HD Hyundai Robotics、自社AI搭載の双腕ロボットを公開 部品準備・組み立ての自動化へ

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韓国のHD Hyundai Roboticsは2026年10月21日、大邱で開幕した展示会「FIX 2026」で、開発中の知能型双腕ロボットを初公開した。同社によると、自社製のロボット基盤モデルを搭載し、周囲の状況を認識して動作を生成する。まず部品の取りそろえや組み立てへの適用を進め、溶接や塗装へ用途を広げる計画だ。
■韓国と米国で披露した双腕プラットフォーム
双腕ロボットは、人の上半身に似た構造に2本の腕と、左右それぞれ5本の指を備える。朝鮮日報などの報道によると、各腕の可搬質量は7キログラム、作業半径は630ミリメートルで、指を使って物体をつかみ、移動させる精密作業を想定している。
大邱では、FIX 2026と併催するロボット産業展示会「ROBEX 2026」に出展した。会期は10月21〜24日で、同社は双腕ロボットに加え、高可搬質量のHDC協働ロボットシリーズや溶接自動化ソリューションも紹介した。
ソウル経済新聞によると、双腕ロボットは同じ21日、米ラスベガスの「FABTECH 2026」でも北米の顧客に披露された。同展示会は10月21〜23日に開催され、同社は造船現場向けのArcLiftシリーズなど、溶接自動化技術も展示した。
■周囲を認識し、動作につなげる自社AI
HD Hyundai Roboticsは、双腕ロボットに独自の「ロボット基盤モデル(RFM)」を搭載したと説明する。周囲の環境を認識して適切な動作を生成し、作業者が手順や位置を一つずつ指定する負担を減らすことを目指している。
従来の産業用ロボットは、教示された動作を高い再現性で繰り返す用途を得意とする。画像認識や力制御を組み合わせれば位置ずれなどにも対応できるが、対象物や工程に応じた設定、調整が重要になる。学習型のロボット制御では、作業の実例から物体の扱い方を学び、条件の変化に対応できる範囲を広げる。
この分野で研究開発が進むのが、視覚・言語・行動を結び付けるVision-Language-Action(VLA)モデルだ。画像と作業指示を入力し、ロボットの動作を出力する。NVIDIAのGR00T、Physical Intelligenceのπ0、Google DeepMindのGemini Roboticsなどが代表例である。
例えば、部品をトレーに移す作業なら、画像から部品の位置や向きを捉え、指示に沿って腕や手を動かす。学習した作業や環境の範囲で、置かれ方が変わっても対応できる能力が重要になる。HD Hyundai Roboticsも、こうした柔軟な作業能力を製造現場へ持ち込もうとしている。
■VLAを理解する「画像・指示・行動」のつながり
VLAの仕組みは、画像を特徴へ変換する処理、言語指示と視覚情報を組み合わせる処理、動作を出力する処理に分けると理解しやすい。画像の特徴は、物体の種類や周囲との位置関係を動作生成に利用するための情報となる。
研究チームが公開したOpenVLAでは、SigLIPとDINOv2を組み合わせた視覚エンコーダーを使い、得られた特徴を言語モデルに渡す。その言語モデルが、ロボットの行動を表すトークンを予測する構成を取る。
一方、Physical Intelligenceのπ0は、事前学習済みの視覚言語モデルに、連続的な動作を生成する専用部分を組み合わせる。NVIDIAのGR00T N1.7も、視覚言語モデルと拡散Transformerによる行動生成を採用する。画像や指示を実際の動作へ結び付けるという共通構造のもとで、モデルごとに異なる実装が使われている。
Figure AIも、自社VLAモデル「Helix」を用いた荷物の取り扱いを公開している。同社によると、形や硬さが異なる荷物を扱い、ラベルを読み取れる向きに変える作業などに取り組んできた。こうしたモデルを製造現場で評価する際には、対象物の種類、作業成功率、処理時間、介入の頻度といった条件が重要になる。
■内製モデルを育てる製造現場のデータ
ロボットの学習には、カメラ画像、作業指示、関節や手先の動作などを対応付けたデータが使われる。人が遠隔操作して実演を記録する方法に加え、シミュレーション、人の作業映像、既存のロボットデータを組み合わせる方法も研究されている。
Physical Intelligenceは、π0の研究でデータ、未知の状況への対応、頑健性を主要な課題として挙げている。多様な作業の記録に加え、目的の工程に合わせた質の高い追加学習データを用意することが、実用的な能力を育てる鍵になる。
HD Hyundai Roboticsには、製造業への納入実績がある。ヘラルド経済の2026年8月の報道によると、同社は2025年に現代自動車と起亜へ産業用ロボットをそれぞれ約300台供給した。起亜向けのロボットは生産ラインでの調整を経て2026年に本格稼働し、現代自動車向けは北京現代の第4工場に設置されたという。
同社は今回の双腕ロボットを、作業知能を学習・検証するプラットフォームに位置付けている。そこで得た知能を既存の産業用ロボットや協働ロボットにも展開する方針だ。現場で必要な作業を定め、観測と動作の記録を学習に使える形へ整えることが、製品群全体の高度化につながる。
内製化は、現場の要求に合わせてモデルの開発方針や改良を管理する選択でもある。業界では、外部技術と自社の開発体制を組み合わせる動きもある。Amazonは2024年、Covariantのロボット基盤モデルの非独占ライセンスを取得し、同社の共同創業者や研究者らを迎え入れると発表した。
■力覚と触覚で、物体との接触を捉える
