米Amazon、AI企業Decartを約70億ドルで買収交渉と報道 Trainium向け最適化技術に注目

2026年10月13日 11:33

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記事提供元:Tech Times

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Amazonがイスラエル発のAI企業Decartを約70億ドル(約1兆1100億円)で買収する交渉を進めていると報じられた。交渉は合意に至っておらず、条件が変わる可能性もある。DecartはAIモデルを各社の半導体上で効率よく動かすソフトウェアを開発し、Amazon Web Services(AWS)の独自AIチップ「Trainium」でも実績を公表している。

■約70億ドルの買収交渉

Wall Street Journalは10月11日、事情を知る関係者の話として、AmazonとDecartの買収交渉を報じた。取引額は約70億ドル(約1兆1100億円)で、数日以内に合意する可能性があるという。SiliconANGLEやイスラエルのCTechも交渉について伝えている。

Decartは2026年5月、3億ドル(約474億円)を調達したと発表した。この資金調達時の評価額は、投資を主導したRadical Venturesによると約40億ドル(約6320億円)だった。報道された買収額は、その評価額を約75%上回る。

AmazonはDecartの既存の戦略的顧客だ。Decartによると、両社は商業契約やAWS顧客向けの販売協力で提携し、同社の動画モデルをTrainium上で動かすためにも協力してきた。今回報じられた買収交渉は、そうした関係の延長線上にある。

■複数の半導体に対応する最適化技術

Decartの「Decart Optimization Stack(DOS)」は、AIモデルの学習と推論を効率化するソフトウェア群だ。モデルの設計から、半導体上の計算処理を担うプログラムの調整、コンパイラ、推論時の最適化までを扱う。同社は2026年5月にDOS 2.0を発表し、NVIDIAのGPU、GoogleのTPU、AmazonのTrainiumに対応すると説明した。

半導体が変わると、同じモデルでも効率よく動かすための調整が必要になる。SiliconANGLEによると、DOSは従来数カ月を要した移行作業を数週間に短縮できるという。Decartも、顧客の既存設備に組み込めることをDOSの特徴に挙げている。

一方、AWSはTrainium向けに独自の開発環境「Neuron」を提供している。NeuronはPyTorchやJAX、vLLMなどに対応し、モデルの実行から性能調整までを支援する。DOSの価値を見極めるうえでは、実際のモデルと半導体の組み合わせで、処理速度や費用がどう変わるかが重要になる。

■Trainiumで示した性能

Decartの2026年5月の発表には、Amazon傘下の半導体開発部門Annapurna Labs幹部のコメントが掲載されている。それによると、Decartの動画モデル「Lucy 2」はTrainium3上で、理論上の演算性能に対するモデルの利用率を示す「Model FLOPS Utilization」が80%を超えた。この値はLucy 2を動かした条件での性能を示すものだ。

AWSの日本語サイトには、Decart共同創業者のディーン・ライタースドルフ氏の説明も掲載されている。同氏によると、初期テストでは上位GPUとの比較で動画のフレーム処理量が最大4倍、コスト効率が2倍となり、遅延は40ミリ秒から10ミリ秒に縮まった。比較対象や条件によって結果は変わるため、同社による初期テストの数値として読む必要がある。

DecartはDOS 2.0について、AIエージェント向け推論で毎秒1600トークン超を処理し、同社が示す業界平均の約200トークンを上回るとしている。同社はまた、同等のハードウェアを使う比較対象に対し、リアルタイムAIの処理速度が8倍、コスト効率が100倍超になったと発表した。いずれもDecartが示した性能値だ。

■推論コストを巡る競争

AIモデルの学習にはまとまった計算資源が必要だが、推論の費用は利用者からの要求に応じて継続的に発生する。サービスの利用量が増えるほど、モデルを速く、効率よく動かすことが運営費に影響する。DOSが学習と推論の双方を対象にしているのも、半導体の使い方が費用を左右するためだ。

調査会社MarketsandMarketsは2025年、AI推論市場が同年の約1062億ドル(約16兆8000億円)から2030年に約2550億ドル(約40兆3000億円)へ拡大すると予測した。市場規模は同社の推計であり、将来の実績値ではない。

米スタンフォード大学の「AI Index 2025」は、一定の性能水準に達するモデルへの問い合わせ費用が、2022年11月の100万トークン当たり20ドル(約3160円)から2024年10月には0.07ドル(約11.1円)になったと報告している。異なる時期のモデルを同じ性能水準で比較した数値だ。単位当たりの費用が下がっても、サービス全体の推論費用は利用量に左右される。

AWSはTrainiumを学習と推論の双方に提供している。AWSによると、Trainium3を搭載するTrn3 UltraServersは、前世代のTrn2 UltraServersと比べて性能が最大4.4倍、電力当たりの性能が4倍超になった。Decartの技術がAWS顧客にどのように提供されるかは、買収交渉の結果や、その後の製品方針に関わる。

■Decartを巡る動きと事業の広がり

DecartにはAmazon以外からも買収への関心が報じられてきた。CTechは、NVIDIAが買収交渉を進めた後、Anthropicとも協議が行われたと伝えている。同社はSpaceXの関心も報じたが、イーロン・マスク氏は買収する考えを否定した。

Bloombergは8月、Anthropicが約60億ドル(約9480億円)でDecartの買収を協議していると報じた。9月には、Anthropicが企業調査を行ったうえで買収を見送ったと伝えている。両社がその理由を公表したとの情報はない。

Decartは2023年、兄弟のディーン氏とオリアン・ライタースドルフ氏、モシェ・シャレフ氏が設立した。投資会社Radical Venturesは、創業者らをイスラエル軍の情報部隊「8200部隊」の出身者と紹介している。CTechによると、従業員は約100人だ。

同社はDOSに加え、映像を扱うAIモデル「Lucy」と、操作に応じて映像内の環境を変化させる「Oasis」を開発している。2024年10月にDecartと半導体開発企業Etchedが公開したOasisは、Minecraftを連想させる画面を、従来型のゲームエンジンを使わずに生成するデモとして注目された。

Oasisはその後、ロボットや自動運転の訓練を想定した「Oasis 3」へ展開した。Decartによると、利用者や機器の操作を受け取り、それに応じて次の場面を生成する。日本の研究機関で「世界モデル」と呼ばれる、観測から環境の状態や変化を捉える研究分野と通じる構造だ。

動画をリアルタイムで編集するLucyも更新が続き、Decartは2026年7月に「Lucy 2.5」を発表した。同社によると、フルHDの映像を毎秒30フレームで変換できる。

元記事: Amazon Nears $7 Billion Decart Deal to Fix Why AI Developers Pick Nvidia Over Its Trainium

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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