ブラックホール誕生の瞬間を初めて検出か? 謎の爆発現象「AT2018cow」 アルマ望遠鏡

2019年1月18日 12:02

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AT2018cowの想像図 (c) Bill Saxton, NRAO/AUI/NSF

AT2018cowの想像図 (c) Bill Saxton, NRAO/AUI/NSF[写真拡大]

 2018年6月16日に検出された爆発現象「AT2018cow」。その正体は謎を呼んだが、1月10日に開催された米天文学会の総会で、星が崩壊してブラックホールまたは中性子星になる瞬間を初めて望遠鏡で捉えたという発表が報告された。

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■2018年6月に検出された「明るすぎる」爆発

 ハワイで行われている全天観測プロジェクト「ATLAS」において最初に捉えられた爆発現象は、「AT2018cow」と名付けられた。2億光年彼方で発生したAT2018cowは超新星爆発しては明るさが足りず、さらにずっと早く暗くなったため、研究者のあいだではその正体について論争が続いている。

 AT2018cowをガンマ線やエックス線、電波などさまざまな波長で、地上の望遠鏡や宇宙望遠鏡を使った追観測が実施された。国立天文台がチリの標高5,000メートルの高地に建設したアルマ望遠鏡も、この中に含まれている。

 研究グループは、AT2018cowが発見された5日後からハワイに設置された電波望遠鏡で、10日後から豪州の電波望遠鏡ATCAで観測を実施した。アルマ望遠鏡による観測は、AT2018cowが発見された14日後、22日後、23日後に行なわれた。AT2018cowのような突発天体を観測するため、研究グループは特別な提案をアルマ望遠鏡に行ない、観測の実行が認められたという。

■AT2018cowの候補は2種類

 研究グループによると、AT2018cowの正体として2つの候補が考えられるという。1つ目はAT2018cowが非常に特殊な超新星爆発だとする説だが、これまで発生した超新星爆発とまったく異なる現象だと判明している。アルマ望遠鏡でAT2018cowを観測した結果、ミリ波やサブミリ派といった電波がこれまでの超新星爆発よりもずっと明るいという。

 2つ目は、AT2018cowがブラックホールに近づきすぎて破壊された星だとする説だ。ところが爆発の場所が銀河の中心から外れていたため、銀河中心に位置する超巨大ブラックホールが星を吸い込んだと考えられないという。星団の中にある中間質量ブラックホールが星を破壊したとしても、謎が残る。AT2018cowが密度の高い星間物質で起きたと考えられるものの、大きな星団には通常ガスがほとんど存在しないため、整合性がとれないという。

 AT2018cowの正体には謎が残るものの、爆発現象の原因となったエンジンに相当する天体がエックス線放射に重要な役割を果たしていると、研究グループは考える。AT2018cowが超新星爆発だとすると、ブラックホール、または磁場の強い天体「マグスター」が誕生したと想定される。またAT2018cowをブラックホールが星を破壊した現象だとすると、破壊された星がブラックホール周辺の降着円盤へと変化したと考えられる。だが、電波観測では2つの現象を区別できないという。

 「星が生涯を終えるとブラックホールや中性子星が生まれることを理論からわかっていますが、これまで一度もその瞬間を目の当たりにしたことはありません」と、研究を主導した米ノースウェスタン大学のラファエラ・マルグッティ氏は語る。

 研究の詳細は、米天文学誌Astrophysical Journalに掲載予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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