ウィルタネン彗星が地球に最接近 国内外の望遠鏡で観測

2018年12月27日 09:08

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NASAが運営するハッブル宇宙望遠鏡が13日にとらえたウィルタネン彗星 (c) NASA, ESA, D. Bodewits (Auburn University) and J.-Y. Li (Planetary Science Institute)

NASAが運営するハッブル宇宙望遠鏡が13日にとらえたウィルタネン彗星 (c) NASA, ESA, D. Bodewits (Auburn University) and J.-Y. Li (Planetary Science Institute)[写真拡大]

 16日に地球から約1,160万キロメートルの距離に最接近したウィルタネン彗星。2018年に最も明るく輝いた彗星の姿を、米航空宇宙局(NASA)の運営するハッブル宇宙望遠鏡や、国立天文台のアルマ望遠鏡等が撮影し、写真を公開している。

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■観測史上10番目の近さのウィルタネン彗星

 ウィルタネン彗星は、米天文学者カール・ウィルタネンが1948年に発見した彗星だ。周期は5.4年で、細長い楕円軌道を取りながら太陽の周りを公転する。

 今回16日に地球に最接近したウィルタネン彗星までの距離は、地球と月とのあいだの距離の約30倍に相当する。この距離は、彗星の接近としては、観測史上10番目の近さだという。

 国立天文台が運営するアルマ望遠鏡は、2日と9日にウィルタネン彗星を観測した。アルマ望遠鏡は、彗星核を取り巻くシアン化水素分子(HCN)が放つ電波を観測し、HCN分子の分布をとらえるのに成功した。

 アルマ望遠鏡の観測は、彗星核の周りに集中したHCNガスと、非対称に広がるHCNガスを写し出した。しかし彗星までの距離が非常に近いため、ガスのほとんどはアルマ望遠鏡で見ることができないという。

■観測が明らかにするウィルタネン彗星の謎

 彗星核の内部には、地球からは接近できない。欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機ロゼッタは、ウィルタネン彗星に着陸機を降ろす予定だったが、ロゼッタを搭載する予定のアリアン5ロケットの爆発事故により打ち上げが遅延した。そのため、目標はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に変更された。

 今回ウィルタネン彗星が地球に非常に近い距離を通過するため、天文学者は詳細に研究できるチャンスを得た。NASAはハッブル宇宙望遠鏡のほかに、チャンドラX線観測衛星等を用いて、ウィルタネン彗星の核からガスが放出されるメカニズムや、彗星の氷の構成要素、太陽によるHCNガスの変化等を研究するという。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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