東芝とWDが急転直下の和解 こじれ切った関係に決別できるのか?

2017年12月14日 20:10

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 東芝は13日、米ウエスタンデジタル(WD)と、半導体メモリー事業の売却を巡る対立関係を解消し和解したことを発表した。裁判所へ申し立てていた法的措置は取り下げるとともに、協業する四日市工場(三重県四日市市)での共同投資も再開する。

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 東芝は6日の取締役会で、WDが歩み寄れば東京地裁への訴訟の取り下げを決議している。これに対して、WDは11日までに取締役会を開き、和解契約の調印を承認していた。その後両社は契約内容細部の確認しており、今回の発表へと至った。

 和解となったことで四日市工場の協業を規定した合弁契約を維持することや、21年以降の稼働が予定されている北上工場(岩手県北上市)も両社で前向きに協議を行う。

 東芝は2期連続の債務超過による上場廃止を避けるため、メモリー事業を売却する方針を決定していたが、WDの強硬姿勢を早急に変更させる目途が立っていなかった。

 東芝は、12月に第三者割当増資により約6千億円の増資を完了して、債務超過の不安は解消した。仮に18年3月までにメモリー事業の売却が出来なくとも、上場廃止はなくなった。WDは逆に追い詰められた。係争問題を契機として自社に有利な状況を作り出すことを目論んでいたものの、最先端のメモリー製品の調達が困難になると業容の阻害要因になりかねない。このまま裁判を続けても間違いなく勝てるとは限らないとなれば、「ブラフ」としての裁判に実利的な意味はないと判断したのだろう。どっちが得かを天秤にかけた上での結論である。

 メモリー事業売却のためには各国の独禁法を通過させる問題は残っているが、たとえ18年3月までに間に合わなくとも上場廃止の心配はない。増資によって最悪の事態は既に回避されていた。

 この半年余りの東芝とWDとの交渉では、同じように和解が近いと期待された瞬間があったが、タフなネゴシエーターであるWDに土壇場でのうっちゃりを食らわせられている。様々な紆余曲折を経てようやく今回和解に至った。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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