F1並みの切磋琢磨でAIの能力向上に賭ける ロボカー発進(下)

2017年8月4日 20:36

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「ロボカー」(写真: Roboraceの発表資料より)

「ロボカー」(写真: Roboraceの発表資料より)[写真拡大]

 (中から続く)ロボレースは、世界の技術者がレースという極限状況の中でソフトウェアを進化させ、自動運転技術の向上により世界の交通事情を改善するためのプラットフォームとなることを目標としている。

【中はこちら】F1並みの切磋琢磨でAIの能力向上に賭ける ロボカー発進(中)

 前出のキネティック社は「交通事故の原因の9割が人間のミスによるもの。自動運転技術を磨くことは必ず交通事故の減少に役立つはず。我々はロボレースを通じて自動運転の実用化を推進し、社会に貢献したい」と話す。

 F1は世界のモータースポーツファンの熱い支持を受けながら、極限状況の中で自動車技術の革新を続けてきた。今後はFEで最高の電気自動車の可能性を追求し、「ロボレース」でAIとEVの最適な融合を探ることになる。全世界の技術者が事故と大気汚染のない、全く新しい理念を持った車を創造するために英知を集めようとしている。

 こうしたAIとEVを巡る世界の自動車メーカーのダイナミックな動きを見つめていると、日本政府や日本のメーカーの動きは歯痒いと言わざるを得ない。

 自動車は2万~3万点の部品で組み立てられていると言われ、下請けメーカーやタイヤ、バッテリー、エアコン、オーディオ等の完成品メーカーの力を糾合する一大総合産業を形成している。日本国内でその資材調達・製造や販売・整備等に直接・間接に従事する従業員は500万人を超えるとの推計もあり、その動向によっては雇用の増減や特定の産業分野の興廃を直接左右しかねないパワーを有しているため、時としては政府の政策との整合性も求められる存在である。

 であればなおのこと、時代の趨勢を見極めた柔軟で大胆な取捨選択が、見える形で行われることが大切であろう。付和雷同することが良いわけではない。しかし、ここまでグローバルな存在となった自動車メーカーは、ガラパゴス化では生き続けられないことは明白なのである。

 4日の日本経済新聞は1面に「トヨタがマツダに出資しEVを共同開発」という記事を載せている。トヨタもマツダも立派な企業でありケチをつける気はないが、じれったさを感じるのは何故だろう?トヨタの本意は何処にあるのか?EV車をトヨタが20年までに、マツダが19年に発売する計画を伝えているが、マツダの開発がそれほど先行しているのか?他の自動車メーカーはどうする気なのか?日本のメーカーがEVに気を取られている間に、世界はAIとEVの融合を着々と進めるのではないか?何かと気を揉ませる日々が続きそうである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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