HD HyundaiとAnduril、米国沖で無人船の自律運航を実証 機関故障への対応も

米海軍の無人水上艦実証計画「ゴースト・フリート・オーバーロード」の試験船。今回のHD HyundaiとAndurilの実証に使用された船とは異なる参考写真(写真:US Navy, Public domain, via Wikimedia Commons)[写真拡大]
HD Hyundaiは2026年10月19日、米Anduril Industriesと共同で、カリフォルニア州ロングビーチ沖において無人水上艦の自律運航技術を実証したと発表した。元米海軍の368トン級試験船を使い、約3時間半にわたって自律航行、任務変更、隊形航行、機関故障を想定した緊急対応を披露した。
試験船には、HD Korea Shipbuilding & Offshore Engineering(HD KSOE)が開発した船舶自律化システム「VAone」と、Andurilの任務自律化プラットフォーム「Lattice」を搭載した。船そのものの運航・機器管理と、任務の実行・連携を組み合わせた点が特徴だ。両社は今回の成果を、米国を含む世界の無人水上艦市場への展開につなげる方針である。
■約3時間半の実証を陸上から監視
HD Hyundaiによると、実証には米海軍、米沿岸警備隊、米国船級協会(ABS)、韓国海軍、韓国防衛事業庁(DAPA)、両社の関係者ら約40人が参加した。同社は、韓国企業による米国水域での無人水上艦技術の実証として初めての取り組みと位置付けている。
使用したのは、米海軍が運用していた大型無人水上試験船を改修した船である。実証の様子は陸上の管制拠点に中継され、参加者は船の任務遂行をリアルタイムで確認した。
実証では、航行の自動化に加え、途中で任務が変わる状況や、ほかの船と隊形を組んで航行する状況を設定した。さらに、機関故障を想定した緊急対応も盛り込み、船が状況に応じて判断と対応を続ける能力を確認したという。
HD KSOEの未来技術研究院を率いるチャン・グァンピル執行副社長は、出港後に起こり得るさまざまな運用状況に対応しながら、複雑な任務を遂行する能力を確認できたことに意義があると説明した。今後も技術の開発と高度化を進め、無人水上艦市場での競争力を高める考えを示した。
■船の運航を担うVAoneと任務を担うLattice
VAoneは「Vessel Autonomy-No.1 & Only1」に由来する名称だ。HD Hyundaiの自律航行子会社Avikusが開発した「HiNAS Prime」を基盤に、航行と船内設備の管理、損傷への対応を組み合わせている。
HD Hyundaiの説明では、機関管理機能が船内機器の状態をリアルタイムで監視し、異常を検知すると自動で対応する。損傷対応機能は、船体などの損傷を検知して必要な措置を取る役割を担う。航路の選択に加え、航行を支える設備の状態まで自律化の対象を広げる構成である。
Latticeは、任務の計画・実行や複数システムの連携を担うソフトウェア基盤だ。Andurilは、異なるメーカーのセンサーや機器を統合し、共通の操作環境から管理できる設計を掲げている。今回の組み合わせでは、VAoneが船の運航機能を、Latticeが任務側の自律化を受け持つ。
HD Hyundaiは、両システムの統合によって航行、機関管理、損傷対応、兵器関連の自律化を含む無人水上艦技術を実証したとしている。具体的な実証シナリオとして公表したのは、自律航行、任務変更、隊形航行、機関故障時の緊急対応である。
AndurilのLatticeは、水上艦以外のシステムにも展開されている。同社によると、豪海軍向け大型自律型無人潜水機Ghost Sharkや、Roadrunnerを含む防空システムに活用されているほか、米特殊作戦軍の対無人機能力も支えている。異なる領域の機器を共通のソフトウェア基盤で扱う発想は、水上艦と水中・航空システムの連携を考えるうえでも重要になる。
■商用自律航行技術と船級協会との協力
VAoneの基盤となる航行技術には、Avikusが商用船向けに開発してきた知見がある。同社の「HiNAS Control」は、周囲の船や障害物を認識し、航路や速力の判断と操船制御を支援する自律航行システムだ。
HD Hyundaiは2026年4月、HiNAS Controlがノルウェーの船級協会DNVから型式承認を取得したと発表した。同社によると、多様な船種への適用を想定した量産型自律航行支援システムとして初の承認で、個別案件ごとに重ねていたシステム検証の負担を減らすものだ。2026年4月の発表時点で、累計受注は500隻超に達していた。
この承認に先立ち、Avikusは2025年6月、HiNAS Controlの設計についてDNVの型式承認設計認証を取得していた。対象は意思決定支援、衝突回避、航行機能で、DNVの自律・遠隔運航船向け指針に沿って設計を評価する手続きを経ている。
