NIMS-SoftBank先端技術開発センター設置 第一弾はリチウム空気電池

2018年4月12日 23:09

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リチウム空気電池によるおもちゃのヘリコプターの動作実証実験(写真1:ソフトバンクの発表資料より)

リチウム空気電池によるおもちゃのヘリコプターの動作実証実験(写真1:ソフトバンクの発表資料より)[写真拡大]

  • 開発中のリチウム空気電池:コインタイプ(左)とスタックタイプ(右)(写真2:ソフトバンクの発表資料より)

 ソフトバンクと物質・材料研究機構(NIMS)は11日、「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」の設置に関する覚書を締結したと発表した。先ず第1弾としてIoT時代に必要不可欠となる革新的電池「リチウム空気電池」の実用化に向けて連携する。

【こちらも】容量がリチウムイオン電池の15倍のリチウム空気電池開発

 1年前、NIMSは「カーボンナノチューブ空気極により超高容量なリチウム空気電池を開発」と発表。蓄電容量はリチウムイオン電池の15倍。リチウム空気電池を用いれば、電気自動車(EV)でガソリン車並みの走行距離が実現できるという内容だ。今回の発表は、ソフトバンクと連携して、リチウム空気電池の2025年の実用化を目指すものだ。

●リチウム空気電池とは

 リチウム空気電池は、負極活物質にリチウム金属を、正極活物質に空気中の酸素を使用。かさばる正極活物質を電池内に持つ必要がないため、理論エネルギー密度が高いだけでなく、正極に空気中の酸素を用いるため、低エネルギーコストが期待できる究極の二次電池だ。

 負極(リチウム金属)・セパレータ・正極(空気)を重ねて電解液を入れる構造だ。放電反応は、負極からリチウムが溶け出し、正極で酸素と反応して過酸化リチウムが析出。充電反応は逆に、正極の過酸化リチウムが酸素とリチウムに分解し、負極にリチウム金属が析出。この化学反応により電気を蓄えたり、放出したりできる。

●NIMSのリチウム空気電池の特長

 空気極材料にカーボンナノチューブを採用し、空気極の微細構造などを最適化。巨大容量の実現には、カーボンナノチューブの大きな表面積が寄与する。加えて、カーボンナノチューブの腐食耐性向上と空気から不純物を取り除く仕組みも必須だ。

 開発中の二次電池は、写真2に示すようなコインタイプとスタックタイプの2種類だ。IoTで必須なセンサー用の小型電源からドローンやロボティクスなどの大容量電源までを目指す。セルの積層による高エネルギー密度化の道筋の第一弾が写真1のようだ。

●リチウム空気電池(ソフトバンクとNIMS、実用化)のテクノロジー

 共同研究を行うリチウム空気電池は、文科省委託事業「統合型材料開発プロジェクト」による基礎研究の成果を、「次世代蓄電池(ALCA-SPRING)」で発展させたものだ。

 1年前のNIMSの発表では、EVへの期待が大きかった。ソフトバンクと組むことでより現実的な実用化を目指す。

 リチウム空気電池はIoT時代に向けて、さまざまなセンシングデバイスやウエアラブルデバイスなどにも長時間装用、駆動ができる軽量な電池として非常に親和性が高い。加えて、大容量の特性を生かしてドローンなどの飛行物体、ロボティクス分野などあらゆる産業への拡張性を持つ電池だ。2025年頃の実用化を目指すという。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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