AGC、EUV露光用マスクの生産能力を3倍に増強 7nm半導体の量産を見据える

2018年11月29日 18:29

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EUVマスクブランクス(写真:AGCの発表資料より)

EUVマスクブランクス(写真:AGCの発表資料より)[写真拡大]

 AGCは28日、極端紫外線(EUV)マスクブランクス生産能力を2020年に現在の約3倍に増強すると発表した。7nm(ナノメートル:1ナノメートルは、10億分の1メートル)世代の半導体について、微細加工の量産化に対応する。

【こちらも】GlobalFoundries、7nmプロセスを中止へ

 半導体業界で最も有名な法則は、ムーアの経験則だ。「半導体の集積度は18カ月で2倍になる」というもので、1965年から半導体業界全体のゴールとして技術を牽引してきた。50年にも亘り市場を牽引してきたこの法則に陰りが生じており、それがポスト・ムーアやモアーザン・ムーアとして議論されている。

 ムーアの法則の限界に挑む日本企業がある。その一端を担うのが今回の発表だ。先ず、ムーアの法則とその限界を探ってみよう。

 ムーアの法則が経験則であることがポイントだ。半導体の集積度を上げることが経済的に大きな価値を生む。半導体のトランジスタの寸法を1/2にすれば、搭載できるトランジスタの数は4倍に、トランジスタの性能は2倍に、消費電力は1/4になる。つまり、製造原価を下げながら、製品の小型化・高機能化・高性能化を実現できた。

 大雑把にムーアの法則の限界を挙げると、微細化と消費電力の限界といえるであろう。微細化は、既に数十の原子でトランジスタや配線を形成するに至り、それを転写するマスクの製造が極端に難しくなる。つまり、微細加工技術の研究開発費が極端に跳ね上がり、相まって、その製造装置の価格も上がる。1社の製品のみで半導体工場を構築できるのは、CPUのインテル、フラッシュのサムスンや東芝など、限られた企業であり、他には半導体の製造のみを請け負うTSMCやGF(GLOBALFOUNDRIES)などのファウンドリーメーカのみだ。

 消費電力には、トランジスタが動作すると発生するダイナミックパワーとトランジスタを搭載するだけで発生するリーケッジパワーの合計値である。微細化によりリーケッジパワーが占める割合が増加。その対策として、演算の並列化技術が進む。スマホやパソコンがマルチCPUへと移行したのは、その代表例である。

 現在、最先端の7nmの量産は、サムスン、TSMC、GFと限られたメーカのみだ。その微細化プロセスには、EUVを使用する。

●EUVマスクブランクスの生産能力増強

 7nmの微細加工を実現するために波長13.5nmのEUVを使用。EUVマスクブランクスは、低膨張ガラス基板の表面に複数の組成から成る膜を積層する構造であり、高い平坦度と低欠陥率を実現。

 EUVリソグラフィの雄ASMLなどの製造装置メーカによる需要や、サムスン、TSMC、GFの量産化動向を見据えた結果であろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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