微生物は巧みに「行き止まり」を回避している 東北大学の研究

2018年3月6日 16:26

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左端のデッドエンドを避け、Uターンして逃げる微生物のイメージ。 (画像:東北大学発表資料より)

左端のデッドエンドを避け、Uターンして逃げる微生物のイメージ。 (画像:東北大学発表資料より)[写真拡大]

 肉眼によっては見ることのできない微生物は様々な極限的環境下に生息している。海中、地中、生命体の内部。ちなみに人体においても、その体重のうちの1キログラム程度は微生物が占めると言われる。さて、そのような環境下で、微生物たちはどうやって「行き止まり(デッドエンド)」を回避して暮らしているか。それを明らかにしたのが今回の東北大学の研究だ。

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 極限環境下で生きる微生物がデッドエンドをどのように回避しているか、という研究は、過去には行われた例はあまりないという。しかし東北大学大学院工学研究科の石川拓司 教授と菊地謙次准教授の研究により、鞭毛(多数の毛のような器官)で泳いで暮らしている微生物は、二度と戻れなくなるデッドエンドに捕まることなく、泳ぎによって巧みにそれを回避していることが確認された。

 詳しいことは実験や数値シミュレーションによって割り出されたのだが、単純に結論をいえば、たとえばクジラやイルカのような高い知能を持つ生き物(なお厳密にはクジラとイルカは同じ仲間であるが)が、まれに浅瀬に嵌まって死んでしまったりするのに対し、まったく知性というものは持たないはずの微生物が、何らかの手段によって「デッドエンド」を把握し、そこからの逃げ道を割り出すことで、効率的な生存を行っているとみられるのである。

 今回の研究からさらに研究を進めていけば、たとえば感染症の原因生物がどうやって人体の中で棲息しているか、などといった問題にもアプローチすることができるのではないかという。

 なお、この研究の詳細は、2018年2月28日(英国時間)、Proceedings of the Royal Society B誌のオンライン版に掲載された。また、この研究は日本学術振興会科学研究費補助金の助成を受けたものである。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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