上半期決算の、我流考察 トヨタ・ZOZO・吉野家に見る様々

2019年11月11日 17:54

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 2月期、そして3月期決算企業もその大方が中間期決算の開示を終えた。目を惹かれた企業は各位同様のトヨタ自動車。そして私はZOZO、2月期企業では吉野家ホールディングスだった。

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 トヨタの4-9月期の営業利益は1兆4043億円。売上高営業利益率(以下、営業利益率)は9.2%。国内の同業他社はもとより世界市場で売り上げ台数の覇権を争っているVW(5.9%)にも、大きく水をあけた。いわゆる「カイゼン」効果が改めて指摘された。決算発表に臨んだ河合満副社長は「(塗料を入れた)缶の中に1滴残る。その1滴を使えないかとカイゼンを積み重ねている」(11月8日、読売新聞オンライン)と語ったという。

 この報を見て豊田英二氏(1913年~2013年)とともに「トヨタ中興の祖」と言われた、石田退三氏(1888年~1979年、トヨタ元社長・会長)のこんな語録を思い出した。『機械はいい。文句は言わんし、酒も飲まない。だから余資は機械に投資する』。ある意味で、いまのカイゼン(効率化)の原点と言える。

 脈々と流れる「効率化」スピリットがあるからこそ、トヨタは通期についても「世界販売見通しを下方修正」しながらも「営業利益据え置き」としえたのであろう。

 ZOZOは創業者の前澤友作氏がソフトバンクグループの孫正義氏に因果を含められ身を引き、ヤフーの傘下企業となった。そんなZOZOの中間期の営業利益率は23.2%。絶対額でこそトヨタの1%にも満たない。営業利益率の高さは「工場/設備/人件費など諸費用」等が(少)ない点に求められる。端境期の指摘も聞かれるEC業態だが、人件費が重くのしかかる小売業界にあってはやはり注目が怠れないことを改めて痛感させられた。

 吉野家ホールディングス(吉野家)は2019年2月期「97.4%営業減益」と大きく沈み、営業利益率は0.05%と激減した。そして今期は一転「855%営業増益/営業利益率0.48%」計画で立ち上がった。そして中間期では期初予想の営業利益3億円に対し29億3600万円(営業利益率2.74%)と、想定を大幅に上回る形で下期入りした。

 その背景は「超特盛など商品の多様化」「はなまる等グループ企業の(値上げ浸透による)採算好転」などが指摘される。それらを否定するものではない。だが見逃しにはできないのは、前期:不採算の26店舗閉鎖であり、今期上半期:18店閉鎖/80店の改装という流れである。

 店舗という土台の効率化が進んで初めて「商品見直し」効果も生きてくる。が、吉野家は、中間期時点で通期見通しを据え置いた。株価動向も中間期開示(4月11日)の翌日の初値は11日終値比13円安の1780円。その後2843円(10月10日、年初来高値)までつけたが本稿作成中の時価は2600円台入口。アナリストの株価への見方を示すIFIS目標平均株価も2000円に留まっている。

 三社三様だがいずれも、下半期動向から目を外せない点では共通している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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