世界初、太陽コロナの軟X線の観測に成功 日米の共同プロジェクト

2018年9月17日 17:51

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「打ち上げ前のFOXSI-3チームの集合写真。FOXSI-3が搭載された観測ロケットの前で撮影。」(c) NASA, FOXSI-3 team

「打ち上げ前のFOXSI-3チームの集合写真。FOXSI-3が搭載された観測ロケットの前で撮影。」(c) NASA, FOXSI-3 team[写真拡大]

 7日午前11時21分(日本時間では、8日午前2時21分)、米国ニューメキシコ州ホワイトサンズの観測ロケット打ち上げ場にて、太陽観測ロケット「FOXSI-3」の打ち上げが行われた。FOXSI-3は、太陽コロナ領域を約6分間観測し、世界初となる太陽コロナの軟X線・集光撮像分光観測に成功した。

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 観測データの解析は始まったばかりで、合計数百万個以上の軟X線光子を検出している。軟X線装置「Co-PI」を担当する国立天文台の成影典之助教は、「わずか6分間の観測だったが、これまでに誰も手にしたことがないデータを手にすることができ、打ち上げ後は興奮が収まらなかった。データの解析は始まったばかりだが、貴重な科学成果が出せそうな予感がしている。興奮はまだまだ続きそうだ。」と延べており、今後の科学成果が楽しみである。

 これまでFOXSIは2回の飛翔で「硬X線域」の観測を行っていたが、今回のFOXSI-3ではこれに加えて、「軟X線域」における集光撮像分光観測も行う世界初の試みとなった。このことによって、太陽コロナ中の超高温プラズマや非熱的プラズマについて、詳細に調査することが可能となる。

 太陽コロナで発見された軟X線であるが、他のX線より透過率が低いため、スナック菓子やレトルトカレーなどを包んでいるアルミの袋も鮮明に写りこむ。そこでこの機能を利用し、袋の上下をシールで閉じた部分にシワはないか、また内容物が挟み込まれていないか、などの検品用として実用化されている。

 今回の観測では15分間の飛翔を行い、太陽の黒点などの地場が集まる「活動領域」、地場がまばらにしか存在しないが太陽のほとんどを占める「静穏領域」、「太陽の北極域」を計6分間観測した。

 FOXSI-3では、日本で開発した最新技術が使われている。7つの望遠鏡のうちの1つは、今回から採用された軟X線域の撮像分光観測を行うための検出器であった。軟X線を十分に透過する、150ナノメートルという極めて薄い厚みを持つ一方、微小な破れ(穴)もなく、均一な厚みを持つアルミ製のフィルターが求められた。また、打ち上げの振動でも破れないという課題もクリアしなければならなかった。

 FOXSI-3の科学目的は、太陽コロナにおける高エネルギー現象を理解することで、そのうちのひとつが、「ナノフレア」のコロナ加熱への関係を調べることだ。ナノフレアは、通常の太陽フレアの10億分の1程度の極めて小さいフレアだが、コロナが高温になる要因の1つであると考えられている。

 なお今回の研究は、国立天文台、東京大学Kavli IPMU、名古屋大学、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所、東京理科大学、ミネソタ大学、カリフォルニア大学バークレー校、アメリカ航空宇宙局 (NASA) ゴダード宇宙飛行センター、アメリカ航空宇宙局 (NASA) マーシャル宇宙飛行センターの共同研究である。

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