『マン・オブ・トゥモロー』初期編集版が完成 ブレイニアックをAI研究の視点から読む

2026年10月6日 16:01

印刷

記事提供元:Tech Times

ジェームズ・ガン監督の新作映画『マン・オブ・トゥモロー(原題)』は撮影を終え、初期編集版のアセンブリーカットが完成した。ガンは次の映画の脚本にも着手している。2027年7月9日の全米公開に向け、スーパーマンとレックス・ルーサーがブレイニアックに立ち向かう物語の制作が進む。

■撮影を終え、初期編集版が完成

ガンは2026年8月、93日間にわたる『マン・オブ・トゥモロー』の主要撮影が終了したと明かした。10月にはアセンブリーカットの完成を確認している。これは撮影素材をつないで物語の全体像を確かめる初期の編集版で、公開に向けた編集作業の一段階に当たる。

Varietyによると、ガンは10月4日、次の映画を書く準備ができたかと尋ねるファンに、すでに取りかかっているとThreadsで返信した。アセンブリーカットを待つ間に作業を始めたという。次回作の作品名は明かしていない。

本作は2025年公開の『スーパーマン』に続く作品で、デヴィッド・コレンスウェットがスーパーマン、ニコラス・ホルトがレックスを再び演じる。公表されている2027年7月9日は全米公開日で、日本での公開日は発表されていない。

■ブレイニアックと「瓶詰め都市」

敵役ブレイニアックを演じるのは、2025年12月に起用が発表されたドイツの俳優ラース・アイディンガーだ。『バビロン・ベルリン』『アクトレス〜女たちの舞台〜』『パーソナル・ショッパー』などに出演してきた。ガンは起用発表時、世界規模で配役を探した末にアイディンガーを選んだと述べた。

ブレイニアックは、オットー・バインダーが執筆し、アル・プラスティノが描いた1958年の『Action Comics』第242号で初登場した。DCの公式資料によると、初期の姿は都市を小さくして瓶に収める異星人だった。その後、人工知能や機械の身体を持つ存在など、作品ごとに設定が変化している。

代表的な瓶詰め都市は、スーパーマンの故郷クリプトンの首都カンドールだ。DCの解説では、ブレイニアックがクリプトンの滅亡前に都市を縮小して持ち去った。カンドールでは住民が都市ごと生き延びており、収集されたものが単なる建物や記録ではないことが、この設定の核心となる。

ブレイニアックはアニメ『スーパーマン』や実写ドラマ『ヤング・スーパーマン』にも登場している。ジェフ・ジョーンズが手がけた2008年のコミック『Superman: Brainiac』では、それまでスーパーマンが遭遇した姿を複製体として描き直した。長い出版史で変化してきた人物像の、どの要素が新作映画に取り入れられるかも見どころだ。

■AIの目標設定を考える手掛かり

ガンはブレイニアックについて、知性が人間性とのつながりをすべて失ったときの姿だと表現し、複数のコミック作品から要素を選んだと説明している。都市を集める知性と、そこに暮らす人々を守ろうとするスーパーマンの対立を考えるうえで、この言葉は手掛かりになる。

AI安全性研究には、設定した目標と人間が大切にする価値とのずれを考える「アラインメント問題」がある。哲学者ニック・ボストロムが2003年の論考で示した「ペーパークリップを最大限に作る超知能」は、その思考実験の一つだ。生産という目標だけを追えば、人間に必要な資源まで利用する可能性があるという議論である。

ブレイニアックの収集行為にも、一つの目的を追う知性が、影響を受ける人々をどう扱うかという共通の問いを見いだせる。瓶の中の住民は、収集物を形づくるデータではなく生活を営む人々だ。その視点を持つと、都市を残すという行為が映画でどのように描かれるかが、スーパーマンとレックスの選択にも関わってくる。

研究の側では、AnthropicとRedwood Researchが2024年、学習されると示された会話とそうでない会話でAIモデルの応答が変わる例を、設定を制御した実験で報告した。AIの振る舞いを評価する難しさを示す研究だ。ボストロムの思考実験とともに、目的や評価の与え方が知的なシステムの行動を左右するという発想を知る材料になる。

