NASAは火星での生命の存在を確信か 間接的証拠も

2019年11月23日 16:46

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火星。

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 1960年代、まだ人類が地球を周回する宇宙船を操る技術しか持たなかったころ、科学者たちの多くは地球以外の天体に生命が存在することに懐疑的であった。その理由は、生命を構成する有機化合物やDNAの構造があまりにも複雑であったからに他ならない。

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 生命誕生はあり得ない偶然が重なり、この宇宙で地球だけがなしえた奇跡であるかのように考えられていた。もちろん、この宇宙のどこかに生命どころか人類の知性をはるかに上回る知的生命体の存在を確信する科学者もいた。オズマ計画は宇宙の知的生命体からの電波をキャッチすべく、1960年代に始まった探査活動であった。

 ごく最近では、常温で液体の海を有する天体であれば、海を満たしている液体が水でなくとも、生命が存在しうると考える科学者が増えてきた。例えば液体窒素やメタンで満たされた海を持った天体は、宇宙のいたるところに存在していることだろう。

 このような考えが広まった理由は、科学者たちの先入観が取り払われ、柔軟な仮説を立てる姿勢が主流となってきたためだろう。もっと具体的に言えば、DNAは地球で偶然生成されたのではなく、地球が誕生する以前の遥か昔に銀河系のどこかで生成され、いたるところにばらまかれたのではないかという暗黙の仮説が広まったためであろう。

 このような考えの正当性を証明する決定打となる間接的証拠を、NASAではすでにつかんでいるようである。かつてNASAでチーフ研究員をつとめていたジェームスガービンは、火星は質量こそ地球の6分の1程度しかないが、かつては地球のマントルのような熱い内部構造を有していたはずだと主張する。つまり火星も昔は地球のような厚い大気に覆われた生きた惑星であったというのである。

 火星の地殻が熱い状態であれば、地面の下には液体の水が存在していたはずである。そこに宇宙から飛来したDNAが存在すれば、生命はそこで着実に芽生え、何らかの進化を遂げていたことだろう。仮にそれらの生命体が現在のように冷え切って死んだ惑星となってしまった火星で絶滅していたとしても、化石などの証拠は確認できるはずである。また運が良ければそれらの生命体は、現在も逞しく命の息吹を継続していてくれるかもしれない。

 NASAでは惑星の進化のプロセスを研究した結果、火星がかつては地球によく似た環境を保っていた時代があったことを確信している。地球ではその誕生から3億年ほどで生命が誕生した痕跡が確認できている。

 火星でも仮に誕生から5億年だけ、熱い地殻が冷え切らない時代があったとするならば、生命が誕生していた可能性は高い。今後続々と計画されている火星探査プロジェクトにNASAが大いに注力し始めたのは、このような理由によるのではないか。

 もし、火星で生命誕生の痕跡が確認できたならば、地球外生命体の初めての発見という偉業だけにとどまらず、DNAの起源が実は地球誕生以前の宇宙のどこかに由来するものであったことも証明されることになる。これは、人類始まって以来の最も偉大な発見になることは間違いない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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