『アベンジャーズ/エンドゲーム』世界興収首位を奪還 再上映で見直す時間移動と多世界解釈

2026年10月6日 16:05

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記事提供元:Tech Times

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『アベンジャーズ/エンドゲーム』が2026年10月4日、世界興行収入で『アバター』を抜き、歴代首位を取り戻した。新映像を加えた再上映版『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』の興収が記録を押し上げた。

物語の鍵となるのは、過去への移動によって時間軸が分岐するという設定だ。その発想に量子力学の多世界解釈を重ねると、作品の時間移動を別の角度から楽しめる。

■再上映で世界興収29億2550万ドルに

ディズニーの10月4日発表によると、『エンドゲーム』の世界累計興収は推定29億2550万ドル(約4622億円、1ドル=158円換算)となった。『アバター』の29億2370万ドルを上回る、物価変動を調整しない興収額での記録だ。

興行データを集計するBox Office Mojoによると、今回の再上映分は約1億2600万ドル(約199億円、同)に達した。ディズニーは9月27日、再上映版の世界初週末興収を推定8600万ドル(約136億円、同)と発表している。

日本では『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』が9月23日から全国で期間限定公開された。日本のマーベル公式サイトによると、新作『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へつながる映像が加わり、INFINITY VISION版には国内で同方式限定の特別映像もある。

ディズニーは、MCU映画38作品の世界累計興収を2026年9月時点で350億7500万ドル(約5兆5419億円、同)としている。『エンドゲーム』の再上映は、その長い物語を12月18日公開予定の『ドゥームズデイ』へつなぐ機会にもなっている。

■分岐する時間軸と多世界解釈

『エンドゲーム』では、アベンジャーズが過去へ向かい、失われた仲間を取り戻すためにインフィニティ・ストーンを集める。彼らが過去で起こした出来事は、自分たちの歩んだ歴史を書き換えるのではなく、別の時間軸の物語につながっていく。

この「分岐」は、ヒュー・エヴェレット3世が1957年に発表した量子力学の相対状態の考え方を連想させる。後に多世界解釈と呼ばれるようになったこの立場では、測定結果を一つに定めるために波動関数の収縮を置かず、異なる結果に対応する分岐を考える。

エヴェレットは1930年生まれで、プリンストン大学でジョン・ホイーラーの指導を受けた。1959年にはニールス・ボーアのいるコペンハーゲンを訪れたが、考え方への反応は厳しかった。物理学史の研究には、ボーアの協力者レオン・ローゼンフェルドが後年、エヴェレットを「ひどく愚か」と評した記録もある。

エヴェレットはその後、国防分野の研究やオペレーションズ・リサーチに携わり、1982年に51歳で死去した。多世界解釈への関心は後年広がり、環境との相互作用によって量子的な重ね合わせの干渉が見えにくくなる「デコヒーレンス」の研究も、分岐の捉え方を考える手掛かりとなった。

現在、ジョンズ・ホプキンス大学の物理学者ショーン・キャロルは多世界解釈を支持している。キャロルと、南カリフォルニア大学の物理学者クリフォード・ジョンソンは『エンドゲーム』の制作にも助言しており、作品の時間移動を考える際には、科学上の概念と映画独自の規則の双方が手掛かりになる。

■劇中の量子用語を読み解く

トニー・スタークのせりふには「プランク尺度」「量子ゆらぎ」「ドイッチュ命題」が登場する。プランク長は約1.616×10⁻³⁵メートルで、重力を量子論とともに扱う研究で重要になる尺度だ。

量子ゆらぎは、量子場や量子状態に関わる現象を説明する言葉である。これらの用語が、スタークの時間移動研究に科学らしい輪郭を与えている。映画はさらに、そうした語を独自の装置や「量子領域」の設定へ組み込んでいる。

「ドイッチュ命題」は劇中の呼び名だ。物理学者デイヴィッド・ドイッチュは1991年、過去へ戻る経路を表す「閉じた時間的曲線」と量子力学を組み合わせた研究を発表した。名前の共通性は、劇中のせりふから実際の時間移動研究へ目を向けるきっかけになる。

スタークとブルース・バナーの時間移動を巡る会話には「固有値」も現れる。量子力学では、物理量に対応する演算子の固有値が測定結果の候補となる。実在の数学用語を使うことで、装置の設計に複雑な計算が伴うという場面が描かれている。

■量子領域と時間移動のイメージ

ピム粒子による縮小と量子領域の移動は、アベンジャーズが過去へ向かうための作品固有の仕組みだ。現実の量子トンネル効果には、粒子が古典力学では越えられないエネルギーの障壁を通り抜けるという特徴がある。走査型トンネル顕微鏡は、その効果を利用して物質の表面を原子レベルで調べる。

