インドネシアのイカ漁船で乗組員4人に暴行、船主と漁獲物の買い手にも調査要求

(Greenpeace.org)[写真拡大]
インドネシア東部のアルー海で操業していたイカ漁船「KM Maulana 23」で、乗組員4人が暴行を受けた。警察は乗組員18人を暴行事件の容疑者として拘束し、人身取引の疑いについても捜査している。環境団体Greenpeace Indonesiaは10月13日、船主や乗組員の募集業者、漁獲物の買い手まで調べるよう求めた。
■漁獲目標に届かない乗組員への暴行
9月30日、乗組員が水を張ったたるに押し込められ、殴られるなどする映像がインドネシアのSNSで広まった。被害者として報じられているのは、イリヤス・サラフディン、オクタビアン・マクレザ、ジョハン・サプトラ、シャワル・ススウォノの4人だ。地元報道によると、4人はアルー諸島のドボで治療を受けた。
インドネシア海洋水産省(KKP)のプン・ヌグロホ・サクソノ監視総局長によると、船内では乗組員ごとに1日または一晩でイカを少なくとも2キログラム釣る目標が設けられ、達成できない者への暴行を副船長が命じていたという。現地メディアMongabay Indonesiaは、イリヤスに左耳の聴力低下や腹部、脚の痛みが残っていると報じた。
Greenpeace Indonesiaによると、乗組員は夕方から翌朝まで働き、食事は1日2回だった。同団体は、乗組員には前払い金500万ルピア(約4万4000円)と最大1000万ルピア(約8万8000円)の利益配分が約束された一方、約4カ月の操業で受け取ったのは50万ルピア(約4400円)だったとしている。
■船の停止と二つの捜査
KKPは10月2日、巡視船「KP Hiu 14」で総トン数89トンのKM Maulana 23をアルー海で停止させ、乗組員28人とともにドボへ移送した。同省の発表では、船は停止時にイカ釣り漁具を使い、約1トンのイカを積んでいた。KKPは漁具と許可内容の整合性などを調べ、同船の操業許可を停止した。
Greenpeace Indonesiaが10月13日に公表した情報によると、アルー諸島の警察は聴取した乗組員24人のうち18人を暴行事件の容疑者として拘束した。タンジュン・プリオク港の警察も10月7日、人身取引の疑いについて正式な捜査に移行したが、10月10日時点で容疑者は公表していなかった。KKPは船主企業として「PT AMIR」を調べ、同船の許可取り消し手続きを進めている。
現地報道によると、同船には船に搭載する落とし網の許可があり、停止時にはイカ釣り漁具を使用していた。KKPは漁具の使用状況を含めて操業内容を調査している。暴行事件と漁業上の許認可に関する調査は、それぞれの所管に沿って進められている。
■船主と買い手の調査を求める声
Greenpeace Indonesiaの海洋キャンペーナー、シハル・シララヒは、船内の加害行為に加え、募集、賃金の支払い、漁獲目標の設定に関わった者の責任を調べるよう訴えた。同団体は、被害者への未払い賃金や利益配分、医療・心理面の支援、人身取引法に基づく賠償を求めている。船主企業が保有または運航するほかの船の調査も要求した。
同団体によると、停止時に船が積んでいた約1トンのイカについて、買い手は公表されていない。Greenpeace Indonesiaは、KM Maulana 23と船主企業のほかの船から漁獲物を受け取った業者を追跡し、その流通経路を明らかにするよう求めた。調査中は、関係する加工業者や輸出業者が同社の船からの購入を止めることも提案している。
要求には、ジャカルタのニザム・ザックマン漁港での乗組員の雇用契約や配置手続きの確認、海上で使える連絡手段と安全な苦情申立窓口の整備も含まれる。こうした手続きと取引関係を調べることが、船上で起きた暴行の背景を把握する手掛かりになる。
■乗組員保護の制度と現場
インドネシア政府は2026年4月24日、漁業労働に関するILO第188号条約を承認する大統領令を施行し、6月10日に批准書をILOへ寄託した。ILOの登録簿によると、条約がインドネシアで発効するのは2027年6月10日である。KKPは2026年5月、同年の省令第4号に公正で透明な賃金や人道的な労働時間に関する条約の内容を取り入れたと説明している。
第188号条約は、漁業労働者の雇用契約や船内の生活・労働条件、旗国による監督体制などを定める。船舶の検査に関する規定は船の長さや航海の条件などによって異なる。Greenpeace Indonesiaは、KM Maulana 23がニザム・ザックマン漁港から出た際の雇用契約と乗組員の配置手続きを政府が説明するよう求めている。
インドネシアは、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の乗組員労働基準づくりにもニュージーランドとともに関わった。WCPFCは2024年に基準を採択し、2028年1月の発効を予定している。シララヒは、国内の漁船でも乗組員保護の取り組みを進めるべきだと訴えた。
■漁業労働をめぐる広い課題
Greenpeace Indonesiaは、今回の事件とともに、2024年の「Run Zeng 03」「Run Zeng 05」や2025年の「KM Awindo 2A」で明らかになった乗組員への虐待を挙げている。国際労働機関(ILO)は、2021年の世界推計で、漁船上で強制労働に置かれた人を少なくとも約12万8000人と見積もった。
Greenpeace Southeast Asiaとオーストラリア合同教会が2026年3月に公表した別の調査では、インドネシアのマグロ漁船17隻で働く乗組員25人について、強制労働を示す兆候が報告された。同団体は、これらの船とオーストラリア市場向けの製品を扱うインドネシアの水産加工会社5社との取引関係を分析し、違法・無報告・無規制漁業の兆候も指摘した。
KM Maulana 23では、暴行事件と人身取引の疑いに関する捜査が続く。被害者への支援とともに、乗組員がどのように募集され、約束された賃金がどう扱われたか、漁獲物がどこへ渡る予定だったかが、今後の調査の焦点となる。
元記事: Indonesia’s New Fishing Law Required Port Inspections; KM Maulana 23 Sailed Without One
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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