東レ、収益鈍化も中期経営課題の取り組みで奮闘中

2020年1月27日 07:57

 東レは1月20日、高性能半導体カーボンナノチューブ複合体を用いて、低コストで作れる塗布型RFID(ICチップ)により、世界初となるUHF帯電波での無線通信に成功したと発表した。

 これにより今後、レジの自動化や在庫管理の省力化など小売・物流の大幅効率化やサプライチェーン全体の省力化が期待できる。

 東洋レーヨンは1926年、人造絹糸の製造を目的として三井物産の出資によって設立され、翌年には滋賀工場でレーヨン糸を初紡糸した。1951年には米デュポン社と提携し、ナイロンの製造を開始。その後レーヨンの生産は収束し、事業多角化が進む中1970年に東レに社名を変更した。

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 2019年3月期の売上高は2兆3,888億円。事業別の構成比は、衣料、自動車関連の繊維が40.8%、樹脂、ケミカル、フィルム、電子情報材料などの機能化成品が36.4%。水処理、エンジニアリングなどの環境・エンジニアリングが10.8%、航空機、一般産業用の炭素繊維複合材料が9.0%、医薬品、医療機器などのライフサイエンスが2.2%、その他が0.8%を占める東レの動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績

 前期売上高は2兆3,888億円(前年比8.3%増)、営業利益は前年よりも150億円減の1,415億円(同9.6%減)であった。

 営業利益減少の主な要因としては、原料価格上昇、競合激化と海外子会社の新規案件立ち上げ費用の増加により炭素繊維複合材料が92億円、樹脂、フィルムの原料価格上昇により機能化成品が37億円、海外のエンジニアリングで大型プラント工事が終了した影響で環境・エンジニアリングが11億円、全社調整その他で9億円の減益などである。

■中期経営課題(2018年3月期~20年3月期)での今期推進戦略

 今上半期(4-9月)は、米中貿易摩擦の影響により売上高1兆1,224億円(前年同期比5.8%減)、営業利益716億円(同7.8%減)と低調な実績を受けて、今期は当初予定を下方修正して売上高2兆3,300億円(前年比2.5%減)、営業利益1,450億円(同2.5%増)を見込んで次の戦略を推進する。

●1.成長分野での事業拡大

a)地球環境にやさしいグリーンイノベーション事業の拡大

 ・低価格で汎用性のあるラージトウ炭素繊維の生産増強による温室効果ガス削減。

 ・世界最高水準の植物由来原料比率を実現したスエード調人工皮革の発売。

 ・下排水処理に最適な逆浸透膜の発売により水処理改善。

b)人にやさしいライフイノベーション事業の拡大

 ・長期間の心電図測定をするウェアラブル心電図販売、滅菌型使い切り保護服開発など先端材料の展開。

 ・弁形成術用カテーテル、そう痒症改善薬のタイ、インドネシアでの独占的ライセンス契約など医薬、医療機器の強化。

●2.グローバルな事業の拡大と高度化

 ・インドで年5,000トンのコンパウンド拠点新設。

 ・マレーシアで年75,000トンのABS樹脂の増設。

 ・米国で年3万トンのポリプロピレンフィルムの増設。

 ・中国で飲料水処理設備の製造販売会社設立。

●3.競争力強化

 ・東レグループ横断で3年間に2,200億円のコスト削減を目指すトータルコストダウン。

 ・不採算事業の収益改善による事業体質強化。

 ・生産、技術、研究、社外パートナーとの連携による営業力強化。

 中期経営課題で掲げた今期目標売上高2兆7,000億円、営業利益2,500億円を大幅に下回る今期見込みで奮闘しているが、今後進行する物流革命の中でICチップを活用した東レの戦略に注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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