中国・自動運転シティー開発(2) 自動運転車開発【第1ハードル】AI自動運転技術

2018年7月20日 16:34

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■自動運転車開発3つのハードル

【第1ハードル】AI自動運転技術

 「自律型」であろうが、「インフラ協調型」であろうが、現在行われているのは「レベル5」までの自動運転技術開発の世界だ。あえて「自動運転シティー」と中国のように名乗る必要はないと感じる。これらの問題は結局のところ、ソフト開発・センサー開発など、システム全体の開発だ。これで全部と認識している技術者も研究者も、メディア記者も多いようだが、これは最初のステップである。

【前回は】中国・自動運転シティー開発(1)ICV「インフラ協調型」自動運転車開発の最前線

 現在までの車メカニズムも、実用になるまでに半世紀以上の時間が必要だった。今でこそドライバーが、タイヤ交換ができない、さらにはオイル点検も知らないで容易に車を所有し運転できるようになったのは、その「信頼性」が、車体にも、インフラにも出来上がっているからだ。私が教習所に通っていた時には、ATはなく、エンジン始動ではセルがない、または動かなくなることもあり、クランクシャフトでエンジンを始動する訓練を受けたものだ。タイヤは、現在のラジアルではなく、クロスプライタイヤはパンクすることが現実にあり、交換するとき力が必要だった。チューブ付きだったので、高速走行中にパンクし、死亡した友人もいた。

 初代カローラに乗っている時、夏場炎天下で渋滞した江の島の入り口を通るあたりで、何もしないのに水温が上昇を続けていた。オーバーヒートを避けるため、車が止まるとニュートラルにしてエンジン回転を少し上げ、ラジエーターファンを回すようにしていた。つまり、ファンの容量が2枚ばねで不足していたのだった。2代目コロナ1500セダンで東名高速を110km/hで巡行していた時は、またエンジン水温が上がり始めた。そこで、夏なのにヒーターを全開にして、窓を開けて走っていた。当時の車はまだまだ現在の車両には程遠い「実用性」だったのだ。

 半世紀経った現在、AI自動運転・EV・IoTシステムが「信頼性の向上」を主力として、技術の進歩と共に実用化され始めている。制御ソフトのバグの存在量などをみると、信頼性が「現在の車両メカニズム」のように向上するには、まだ長い時間がかかると感じる。AI自動運転・EV・IoTなどは、現状で「気軽な日常使用に耐えうる実用化レベルにない」と見るべきだろう。

 このステップにおいて、現在隠れた問題と認識できるのが、「運転支援システム」の使い方だ。グーグル・ウーバーなど自動運転の実験中に事故が起きているが、その中で人間が支援システムに頼りすぎて油断した事で事故になっているケースがある。「人間は余裕を使い果たす動物」であることの表れと解釈するべきなのではないか?

 「緊急ブレーキ」を過信して事故になるケースはあまりにも象徴的であるが、私が運転中、レーンキープサポートを受けている時、突然システムが解除される場面に出くわした。通常に運転していたので解除に気付かないくらいだったが、長時間レーンキープシステムに依存して運転していたなら、間に合わない場面があるのではないかとヒヤリとした。まだ工事中などで白線が消えていたりすると、センサーが追えなくなってしまうようだ。そんな時でも、人間は周囲の状況から事態を把握し、臨時の障害物を理解して道路を認識できるが、現在のAIは極めて幼いようだ。このレベルを上げるには多くのデータを必要とする。レベル5の自動運転ができるようになるまで、能力の低い装置は搭載を避けるべきであろう。

 このEVにおける「第1レベル」を全体の開発であると認識していたのがテスラのイーロン・マスク氏で、それをEVが開発できたと勘違いして本格的量産にかかったら、不良に悩まされ続けている。しかし現実には、次に待ち構える「実用化」、その前提になる「量産技術」が「大仕事」なのだ。それが完成してもなお、安心していると「未知の概念」に出くわすことがあるだろう。

 「100年に一度の革命期」と認識するのなら、安全のため全体像はつかんでおくべきだ。「安全」は、個人を大切に思う価値基準がないと生まれないもので、歴史的にも旧日本軍の兵士の扱い方を見れば分かることだ。これが「現代、アメリカンファンドと中国社会の最大の課題」となろう。

 次は、テスラがてこずっている【第2ハードル】実用化・品質保証(量産技術)を見てみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: 中国・自動運転シティー開発(3) 開発【第2ハードル】実用化・品質保証(量産技術)

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