物体を扱うロボットには、画像に加えて接触時の情報が役立つ。部品を押し込む力や、指が物体に触れている位置を捉えれば、腕と手の動作を調整するための手掛かりが増える。HD Hyundai Roboticsは、力覚・触覚技術を使って双腕ロボットの操作能力を高める方針だ。
その協力先が、成均館大学の研究室を起源とするAIDIN Roboticsである。HD Hyundai Roboticsは2026年9月11日、同社に130億ウォン(約15億5000万円)を出資して株式を取得した。ソウル経済新聞によると、Samsung Venture Investmentも30億ウォン(約3億5700万円)を出資し、今回の調達総額は160億ウォン(約19億円)となった。
AIDIN Roboticsは、6軸力覚センサーと触覚センサーを開発している。6軸力覚センサーは、3方向の力と各軸回りのモーメントを測定する。手首などに取り付けることで、手先や把持した物体に作用する力を評価し、力制御に利用できる。
同社の触覚センサーは、複数の検出セルによって接触位置と力の分布を捉える。静電容量を利用するセンシング技術が基盤にあり、手や指先への装着を想定する。手首に伝わる力と、物体に触れる面の局所的な情報を組み合わせることで、異なる形状の部品を扱う際の制御に生かせる。
両社は、造船・重工業向けの高負荷対応5指ロボットハンドも共同開発する計画だ。HD Hyundai Roboticsが開発するヒューマノイドへの搭載を目指す。協力対象には、研磨などの表面処理を自動化するソリューションも含まれる。
■上半身から車輪移動、二足歩行へ
HD Hyundai Roboticsは、製造現場で必要な腕と手の精密操作を優先し、上半身型の構造を採用したと説明する。部品をつかみ、向きを変え、所定の場所へ置く能力を先に磨く設計だ。
移動機能は段階的に拡張する。まず車輪付きの移動プラットフォームと統合し、二足歩行は長期的な開発目標に据える。移動と操作を段階的に組み合わせれば、それぞれの能力を検証しながら、作業範囲を広げられる。
初期用途の中心となるのが、組み立てに必要な部品を取りそろえる「キッティング」だ。部品の準備や組み立てから始め、その後は溶接、塗装などの製造工程へ展開する。工程ごとの要求に合わせて、操作能力やセンシングを高めていく構想である。
■韓国勢の開発競争と北米の造船需要
韓国の大手企業もロボットとAIの統合を進めている。サムスン電子は2030年までに製造拠点をAI主導の工場へ転換する方針を発表した。傘下のRainbow Roboticsとの協力も進めており、聯合ニュースによると、同社経営陣はロボット事業で製造拠点の自動化を優先する考えを示した。
毎日経済新聞によると、LGエレクトロニクスは2026年をロボット事業の本格展開元年と位置付けた。同社はCES 2026でホームロボット「LG CLOiD」を披露している。Doosan RoboticsもAIによる自動化を進め、NVIDIAの発表によると、シミュレーションや学習、機器上での推論に同社の技術を取り入れる。
Korea Business Reviewは2026年6月の分析で、韓国のヒューマノイドのハードウェア競争力が世界水準に近づく一方、フィジカルAIのソフトウェアでは米中を追う立場にあると評価した。製造業で蓄積した機構設計や制御技術を、学習型の知能とどう組み合わせるかが競争の焦点になる。
HD Hyundai Roboticsは、朝鮮日報などによると韓国の産業用ロボット市場で首位に立つ。ソウル経済新聞は、米国、中国、ドイツに販売網を持つと報じている。また、2025年10月には韓国産業銀行とKY PEによる1800億ウォン(約214億円)の投資が発表され、基盤モデルなどの次世代技術開発と海外市場の拡大に充てる方針を示した。
北米では、2026年5月7日に米Chouest GroupとArcLift GOの供給契約を締結した。同社発表によると、北米の3造船所とブラジルの1造船所への導入を予定しており、米国の造船分野における同社初の自動化案件となる。大邱での双腕ロボットの披露とラスベガスでの溶接技術の展示は、次世代の作業自動化と既存製品の海外展開という二つの事業を示す場となった。
■広がるロボット市場で問われる現場への適応
Grand View Researchが2026年7月に更新した予測では、世界の産業用ロボット市場は2026年の419億米ドル(約6兆5800億円)から2033年には789億米ドル(約12兆4000億円)へ拡大する見通しだ。2026〜2033年の年平均成長率は9.5%としている。
国際ロボット連盟が2026年9月に公表した統計によると、2025年の世界の産業用ロボット新規導入は前年比11%増の60万台超だった。2026年は9%増の65万5000台を見込む。工場で稼働するロボットの蓄積と、新たな導入の双方が進んでいる。
モデルのライセンス、学習データ、追加学習サービスなどを含むロボット基盤モデル市場について、Meticulous Researchの2026年10月公表の予測は、2026年を9億9000万米ドル(約1550億円)、2036年を248億5000万米ドル(約3兆9000億円)と見積もる。予測期間の年平均成長率は38.0%としている。
HD Hyundai Roboticsの構想は、双腕ロボットで作業知能を学び、その成果を既存の産業用・協働ロボットへ広げるものだ。製造現場で必要な作業を安定してこなし、得られた経験を次の改良へつなげる仕組みが、自社基盤モデルの価値を左右する。
元記事: In-House Robot Brain: HD Hyundai Debuts Dual-Arm Physical AI Platform With Its Own Model
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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