トヨタ、『クルマをつくる会社』から『モビリティ・カンパニー』へ移行

2018年12月2日 23:22

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記事提供元:エコノミックニュース

2018年1月、米ラスベガスで開催した国際家電見本市「CES」でトヨタが発表したモビリティーサービス用電気自動車「e-Palette Concept」

2018年1月、米ラスベガスで開催した国際家電見本市「CES」でトヨタが発表したモビリティーサービス用電気自動車「e-Palette Concept」[写真拡大]

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 世界の自動車会社大手が、「MaaS」というキーワードに注目している。MaaSとは「Mobility as a Service」の頭文字であり、「サービスとしての移動機能」の意だ。かみ砕くと、移動手段を「モノではなく、サービスとして提供する」ということを示した文言だ。

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 自動車業界がMaaSという言葉に注目したのは、消費者が自動車を購入して保有することから、利活用することを重視しはじめたことと大きな関係がある。つまり、自動車に対するニーズが「所有」から「利用」へ動いているということ。若い世代で「自動車離れが進んでいる」という指摘が端的に表している大きなトレンドだ。

 こうした環境下で、業界がここ数年、声高に叫んでいる「自動車というモノを販売するのではなく、自動車による移動サービスを提供する環境を整えなければ長期的に業界で主導権を発揮できない」という発言、問題意識に繋がる。

 それは世界を代表する自動車メーカーのトヨタも例外ではない。トヨタは2016年10月にモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の構築を推進すると発表した。すでに2年前に、移動を「サービス」として認識、その基盤となる「プラットフォーム」を将来の事業として打ち出していたのだ。

 加えて、2018年1月に、米ラスベガスで開催された世界最大級の国際家電見本市「CES」でモビリティーサービス用電気自動車「e-Palette Concept」を発表した。パートナーとして米アマゾン・ドット・コム、米ピザハットといったサービス企業、中国・滴滴出行(Didi Chuxing)、米ウーバーテクノロジーズといった大手ライドシェア事業者を迎え入れるという。

 そこで発表となった「e-Palette」には、使いやすい箱型の車両デザインで低床から得られた広大な室内空間を持つことや外部とつながる機能、ビジネスを支える充実した車両運行サポートがあるなどの機能を持っているといた。

 トヨタは、モビリティサービス事業者に対して、e-Paletteによる移動シーンで必要な機能をサポートすることで、収益を上げるというわけだ。これによってトヨタは、サービスで収益を上げる事業構造を目指すというわけだ。

 トヨタの豊田章男社長は、2018年5月の決算説明会で、この件について、「トヨタを『自動車をつくる会社』から、『モビリティ・カンパニー』にモデルチェンジすることを決断しました。我々が目指す『モビリティ・カンパニー』とは、世界中の人々の『移動』に関わるあらゆるサービスを提供する会社です」と述べた。

 つまり、トップ自らがトヨタの事業を「メーカー」から「サービス企業」へ変えていくという意思を示したわけだ。

 トヨタの業績は非常に堅調だという見方が一般的だ。2018年3月で2.4兆円の過去最高を記録。2019年3月期決算予想でも、純利益として上方修正した2.3兆円を見込んでいる。

 しかし、クルマの販売台数は、あまり伸びていない。2012年以降の円安や「トヨタ生産方式」と原価低減などにより収益性が改善されたことにより売上高、収益ともに拡大したが、販売台数では独フォルクスワーゲン、日産ルノー三菱アライアンスに次ぐ世界3位だ。

 CESでe-Palette Concept発表直前、2017年12月に、トヨタはトヨタフリートリースとトヨタレンタリースを統合したモビリティサービス事業会社として「トヨタモビリティサービス株式会社」設立を発表した。統合会社は、これまでの法人向けリース事業に加えて、新たなモビリティーサービス事業の創出することを標榜する。

 今後、自動運転技術などの新しいテクノロジーの時代には、モビリティサービス事業者が自社でエンジニアなども含めたリソースを抱えて、最先端のテクノロジーを常に追い求めるのは、かなりの手間と資金が必要だ。が、モビリティサービス事業者がMaaSのプラットフォームを安価かつ安心して活用できれば、自社事業に専念することができる。トヨタの狙いはここにある。

 このようなMaaSへの取り組みで注目すべきは、独ダイムラーの取り組みの素早さだ。ダイムラーは外部との連携だけではなく、投資や買収・合併などを通じて、2008年からモビリティサービス事業に力を入れている。同社はモビリティサービス事業展開として3つの柱「mytaxi」「car2go」「moovel」を掲げる。「mytaxi」は13カ国80都市でサービスを展開し、すでに1530万人のユーザーを囲い込んでいる。「car2go」は、欧州・北米・アジアにおいて1.4万台以上のカーシェア事業を展開し、320万人のユーザーがいる。また、「moovel」ではチケッティングアプリやオンデマンド・シャトルサービスなどを通じて500万人のユーザーを抱えているのだ。

 加えて、こうしたサービスをダイムラーだけにとどめることなく、本来は競合企業である独BMWとも推進し、将来的に自動運転やオンデマンドのEVプラットフォームを共同で構築しようとさえしている。

 2018年9月に、2社は現在のモビリティサービスを統合する許可申請を欧州委員会に提出したことで本気度がわかる。自動車というハードウエアを扱う事業領域では競争関係にあるが、モビリティサービス事業においては50%ずつ出資する合弁会社を予定する。ドイツの両雄が首都をはじめとする都市で本格的にモビリティサービスを目指す。

 10年以上も前の2008年からモビリティサービス事業に取り組んできたダイムラーは、トヨタに比べてノウハウの蓄積などで優位に立つ。また、トヨタはユーザーとのB2C接点をディーラーなどに任せてきた。しかし、今後、モビリティサービス事業を進めるうえで「ユーザーが誰なのか」など、その特性を知らないことは、MaaSを運営するうえで致命的になる。まさに「カスタマー・オリエンテッドな姿勢」が必要なのだ。

 トヨタもその辺りは意識しており先般、国内の全販売店から「トヨペット店」などの系列を無くし全車種をオールトヨタ店で販売すると発表した。直接サービスを顧客に提供するプロセスも自動車メーカー自らが取得するという布石なのかもしれない。(編集担当:吉田恒)

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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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