富士通、液浸冷却システムを販売 ポスト京の世界最速返り咲きも支えるか

2018年9月9日 12:11

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サーバを取り外し、冷却液から引き上げる様子(写真:富士通の発表資料より)

サーバを取り外し、冷却液から引き上げる様子(写真:富士通の発表資料より)[写真拡大]

  • 「液浸冷却システム」の液浸槽

 富士通は6日、「FUJITSU Server PRIMERGY 液浸冷却システム」を、日本国内で販売開始し、順次グローバルに展開すると発表した。

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 液浸冷却とは、コンピュータを直接液体のタンクに沈め発熱を奪う技術だ。一般のデータセンターで使用される空冷方式とは全く異なる技術だが、コンピュータが高速化を希求する以上、液浸冷却は避けては通れないもののようだ。

 コンピュータを構成するのは半導体であるが、この半導体の速度には、PVT(プロセス、電圧、温度)依存性がある。この3つのPVT条件が良い方向になると、高速動作が可能になる。プロセスとは、製造装置で作成した半導体のプロセス条件の良否で、品質を保証する範囲で製造される。このプロセス条件が良い方向にあると素子は高速に動作する。半導体が動作するためには、定められた電圧範囲の電圧を与える必要があるが、電圧が高いほど、素子は高速に動作するが、より電力を消費する。ここで注意すべきは、素子は高速に動作するが、半導体は動作周波数で動作することだ。

 では温度はどうであろうか。温度が低いほど半導体素子は高速に動作するが、素子が高速に動作したり、電圧が上がったりすると発熱する。半導体が発熱すれば、更に温度が上がり、動作範囲の温度を維持できなくなる。半導体の素子数は、多くの機能を組み込むために、毎年増加する。発熱を抑え規格内の温度に保つために、空冷方式が用いられてきたが、それも限界にきていたようだ。

 空冷方式は、パソコン内でファンを回すことで、パソコン内部の空気を循環させながら半導体のCPUに風を送り、温度の上昇を防ぐ。

 今回の発表は、高い伝熱特性と絶縁性を持つ冷媒(フッ素系不活性液体)に、サーバを直接浸漬する「液浸冷却システム」だ。当然、2,000万円と高価な方式だが、今まで以上の高速化が要求されるならば、必須な技術なのだろう。

●FUJITSU Server PRIMERGY 液浸冷却システムの特長

 サーバ全体を偏りなく効率良く冷却することが可能だ。サーバ自体が発する熱が室内に排出されず、サーバルームなどの空調設備が不要。従来の空冷システム全体の消費電力を40%削減。また、設置スペース当たりのサーバ密度が2倍になることから、空冷よりも安上がりという主張らしい。

●液浸冷却(富士通、FUJITSU Server PRIMERGY)のテクノロジー

 ポスト京で世界最速の座に返り咲く目標のある富士通。液浸冷却は世界最速実現に欠かせない技術であろう。フッ素系不活性液体は、不燃性かつ人体に無害である。密閉性の高い液浸槽に閉じ込め、冷却液の揮発を最小限に防ぐ。

 密閉性の高い液浸槽は、サーバの設置に適さないとされていた高温多湿な地域や空気中に油分や塵埃が含まれる製造現場、塩害の恐れがある臨海地帯にも設置可能という。これば、クラウドコンピュータの設置場所の裾野を広げるかもしれない。

 先行事例として、インド工科大学デリー校が採用。低消費電力による運用コストの削減や高い静音性に加えて、高い演算処理性能の維持が評価されているという。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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