8月2日は、陽電子発見の日 陽電子・反物質とは何か?

2019年8月2日 05:52

印刷

画像はイメージです。

画像はイメージです。[写真拡大]

 陽電子という言葉を聞いたことがある人はいても、それが具体的に何なのかと問われて答えられる人は稀な存在であろう。実は8月2日は陽電子が初めて発見された日である。

【こちらも】京都大学ら、雷による核反応の発生を確認 反物質などの観測により

 1932年8月2日、アメリカの物理学者カール・デイヴィッド・アンダーソンによって陽電子が発見された。彼はその功績により1936年にノーベル物理学賞を受賞している。

 陽電子はごく簡単な表現で説明すれば、「電子の反粒子である」ということになるのだが、一般人はそう言われてもピンとこない。そこで今日は、この記事を読み終わった後で、「なるほど」と思えるような解説をしたい。

 そもそもこの宇宙が出来上がった直後には、現在私たちの世界に当たり前のように存在している陽子や電子のような素粒子と、それらと逆の電荷をもつ反陽子や陽電子のような素粒子がほぼ同数ずつ存在していた。

 陽子と反陽子、電子と陽電子が出会うと一瞬にして消滅してしまう。宇宙が誕生した後、時間が経過するに連れて、これらの出会いと消滅が繰り返された結果、消滅せずに残ったわずかな素粒子が陽子や陽電子なのである。

 わかりやすく言えば、陽子と電子のほうが、厳密に言うとわずかに反陽子や陽電子より多かったために、私たちが存在している物質の世界が残ったというわけである。

 では、なぜ現在陽電子のような反粒子が検出されるのかと言えば、対生成という現象がこの宇宙空間に存在しているからである。対生成とはエネルギーから粒子と反粒子が生成する自然現象である。逆に粒子と反粒子が出会うと一瞬にしてそれらは消滅してエネルギーに変わる。

 例えば、電子と陽電子が出会うとそれらは消滅して2本のガンマー線が放出される。宇宙が誕生した後で起きた無数の対消滅によって、我々の宇宙は光と物質(つまり陽子や電子)の世界となったのである。

 だが、現在でも対生成は宇宙空間のどこかで起きているため、陽電子もわずかな時間ではあるが存在できる。また放射性同位元素の中には、陽電子を放出する性質のものがあり、医療の分野でそれが活用されていることをご存じだろうか?

 PETと呼ばれる診断法は、陽電子を放出する放射性同位元素を含んだ薬剤を体内に投与し、体内から対消滅によって生成される2本のガンマー線を測定することで、がんの早期発見に役立てている。

 私たちは陽電子のような反物質に対して、日ごろ全く無関心なのだが、実は命を守る重要な医療技術にも応用され、大活躍していることも知ってもらいたい。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連記事