トヨタ株堅調 中国、新エネ車目標25年に25%へ引き上げ トヨタは利用されるだけ? (2/2)

2019年12月11日 08:05

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 一方日本では、将来水素を自ら無尽蔵に生成できるのであれば、石油依存の産業体質を改革できることが考えられる。中東石油依存の社会体質の抜本的改革になり、産業が入れ替わるなど社会全体の変化を伴うこととなる。

【前回は】トヨタ株堅調 中国、新エネ車目標25年に25%へ引き上げ トヨタは利用されるだけ? (1/2)

 それに対して中国市場は整備していく途上であり、世界最先端の社会を築くことが出来る。すると、相対的に技術的に取り残されて「日本の落日」が懸念されるストーリーである。ちょうどATMが普及している日本社会ではいつでも現金が手に入るが、中国社会ではATMは手近にないことが多く、電子決済が急速に普及するストーリーとなりえるのと同じだ。

 日本社会の長期的見通しは悲観的だが、トヨタの企業としての見込みは開けている。トヨタがBYDと協業して中国市場でも成功を収めると、トヨタの自動車産業としての将来は明るい。

 しかし、トヨタがBYDと共同で新規技術開発をすることは、これまでの製造に関するトヨタのノウハウが中国企業に伝わってしまうことを覚悟しなければならない。すでに軍事産業では変化が起き、探知されにくい中国原子力潜水艦が成立し、アメリカだけでなく日本の軍事的脅威となってきている。それは、これまで日本企業が中国に進出したため、日本の優れた工作機械の切削能力が中国潜水艦建造に技術的進歩をもたらしたからだ。

 現在、中国自動車産業は、日本企業の持つ製造技術には程遠く、エネルギー効率45%に達する精密なガソリンエンジンを不良率や耐久性を保って安定的に生産することは「夢物語」なのだ。しかし、それにトヨタが手を貸す形ととなり、中国製造業が急速に成長することを覚悟せねばならない。

 ソフト部門の開発能力は短期間に発達させることが出来るのだが、テスラの様子をみて分かるように、「製造」はかなりの努力が長期に渡って必要なのだ。また、AIに移行するにも「教師データ」は「匠の技」にあり、揃えることは至難の業であるのだ。

 それらが一気に流出することとなると、これまで積み上げてきた日本企業の経験が中国企業に知れ渡ってしまうことになる。「トヨタは本当に中国に利用されるだけに終わるのだろうか?」

 トヨタは企業の生き残りをかけて、中国市場を席捲せねばならないのであろうが、長期的に日本の産業構造の競争力を無くすことになるのは明確だ。中国14億人市場のパワーは、皮肉なことに、共産主義国家で市場経済をとる限りは止めることはできないであろう。

 中国が共産党1党独裁政権で市場経済の道を取り始めたときには「いつか自由主義革命に至るだろう」と見込んでいたのだが、経済発展により中国国民にとって「大人しくしていれば住み心地が良い」となってしまい、香港のような革命運動が中国本土では起きなくなっている。まことに資本主義とは「人間の欲望」に即したもののようだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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