月に衝突したインドの月着陸船、アマチュア天文家が衝突地点を発見

2019年12月5日 18:01

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発見されたビクラムの破片。(c) NASA/Goddard/Arizona State University

発見されたビクラムの破片。(c) NASA/Goddard/Arizona State University[写真拡大]

 2019年7月に打ち上げられたインドの無人月面探査機チャンドラヤーン2号は、9月7日に月面着陸を目前にして通信が途絶え、探査は失敗に終わった。もし、成功していれば、ロシア、アメリカ、中国についで4カ国目の成功国となるはずだった。

【こちらも】NASA、印月探査機チャンドラヤーン2号着陸機を軌道上から確認できず

 あまり知られていないことだが、インドは2008年にチャンドラヤーン1号の国産ロケットによる打ち上げに成功し、月の周回軌道への投入を成し遂げただけでなく、2014年にはアジアで初めて探査機マンガルヤーンを火星周回軌道への投入に成功しており、日本と並ぶ宇宙開発先進国である。

 NASAは12月3日にチャンドラヤーン2号の着陸船ビクラムの残骸を発見したことを発表し、墜落地点の写真を公表したが、この発見はアマチュア天文家の貢献によるところが大きい。実はNASAはかねて、アメリカの月面探査機が撮影した写真を公開し、着陸船ビクラムの捜索を広く一般市民にインターネットを通じて呼びかけていた。

 これに呼応してインド東部の機械エンジニアであるシャンムガスブラマニアン氏は、墜落前の月面写真と墜落後の月面写真を毎日何時間もかけて丹念に比較検証を行い、ビクラムのものである可能性が高い破片を発見したとNASAに情報提供を行った。

 彼がNASAにもたらした情報は、ビクラムの破片の発見個所を2平方kmの範囲内に絞り込んだもので、この情報のおかげでNASAは、ビクラムの衝突地点とその破片の発見につなげることができたのである。

 インターネットの普及により、このように一般市民が行方不明になっていた着陸船の捜索に大きく貢献できた意義は非常に大きく、宇宙探査活動に一般市民も参画できることを世界中に知らしめることになったのである。

 これとよく似た取り組みとして、2015年にスティーブン・ホーキング博士が100億円以上をかけて「地球外知的生命体」探査プロジェクトを仕掛け、一般市民の参画も呼びかけた事例がある。

 このプロジェクトでは一般市民に、宇宙の知的生命に向けたメッセージを考えるか、または宇宙のあらゆる方向からやってくるあらゆる周波数の電波の分析に協力することを求めている。こちらの活動では一般市民の活躍による成果の報告はまだない。今回のインドの一般市民エンジニアによる発見は、新しい時代を切り開くきっかけになるだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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