量子領域の描写には、日常の尺度とは異なる振る舞いを見せる微視的な世界のイメージを重ねられる。デコヒーレンスは、量子系と周囲の環境の相互作用を考える上で重要な概念だ。こうした研究は、映画がなぜ「量子」を時間移動の入口として選んだのかを考える補助線になる。

時間移動を巡る理論には、一般相対性理論の「閉じた時間的曲線」もある。クルト・ゲーデルは1949年、回転する宇宙のモデルで時間的な経路が閉じる解を示した。1988年にはマイケル・モリス、キップ・ソーン、ウルヴィ・ユルトセヴァーが、通過可能なワームホールと時間移動の関係を論じた。

ソンウォン・キムとソーンは1991年、閉じた時間的曲線の形成に量子真空の効果がどう関わるかを検討している。映画では、量子領域と時間軸の分岐を組み合わせ、登場人物が過去で行動しても元の時間軸の出来事は続く、という物語の規則を形作った。

■インフィニティ・ストーンに重ねる初期宇宙

アベンジャーズが過去へ向かう目的は、サノスが破壊した六つのインフィニティ・ストーンを集めることだ。マーベルの公式資料では、ストーンは宇宙の誕生に結び付く存在として描かれている。宇宙の初期に由来するものが現在まで残るという設定には、宇宙論の研究を重ねて見る余地がある。

現実の宇宙に残る初期の痕跡として、宇宙マイクロ波背景放射が観測されている。これはビッグバンから約38万年後の宇宙に由来する光で、現在の平均温度は約2.7ケルビンだ。空のほぼ全方向で観測でき、そのわずかな温度差から初期宇宙の様子を調べられる。

初期宇宙に由来するものとしては、背景ニュートリノのほか、原始重力波、磁気単極子、宇宙ひもなども研究の対象だ。このうち原始重力波、磁気単極子、宇宙ひもには確定的な検出例がない。宇宙誕生の痕跡を探す研究は、ストーンを巡る物語に壮大な時間の奥行きを感じさせる。

『エンドゲーム』でサノスはストーンを「原子に還元した」と語る。アベンジャーズが過去のストーンを探す展開は、強大な力を持つ道具の来歴をシリーズ各作へたどり直す構成にもなっている。

■新映像が再上映の呼び水に

前売り券の発売は2026年8月25日に始まった。興行情報アカウントのGlobal Box Officeは、発売初日の前売りが今世紀の再上映作品として最高水準となり、『タイタニック 3D』を上回ったと伝えた。初週末の世界興収8600万ドルというディズニーの発表も、再上映への関心の高さを示している。

監督のジョーとアンソニーのルッソ兄弟は、追加映像を『エンドゲーム』から『ドゥームズデイ』へ物語をつなぐ要素として説明している。前作を劇場で見直せることに加え、次作に関わる新しい場面を見られることが、今回の再上映の特色だ。

新映像への関心を考える一つの手掛かりに、カーネマンとトベルスキーが1979年のプロスペクト理論で論じた「損失回避」がある。シリーズを追う観客には、新しい場面を見逃したくないという動機が生じ得る。一方、関連作を重ねて見た経験が、新作への関心や過去作を再鑑賞する楽しさにつながる面もある。

日本の劇場情報では、通常版の上映時間は183分、INFINITY VISIONなど一部の上映は186分と案内されている。日本のマーベル公式サイトは10月2日、上映延長に加え、10月10日に全国11館のDolby Cinemaで応援上映を行い、限定ポスターを配布すると発表した。

米国・カナダの再上映興収を比べると、1997年の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』特別篇は約1億3800万ドル(約218億円、同)を記録した。『エンドゲーム:アンコール』の世界全体の再上映興収とは集計地域が異なるが、過去作を再び劇場に届ける取り組みを考える際の比較例になる。

■『ドゥームズデイ』へ続く物語

『エンドゲーム』でロキがテッセラクトを持って逃げた出来事は、別の時間軸の物語としてテレビシリーズ『ロキ』へ続く。同作には時間軸を管理する組織TVAと「神聖時間軸」が登場し、分岐した物語を誰が管理するのかというテーマが前面に出る。

こうした時間軸の広がりは、『エンドゲーム』後のMCUを読み解く手掛かりになる。ディズニーによると、『ドゥームズデイ』では異なる宇宙のヒーローたちが共演し、ロバート・ダウニー・Jr.がトニー・スタークとは別の役、ドクター・ドゥームを演じる。

日本での『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』公開日は2026年12月18日だ。記録を更新した『エンドゲーム』の再上映は、時間軸の分岐という作品の発想を振り返りながら、次の物語へ進む機会になっている。

元記事: Avengers: Endgame Reclaims All-Time Record: Quantum Physics Bohr Once Ridiculed Powers MCU

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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