めて、就職活動へ。自分の生い立ちを振り返った時に、恩師と思える人との出会いが転機になっている事に気づき、「教育」分野に興味を持ち、企業内教育、人材育成の分野を学ぶために人事系コンサルティング会社に入社。その後、外資系大手通信会社に転職し、世界規模で展開する企業の教育や世界における日本の立ち位置、多様性などを肌で感じる。在職時に副業として、子ども向け英会話スクールなどの運営等も携わり、子どもたちの可能性や才能の豊かさに触れる。35歳を機に退職し、教育分野での起業を決め、株式会社グローレンを創業。現在は、教育格差問題や地域活性化など様々な社会課題を「事業を通して解決する」ため多数のプロジェクトを行っている。

 ■及川 政孝(おいかわ まさたか)さん
 株式会社シーエフエス 取締役/子別指導塾Abilis 代表
 学生時代は勉強嫌いでずっと座っていることができず授業を妨害するのは日常茶飯事。「なんで勉強するの!?」と常に思っていた問題児。社会人になり約10年間で延べ1万人の経営者と出会い社会で必要な力は学校の成績とほとんど関係ないことを知る。様々な学びをする中で”学び方”というものに出会い勉強嫌いが無くなった経験から幼少期から「なぜ学ぶのか?」そして「どのように学ぶのか?」を身に付ける必要性を感じ学び方を伝える子別指導塾をスタート。その後公立中学校の学習支援授業にも関わる。その他日本各地に家庭内共育を浸透させるための講演会も開催中。【社会は企業がつくり 企業は人が創り 人格は家庭で創られる】のポリシーのもと事業を通じて社会課題に取り組む中小企業のコミュニティも運営し多面的な角度から持続可能な社会構築のため挑戦している。

本連載は今夏に書籍化・出版を予定しています

本連載は今夏に書籍化・出版を予定しています本記事連載は、Webで繋がって作る100ページ本の出版を通して、コロナを乗り越えてゆく挑戦・活動を伝えるプロジェクト「SHIFT challenge book」で書籍化を予定しています。

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※この記事はbiblionから提供を受けて配信しています。

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