トヨタ・デンソー式「下請け」? ボッシュ式「サプライヤー」? どちらが優位? (上)

2019年6月6日 08:47

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■資本関係だけでは判断出来ない「下請け」と「サプライヤー」

 一流の経済記者や評論家でも理解出来ない「下請け」と「サプライヤー」との体質の違い。5月24日、デンソーはメディアや機関投資家などを対象にした事業方針説明会で、有馬浩二社長自らが「トヨタグループの競争力強化」を謳った。

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 やはり構造的に「デンソー」がトヨタを離れるわけがない。ボッシュやコンチネンタルなどのサプライヤーと比較するには、資本関係を見るだけでは分からず、製品を見ているだけでも分からない。「生産(製造)」の世界的なシステムを見る必要がある。

 欧米のサプライヤー(部品メーカー)は、下請けの形態をとっているところはまれだ。資本関係で支配されていても下請け関係と言えるのか疑問が残る。一方で、デンソー、アイシン精機などトヨタの下請けと思しき企業は、長年の歴史で資本関係が薄れていても、下請けに間違いはない。

■資金効率を求める生産方式が要点

 トヨタは、下請け各社に世界中で販路を広げるように要請している。これなら、ボッシュなどと同じようにサプライヤーだ。モジュールで売り込むので、メーカーの一部を開発から担う結果となってくる。

 マツダが15年ほど前から進めている「スカイアクティブ・テクノロジー」の集大成は、世界の生産拠点において、自社のどの車でも、同じレベルの品質保証で生産出来ることにある。「スウィング生産」と称しているが、「多種少量生産」方式で多くの車種を混流して生産出来るシステムを作り上げ、「全世界の生産拠点における稼働率の平準化」を行い稼働率を上げ、コストと減産時の固定費の削減を可能にしようとするものだ。

 一方、トヨタのTNGAはマツダに遅れること5年ほどだが、同じような方向性だ。元々マツダの考え方の基本は、「トヨタのかんばん方式」であるから当然のことだ。これは「在庫管理」の概念が基本にあり、ユーザーに対してはMR(市場調査)、メンテナンスなどを含めて再販・拡販に繋がるシステムだ。

 材料仕入れから、生産、納車まで、どれだけ「在庫金額・期間」を減らせるか?が勝負なのだ。IoTによるネット発注に結び付くところで、これが「第4次産業革命」と言える見方だ。

 モデルベース設計、モジュール設計など開発手段も、とどのつまりは「資金効率」を求めている。ホンダが窮地にいるが、それは、この生産方式の重要性を認識出来ていないのが最大の問題点なのだ。

 トヨタが下請け各社に拡販するように指示を出しているのは、「開発資金の早期回収」にその目的がある。欧米のサプライヤーを使っていく経営手法も、「資金効率」を求めてのことだ。どちらの方法が優れているのかは、長い時間を経たあと結果を見るしかあるまい。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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