スバル・航空機部門との技術交流(上) 航空機から自動車へ 航空機と自動車は違う

2017年11月28日 16:42

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■元中島飛行機と元富士重工(スバル)
 スバルはボーイング787の中央翼を生産しているようだ。スバル(元富士重工)は、太平洋戦争までは日本の中心的航空機製造会社だった。三菱自動車の親会社である三菱重工の「ゼロ戦」についても、実は設計本家の三菱重工による生産機数より、2倍のゼロ戦を生産したと言われている(両社で約1万機)。富士重工も独自に「隼」「疾風」などを設計生産し、終戦間際には、戦略爆撃機B29より巨大な、アメリカ本土を爆撃する「富嶽」を計画していた。

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 ゼロ戦と同じエンジンを搭載した「隼」は、ゼロ戦と間違えられた様子もあるのだが、太平洋戦争初戦では大活躍している。「疾風」は戦争末期アメリカ軍から「ジョー」と呼ばれて、「2倍以上の味方がいない限り戦うな」と命令が出るほど恐れられていた。戦後、オクタン価の高いアメリカ軍のガソリンでテストしてみると、「F8FやP51などより優秀ではないのか」と言われるほどの性能を発揮したのである。元中島飛行機、現在のスバルは間違いなく、三菱重工と共に日本を代表する飛行機メーカだった。

■スバル内での技術交流 航空機から自動車へ
 スバル内の、航空機部門から自動車部門へは「カーボン技術」「空力技術」を提供し、自動車部門から航空機部門へは「ロボットなど生産技術」を提供しているとスバルは言っている。しかし、これは全てを真に受けることが出来ないであろう?

 まず「空力技術」では、一見航空機部門からの技術が貢献できるように見えるが、確かに基礎的な部分は一緒でも、それは学校の「お勉強レベル」ではないだろうか?なぜなら、車は「空力」の中ではかなり特殊な領域部分であると感じられるからだ。つまり「低速域(0~300km/h)」だけであること、「地面効果の中」であることだ。

 車の速度域は軽飛行機の世界であり、自家用機の中でも低速域でしかないのだ。戦後、三菱重工、富士重工とも軽飛行機は設計生産しているが、空気力学的に難しい領域ではないと考えられる。一方で、「地面効果」の領域では問題が山積している。自動車の空力レベルでは、かなり地面効果を詳細にしないと問題を捉えられないのだ。レーシングカーの世界の「ウイングカー」「スポイラー」などで見られる技術の問題だ。

 最近では、80km/h以上の「燃費の問題」が多く論じられているが、ミニバンなどの全面投影面積の大きな車が日本だけ多く生産されている。これは、日本国内で日常使う速度域では、ほとんど空力は問題となっていないことが推察される。スポイラーが効いてくるのは80km/hからであり、本格的に必要なのは160km/h以上ではないであろうか?

 地面効果が著しい車の空力問題では、航空機部門からの技術供与はほとんどなく、風洞実験結果などのデータにおいても、参考になるのは基礎的なものであろう。空気力学的には車の領域は「特殊部門」と捉えておく必要がある。

 カーボン技術については、日本のメーカーは、B787の胴体の一部を丸ごと造り、巨大な炉で焼き固めている。中国への流出が懸念される技術である。BMWi8、i3など、カーボンで全体を造るほどになりつつあるので、大いに参考となるのではないか?(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続き: スバル・航空機部門との技術交流(下) ボーイングの下請けによる果実は大きい

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