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名大ら、無色透明なエラストマーを開発 ソフトロボットへの応用に期待
角膜の微細構造(上)と開発された複合エラストマーの微細構造(下)の概念図(写真:名古屋大学の発表資料より)[写真拡大]
名古屋大学は2月28日、理化学研究所(理研)やユニチカなどとともに、無色透明な弾性素材(エラストマー)を開発したと発表した。ウェアラブルデバイスやソフトロボットといった、未来の生活に役立つ技術につながることが期待される。
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■ソフトロボットへの応用が期待されるエラストマー
エラストマーは、ゴムのような弾性をもつ高分子だ。自動車や飛行機の部品、スポーツ用品など、幅広い生活シーンで活用されており、とくに、ソフトロボット分野での活用が期待されている。硬い金属から構成される従来のロボットに対し、生き物に近いことがソフトロボットの特徴だ。
連結(架橋)した高分子に充填剤を加えて特性を変化させたのが、複合エラストマーだ。架橋した生ゴムと、カーボンブラック等を配合することで強靭化した複合エラストマーは、タイヤ等に用いられている。だが、光を通せる複合エラストマーは、これまで開発されてこなかった。
■角膜を応用し無色透明化を実現
名大、理研、ユニチカなどの研究者から構成される研究グループは、複合エラストマーの無色透明化実現に模倣したのが、生体の角膜だ。
角膜は、細胞周辺にあるムコ多糖と水からなる柔らかいゲル、弾性をもつコラーゲン繊維から構成されている。両者は屈折率に違いがあるが、紫外線の波長サイズで秩序よく配列されているため、光が角膜内で散乱せず無色透明が実現されているという。この角膜の特性を応用して、シリカ微粒子を秩序正しく架橋高分子内で配列させたことで、無色透明な複合エラストマーが実現した。
研究グループは、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー等の研究で活用される、大型放射光施設SPring-8で、複合エラストマーの微粒子配置の詳細を明らかにした。その結果、弾性率と伸張率が増大することも発見、最大で約13.5倍の破壊エネルギーをもたらすという。従来のエラストマーは硬化すると伸張性が失われるが、開発された複合エラストマーは高い靭性と伸張性もあわせもつ。
無色透明な複合エラストマーでは、変形時のミクロな現象が可視化可能なため、高く靭性化する要因の解明が期待できる。そのため、ソフトロボット等の未来技術に適用可能な設計指針確立も見込まれる。
研究の詳細は、米化学会誌ACS Materials Lettersに2月27日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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