【ヤマハ発動機の2015年12月期決算】主要4事業セグメントが増収増益。今期見通しはやや保守的でも最終2ケタ増益を見込む

2016年2月13日 22:13

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記事提供元:エコノミックニュース

2月9日、ヤマハ発動機が2015年12月期本決算を発表した

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■最終減益は税務上の理由で、実態は決算好調


 2月9日、ヤマハ発動機<7272>が2015年12月期本決算を発表した。

 2015年12月期決算は、売上高が1兆6153億円で前年比6.2%増、営業利益が1204億円で同38.0%増(営業利益率は1.7ポイント増の7.5%)、経常利益が1252億円で同28.7%増、当期純利益が600億円で同12.3%減。営業利益、経常利益は2ケタ増益だったが、最終利益は減益になった。

 もっとも、最終減益は税務上の一時的な要因によるもので、アメリカ子会社で法人税などの追加納付356億円が発生し、本体で繰延税金資産144億円を追加計上したため。アメリカ子会社の税の追加納付は「移転価格税制に関する事前確認(APA)」についての日米相互協議の結果を受けて実施したもの。それがなければ実質的には最終増益だった。最終減益の影響でROE(自己資本利益率)は12.6%に低下した。期末配当は22円。年間配当は44円で、前期比で4円増配している。

■主力の二輪車は先進国市場で収益が拡大した


 ヤマハ発動機の主要4事業セグメント(二輪車、マリン、特機、産業用機械・ロボット)は、全て増収・営業増益だった。

 二輪車事業は売上高3.9%増、営業利益39.1%増。「MTシリーズ」など新商品投入の効果や高価格帯商品の販売増が増収に寄与した。新興国での通貨安や開発費の増加のような減益要因も、規模の効果、商品ミックスの効果、コストダウンなどの増益要因が吸収し、全体としては増益になっている。販売台数は先進国の北米、ヨーロッパは増加。日本は大型二輪は増加、原付は減少。新興国は、ベトナム、フィリピン、台湾では増加。インドネシア、ブラジル、中国では減少だった。

 マリン事業は売上高9.8%増、営業利益31.5%増。増収の要因は北米市場での大型船外機、ウォータービークルの販売増で、為替の円安効果が増益に寄与した。

 特機事業は売上高13.5%増、営業利益102.5%増(約2倍)。ROV(レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル)のラインナップが拡充し、販売増につながった。

 産業用機械・ロボット事業は売上高25.1%増、営業利益54.2%増。資産を譲り受けた日立ハイテクの事業吸収効果も出て、サーフェスマウンターの販売台数が日本国内およびアジアで増加している。

 なお、主要4事業以外の「その他事業」の売上高は0.4%減、営業利益は5.6%増だった。ただし電動アシスト自転車の販売台数は国内も海外も伸びている。

 地域別では、先進国では二輪車事業もマリン事業も特機事業も増収増益で、特に北米が良かった。経済減速や通貨安に見舞われた新興国の二輪車事業の利益は前期比でほぼ横ばいだった。

■新興国の不安定な経済を織り込み保守的な見通し


 2016年12月期の決算見通しは、売上高が5.2%増の1兆7000億円、営業利益が0.4%減の1200億円(営業利益率は0.4ポイント減の7.1%)、経常利益が0.2%減の1250億円、当期純利益が33.3%増の800億円。売上高と営業利益は2015年12月期の当初見通しと同額で、最終利益は2ケタ増でも営業減益、経常減益という、やや保守的な業績見通しになっている。

 保守的にみている理由は、先進国の景況は依然堅調でも、インドネシアやブラジルなどの新興国は資源安、通貨安で不安定な経済情勢になると予測されるため。2016年度の想定為替レートも、先進国に対してはドル円は前期比で4円円高の117円、ユーロ円は前期比で7円円高の127円と2015年度よりも円高に振れるシナリオで、新興国に対してはインドネシアは1ドル=14000ルピア、ブラジルは1ドル=4.0レアルと、2015年度よりさらに通貨安が進行すると想定している。

 それでも主要各事業では「稼ぐ力」を高めることにポイントを置き、たとえば二輪車事業はプラットフォームモデルのさらなる市場展開、マリン事業は高いブランド力を活かした高収益性の維持、特機事業はROVのスポーツ領域の強化に販売戦略の軸足を置く方針。それによって全事業セグメントで安定的な利益を確保し、話題が先行する四輪車の開発も含めて未来のための成長投資を推し進めていく。2016年度の成長投資は400億円を予定している。また、既存事業を支援する金融ビジネスの拡大にも本腰を入れていく。

■新中期経営計画の初年度は大幅増配を予定


 2016年12月期の配当見通しは中間期、期末それぞれ13円増配して35円、年間で26円増配して70円としている。今期は、2018年までに成長戦略に1300億円を投資し、売上高2兆円、営業利益率10%水準を目指す新中期経営計画の初年度にあたる。計画には「株主還元の強化」も盛り込まれ、配当性向の方針を従来の「連結当期純利益の20%下限」から「親会社株主に帰属する当期純利益の30%を目安とする」に改めている。それが2016年度の大幅増配見通しの根拠。EPS(1株当たり利益)は、2015年度の172円から2016年度は229円へ、33.1%増加する。

 新中期経営計画では、経営の数値目標として連結ベースで売上高2兆円、営業利益1800億円、営業利益率9.0%、自己資本比率42.5%、ROE(3年平均)15.0%、コストダウン(3年間トータル)600億円を挙げている。

 それを目指して、「豊かな生活」「楽しい移動」「人・地球・社会にやさしい知的技術」という3つの事業領域で、「ひろがるモビリティの世界」「マリン世界3兆円市場への挑戦」「ソリューションビジネス」「基盤技術開発」という4つの成長戦略を推進。ブランド力を活かし、コストダウンを図りながら既存事業の「稼ぐ力」を高める。安定的な財務基盤を確立し、積極的な成長投資を行う一方、株主還元も強化していく。

 ヤマハ発動機が2018年のあるべき姿として打ち出したのは「ひとまわり・ふたまわり大きな『個性的な会社』へ」。今年度、その新中期経営計画のスタートを切った。(編集担当:寺尾淳)

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