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英語には「There’s more than one way to skin a cat」ということわざがある。直訳すると、「猫の皮を剥ぐ方法は一つじゃない」という、かなり物騒な響きの言い回しだ。
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もちろん言葉通りの意味ではなく、「目的を達成する方法は一つではない」「やり方はいくらでもある」といったポジティブな意味合いを持つことわざである。ではそもそもなぜ、このような残酷な比喩が生まれたのだろうか?
■There’s more than one way to skin a cat
「There’s more than one way to skin a cat」の語源をたどると、17世紀のイギリスにさかのぼる。
「イングランド博物学の父」とも称される博物学者・自然学者のJohn Rayの著作『Collection of English Proverbs(英語のことわざ集、1678年)』のなかに、「There are more ways to kill a dog than hanging(吊るす以外にも犬を殺す方法はたくさんある)」ということわざが記載されている。
つまりもともとは、猫ではなく犬が題材であり、この時点で「目的に至る手段は一つではない」という意味もすでに確立していたのだ。
ところが19世紀になると、多くの作家が猫を比喩とした言い回しを使い始めた。
たとえばアメリカの作家、Seba Smithの短編『The Money Diggers』(1840年)には、「As it is said, ‘There are more ways than one to skin a cat,’ so are there more ways than one of digging for money.(猫の皮を剥ぐ方法が一つじゃないと言われるように、埋蔵金探しの方法も一つじゃない)」とある。
その後も、たとえばCharles Kingsleyが、1855年の小説『Westward Ho!』で「猫を殺す方法は、クリームで窒息させる以外にもある」と記し、1889年にはMark Twainも長編小説『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』で同じことわざを引用した。
こうして見ていくと、この過激な比喩は実際の猫とは関係がなく、「目的に至る方法は一つではない」というメッセージを、強烈なイメージで人の記憶に刻みつけるためのレトリックだったことがわかる。
もちろん現代でもこのことわざを言葉通りに受け取る人はいないが、不快に感じる人はいるかもしれない。そういう場合は、「There’s more than one way to peel an orange(オレンジの皮を剥く方法は一つではない)」や、「There’s more than one way to crack an egg(卵の殻を割る方法は一つではない)」といった穏当な言い回しを覚えておくとよいだろう。
例文
・We’ll figure it out. After all, there’s more than one way to skin a cat.
(なんとかなるさ。方法は一つじゃないんだから)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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