衝突回避の基準となるCOLREGsは、「1972年の海上における衝突の予防のための国際規則」で、41の規則からなる。見張りや安全な速力、他船との行き合い・横切りなどに関する国際的なルールであり、自律航行システムでも周囲の状況認識と適切な操船判断を結び付ける必要がある。
ABSも開発に関わる。ABSは2026年5月、4月のSea-Air-Space展示会でHD Hyundai、Andurilと覚書を締結したと発表した。船舶の設計、製造、自律化、船級を一体で検討する枠組みであり、船体とソフトウェアの開発に並行して、検証・認証の手続きを整える取り組みとなる。
■米海軍の調達は初期試験から生産へ
米海軍は中型無人水上艦(MUSV)について、企業が成熟した技術を実証し、調達につなげるマーケットプレイス方式を採用している。USNI Newsによると、海軍は2026年3月に従来のModular Attack Surface Craft(MASC)計画を中止し、新たな調達方式へ移行した。
海軍が5月29日に発表した初期海上実証の参加企業は、Sea Machines、Leidos、Saronic Technologies、Galliano Marine Services、PacMar Technologies、Birdon、HIIの7社だった。HD HyundaiとAndurilは、この選定企業の一覧には含まれていなかった。
Breaking Defenseが募集資料に基づいて報じた初期要件には、40フィートコンテナ2基を搭載できることや、海象階級4の条件下で25トンの甲板搭載物を積み、25ノットで2500海里を航行できることが含まれる。海軍は、周囲の海上環境を認識する能力、COLREGsに従う自律航行、長時間の任務遂行などを試験したと説明している。
海軍は9月29日、フェーズIの海上試験完了を受け、Galliano Marine Services、HII、Saronic Technologiesから計30隻を調達する計画を発表した。各社10隻で、1隻当たりの平均調達費は4000万ドル(約63億2000万円)、最初の引き渡しは2027会計年度末までを予定する。また、Leidos、PAC MAR、Sea Machinesにも各1500万ドル(約23億7000万円)を支払い、後続の生産契約を受けられるマーケットプレイスに加えるとした。
さらに海軍は9月23日、フェーズIIの統合・試験に関する提案募集を開始した。新たな提案を取り込み、将来の任務に対応する調達候補を増やす狙いがある。HD HyundaiとAndurilは、今回示した技術を足掛かりに米国の無人水上艦事業への参入を目指す。
■別途建造する大型船と米国での製造体制
両社は、ロングビーチで使った試験船とは別に、自律型水上船の開発・建造を進めている。2025年8月には協力範囲を広げ、同年11月には新たな自律型水上船の設計・製造に向けた提携を発表した。船舶の設計・建造技術と、任務自律化ソフトウェアを組み合わせる取り組みだ。
Seapowerによる2026年4月の報道では、開発中の船は全長約60メートル、500トン超で、米海軍のMUSV事業を想定している。Navy Timesは同月、Andurilの説明として、重要設計審査を完了し、最初の船の建造が進んでいると報じた。聯合ニュースによる10月19日の報道では、蔚山で建造する船は11月に米国沖で海上試験を行う予定である。
米国での製造にはEdison Chouest Offshore(ECO)が加わる。ECOは4月20日、Andurilとの提携を発表し、HD Hyundaiと開発する自律型水上船の米国製造を支える方針を示した。関連企業のGalliano Marine Servicesは、海軍の初期実証と9月の生産契約に選ばれている。
Andurilは事業全体でも資金と調達基盤を拡大している。ロイターによると、2026年5月にはシリーズHで50億ドル(約7900億円)を調達し、この資金調達時の評価額は610億ドル(約9兆6400億円)となった。米陸軍は3月、同社の商用技術の調達・管理を統合する、上限200億ドル(約3兆1600億円)の包括契約を発表している。
無人船の運用では、周囲を認識して航行する能力と、船内設備を維持しながら任務を続ける能力の両方が必要になる。加えて、測位や通信が不安定な環境への備え、損傷時の対応も重要だ。ロイターは、2025年8月のStarlink障害によって米海軍の無人船約24隻との通信が途絶え、試験運用が約1時間停止したと報じている。船体、機器管理、任務ソフトウェア、通信を組み合わせて運用を支えることが、自律型水上船の実用化を進める鍵となる。
元記事: Navigation Is Not Enough: HD Hyundai and Anduril Prove Full-Ship Autonomy in Long Beach
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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