JAXAと鹿島、月での無人の拠点建設目指し自動化機械の実験実施 実現へ前進

2019年3月29日 20:20

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月での有人拠点建設の想像図(写真:JAXAの発表資料)

月での有人拠点建設の想像図(写真:JAXAの発表資料)[写真拡大]

  • 実験に使用された自動キャリアダンプ(写真:JAXAの発表資料)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と鹿島建設は28日、月での無人による有人拠点の建設を想定した実験を、神奈川県小田原市にある鹿島西湘実験フィールドにて実施し、拠点建設の実現可能性を見いだしたと発表した。JAXAと鹿島建設は、2016年から芝浦工業大学、電気通信大学、京都大学とともに「遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現」を目指し、共同研究開発を進めてきた。

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■JAXAと鹿島建設の思惑が一致

 月や火星に長期滞在できる有人拠点を建設するには、地球から遠隔で建設機械を操作する無人化施工が考えられる。ところが惑星や衛星ほど離れた距離への通信には、相当な時間がかかるため、遠隔操作による作業には効率や制度の面で課題があるという。

 鹿島建設は、建設機械の自律や自動運転を核とした次世代の建設生産システム「クワッドアクセル」を開発し、2015年から建設現場に適用。この取り組みは、将来の熟練技能者不足への対策のひとつになっている。

 JAXAと鹿島建設は、惑星や衛星における拠点建設に向けた課題解決策として、クワッドアクセルの開発で得た自動化施工技術を導入し、遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現を目指している。

■遠隔操作と自動運転の実験を地上で実施

 月での無人による有人拠点建設作業で想定されるのは、居住空間となるモジュール設置場所の整地作業や掘削作業、モジュールの設置作業、モジュールをいん石や放射線から遮蔽するために土を覆い被せる作業などである。

 これらの作業を想定し、7トン級のキャリアダンプとバックホウに車体位置や方位を計測する機器や自動走行制御装置を搭載し、遠隔操作と自動運転が可能な機械に改造した。また通信の遅延や干渉などの不具合にも対応できる機能が搭載された。

 JAXAと鹿島建設は改造した建設機械を用いて、遠隔操作や自動運転の実験を実施。その結果、月での無人による有人拠点建設の実現可能性が見出されたという。

 両者は今後、システムの機能や性能の向上を図るだけでなく、衛星測位システム(GNSS)の使えない月や火星などの環境や、不安定な通信環境を想定し、さらに研究開発を進めるとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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