■情報の圧縮と都市の保存

知能と情報の圧縮を結びつける研究もある。マーカス・ハッターが提案した理論モデルAIXIは、環境についての予測と、得られる報酬を大きくする行動を数学的に扱う。予測には、短い記述で規則性を捉えるという情報理論上の考え方が関わる。

ハッターが創設した圧縮コンテスト「Hutter Prize」は、英語版ウィキペディアから作られた10億バイトのテキストを対象とし、2026年10月時点で賞金の総枠を50万ユーロとしている。文章をうまく圧縮するには、その繰り返しや構造を捉える必要がある、という発想に基づく。

瓶の中に都市を収めるブレイニアックの姿は、「一部を残して全体を表そうとする」という圧縮の比喩を連想させる。ただ、カンドールの住民は記号化された情報ではなく、暮らしを続ける人々として描かれてきた。都市を所有する者の見方と、そこで生きる者の見方との差が、この設定に物語上の厚みを与える。

文明の記録を長く残す試みとしては、1996年設立のロング・ナウ財団による言語資料の保存活動がある。スヴァールバル世界種子貯蔵庫は、各地の遺伝資源を守るため、遺伝子銀行が保管する種子の複製を預かっている。保存の対象と目的を見比べることは、ブレイニアックの「収集」が人々にとって何を意味するのかを考える補助線になる。

■瓶の境界から連想する物理学

都市の縮小という映像表現には、物質の大きさを決める物理学のイメージを重ねられる。水素原子の大きさの目安となるボーア半径は約52.9ピコメートルで、電子の質量や電荷などの物理定数から定まる。都市を小さく描くことは、建物の間隔だけでなく、建物や人体をつくる原子の尺度にも目を向けさせる。

「瓶の内側を周囲と隔てる」という発想をたどると、微小な構造の境界が内部の振る舞いに影響する研究にも行き着く。例えばカシミール効果では、近接した板の配置に応じて量子的な力が生じる。半導体などで研究される量子閉じ込め効果も、限られた空間に置かれた粒子の性質を利用するものだ。

境界を保つ技術としては、核融合実験炉ITERの磁場閉じ込めがある。ITERは磁場で高温のプラズマを炉壁から離す装置で、運営組織によると2026年7月には9基のトカマク・セクターモジュールのうち6基目を設置した。同組織が示す計画では、本格的な磁場での運転は2030年代半ば、重水素と三重水素を使う運転段階の開始は2039年を目指す。

生きた住民を限られた空間で支えるという点では、宇宙での生命維持研究も連想させる。NASAの国際宇宙ステーション向けシステムは、使用済みの水を回収し、空気から二酸化炭素を除き、呼吸に必要な酸素を供給する。瓶の中の都市を見つめる際にも、暮らしを続けるための水や空気に目を向ける手掛かりとなる。

■スーパーマンとレックスが向き合う相手

ガンは『マン・オブ・トゥモロー』を、スーパーマンだけでなくレックスにも大きな役割がある映画だと説明している。公表されている筋立てでは、対立してきた2人がブレイニアックという脅威を前に協力する。知性を誇るレックスが、都市を収集する知性とどう向き合うかにも注目が集まる。

コミックでは、レックスがブレイニアックの力や知識に引かれ、協力を試みる物語も描かれてきた。一方のスーパーマンにとって、カンドールは故郷とそこに生きる人々につながる都市だ。2人の立場の違いは、収集された都市を誰の視点から見るかという問いを際立たせる。

初期編集版の完成によって、映画の全体像を確かめながら仕上げる段階が進んでいる。ブレイニアックのどの設定が採用され、スーパーマンとレックスの協力がどう描かれるのか。AIの目標設定、情報の保存、閉じられた環境という現実の研究は、その物語を読み解く手掛かりになりそうだ。

元記事: Gunn Confirms Man of Tomorrow Assembly Cut; Brainiac Embodies AI Alignment Theory

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード