矮小銀河、作った酸素の最大96%を失う―ハッブルなどで37個の収支を分析

2026年11月5日 12:36

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記事提供元:Tech Times

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ハッブル宇宙望遠鏡などの観測データを用いた研究で、近傍の矮小銀河37個に残る酸素は、恒星がこれまでに作ったと推定される量の4〜25%、平均約11%にとどまることが分かった。銀河本体から失われた割合は最大96%に達し、研究チームが比較したシミュレーションよりも酸素の保持率が低かった。

NASAは2026年11月2日、学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載された研究成果を紹介した。恒星が作る元素の収支を調べることで、小さな銀河から周囲へ物質が運ばれる過程を探る研究だ。

■恒星が作った酸素を数える

研究は、宇宙望遠鏡科学研究所とラトガース大学に所属するクリステン・マクイン氏らによるGLOW(Galaxies Losing Oxygen via Winds)プロジェクトの一環である。今回の論文「GLOW II」は、ガスに富み、星形成を続ける低質量銀河について、酸素の生産量と現在の保有量を比較した。

酸素は主に大質量星の内部で核融合によって作られ、超新星爆発などを通じて周囲へ放出される。生成過程が比較的よく理解され、観測もしやすいため、恒星が作った元素の分布や移動を追う指標になる。

天文学では、水素とヘリウムより重い元素をまとめて「金属」と呼び、その存在割合を金属量という。一般に恒星質量が大きい銀河ほどガスの金属量も高く、この傾向は「質量―金属量関係」として知られる。矮小銀河から重元素が流出する働きは、この関係を説明する重要な要素の一つだ。

星形成が続けば、新しく作られる酸素は増えていく。一方、現在の銀河に含まれる量は、外への流出や周囲からのガス流入にも左右される。生産量と保有量をそれぞれ推定することで、現在の元素組成だけでは捉えにくい物質循環の履歴を調べられる。

■個々の恒星とガスの観測を組み合わせる

調査の基盤となったのは、ハッブルが蓄積してきた可視光画像である。対象銀河は、ハッブルで個々の恒星を見分けられるほど近くにある。研究チームは恒星の明るさや色の分布から、過去の星形成の経過や化学組成を調べた。

これにスピッツァー宇宙望遠鏡の赤外線データ、超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)などによる電波観測、地上望遠鏡で測定したガスの酸素存在量を組み合わせた。異なる波長の観測を使い、恒星やガス、塵に含まれる酸素を見積もる手法だ。

過去の星形成から求めた総酸素生産量と、現在の銀河本体に含まれる酸素量を比較した結果、保持率は4〜25%、平均約11%となった。平均すると、作られた酸素のおよそ9割が銀河本体の外へ移った計算になる。残った酸素の多くはガスに含まれていた。

この収支分析は、酸素が銀河からどれほど失われたかを推定する手掛かりになる。大質量星からのエネルギー供給や超新星爆発によってガスが外へ押し出される「恒星フィードバック」が、その主要な仕組みと考えられている。矮小銀河は大質量銀河より重力による束縛が弱く、こうした流出の影響を受けやすい。

■シミュレーションとの違いはモデルごとに異なる

研究チームは、観測から求めた保持率を、既存の流体力学シミュレーションと比較した。対象となったモデルは、恒星や星間ガスに残る重元素の割合を全体として高めに予測していたが、隔たりの大きさはモデルや銀河によって異なった。

例えば、FIREプロジェクトのムラトフ氏らによる計算では、対象となる質量範囲で保持率が観測値の約2〜4倍だった。クリステンセン氏らの計算は比較的近く、多くが観測値の2倍以内に収まった。質量―金属量関係を再現するモデルにも、元素の総収支という別の検証軸が加わったことになる。

比較の背景には、より大きな銀河を対象とした先行研究もある。モリー・ピープルズ氏らの2014年の研究は、星形成銀河の恒星、星間ガス、塵に残る重元素が、生産量の約20〜25%と推定した。GLOWは個々の低質量銀河を調べ、酸素の収支分析をさらに小さな銀河へ広げた。

シミュレーションでは、超新星のエネルギーや運動量を周囲のガスへどう伝えるかが重要になる。ダイナ・イブラヒム氏とチアキ・コバヤシ氏が2023年に公表した研究は、熱的、運動学的、確率的、力学的という4種類のフィードバックの扱いを比較した。力学的な方式が赤方偏移約3までの複数の観測と最もよく一致した一方、赤方偏移1以上ではガスの金属量が観測より高い傾向が残った。

GLOWの研究チームは、流出するガスの量だけでなく、そのガスがどれほど重元素に富むか、銀河間空間からガスがどれほど流入するかも保持率を左右すると分析している。銀河進化モデルの検証には、星形成、流出、流入を組み合わせて酸素収支を再現することが求められる。

■銀河を離れた酸素の行方を探る

失われた酸素の候補地となるのが、銀河本体を取り巻く希薄なガスである「銀河周辺物質(CGM)」と、その外側に広がる「銀河間物質(IGM)」だ。銀河周辺物質は、銀河から出たガスがとどまったり、銀河へ流れ込むガスが通過したりする物質循環の場でもある。

銀河周辺の元素を調べる先行研究では、ハッブルの宇宙起源分光器(COS)が使われてきた。遠方のクエーサーの光が手前のガスを通ると、元素が特定の波長を吸収する。その吸収線から、光の経路上にある元素の量や運動を調べられる。

COSには遠紫外線と近紫外線の観測系があり、検出器の感度範囲はそれぞれ900〜2150オングストローム、1650〜3200オングストロームである。酸素の電離状態の一つであるO VIは、静止波長1031.9、1037.6オングストロームの吸収線を持ち、銀河周辺の高温ガスを探る指標になる。

マクイン氏らが2019年に発表した研究では、近傍の矮小銀河12個を水素のHα輝線画像で調べ、流出物質の多くがハローにとどまり、再び銀河へ取り込まれる可能性を示した。GLOW IIも銀河周辺物質に関する既存の観測を検討しており、失われた酸素の主な貯蔵場所を特定することが今後の課題となる。

矮小銀河が銀河間空間へ重元素を供給するという考えには、長い研究の蓄積がある。フェラーラ氏とトルストイ氏は1999年に公開したモデル研究で、特定の質量範囲の矮小銀河が重要な供給源になり得ると予測した。酸素が銀河周辺に残って再循環する割合と、さらに外へ運ばれる割合を調べることは、宇宙の化学進化を理解する手掛かりになる。

■ローマンで探し、ハッブルとウェッブで詳しく調べる

次の研究では、さらに暗く小さな銀河へ調査を広げる計画がある。NASAによると、マクイン氏はナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡を使い、広い空域からこうした銀河を探す承認済みの観測計画を持つ。

ローマンは2026年8月30日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた赤外線宇宙望遠鏡だ。ハッブルの赤外線カメラの約100倍の視野を備える。マクイン氏は宇宙望遠鏡科学研究所で、ローマンの科学運用センターの責任者も務めている。

計画では、ローマンで見つけた銀河をハッブルやジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で詳しく観測し、個々の恒星から星形成の歴史を復元することを目指す。共同研究者でユタ大学助教のグレース・テルフォード氏は、GLOWの対象銀河の一部で大質量星を詳しく観測する研究を進める。酸素を作る恒星と、銀河全体の元素収支を両側から調べる取り組みだ。

元記事: Dwarf Galaxies Lose Up to 96% of Oxygen Produced, Hubble Survey Reveals

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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