BYD、2027年に全固体電池搭載車を実証へ 量産は2030年ごろを視野

2026年9月15日 17:52

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記事提供元:Tech Times

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BYDは2027年、全固体電池技術を搭載した最初の車両を用意する計画だ。現時点では一般消費者向けの発売ではなく、実車で技術を検証する段階とみられる。車種や電池仕様、航続距離、販売地域などは公表されておらず、同社は2030年ごろの本格量産を視野に開発を進めている。

■2027年に最初の搭載車を用意

BYDのStella Li副総裁は2026年9月13日に公開されたスペインの自動車メディアCarwow.esとのインタビューで、2027年に全固体電池技術を搭載した最初のモデルを用意する考えを明らかにした。

Li副総裁は、BYDがさまざまな電池技術を研究していると説明したうえで、全固体電池について「商業化と技術の両面で先行する位置にある」とする同社の認識を示した。その成果を示すため、2027年に最初の搭載モデルを用意すると述べた。

一方、車種名、電池容量、エネルギー密度、航続距離、充電性能、販売地域は明らかにしていない。一般向けの発売日や生産台数も示されておらず、現段階では量販車の製品発表ではなく、実車への搭載を通じた技術実証の予告と捉えるのが妥当だ。

BYDの電池部門を担うFinDreams BatteryのSun Huajun CTOは2025年、中国全固体電池イノベーション・開発サミットで、2027年ごろに全固体電池の実証利用と限定的な車載を始め、2030年以降に大規模な導入へ移行するロードマップを示していた。Li副総裁の発言は、この計画に沿って最初の搭載車を具体化する方針を経営幹部が示したものとなる。

■硫化物系電解質を軸に開発

BYDは2013年から全固体電池の基礎研究を進め、硫化物系固体電解質を主要な開発経路としている。2024年にはパイロットラインで容量60Ahの全固体セルを製造したと説明している。

全固体電池は、一般的なリチウムイオン電池で使われる液体電解質の代わりに、固体電解質を通じてリチウムイオンを移動させる。硫化物系固体電解質は室温でも高いイオン伝導性を得やすく、酸化物系材料に比べて柔らかいため、電極との密着性を高めやすいという特徴がある。

その一方で、硫化物系材料は水分との反応を管理する必要がある。材料の種類によっては水分との接触で有毒な硫化水素が発生するため、製造工程では低湿度の環境や不活性ガスを利用した管理が重要になる。材料の合成、搬送、電極形成、セル組み立てまでを安定した環境で行う設備が、量産時のコストと歩留まりを左右する。

電極の製造方法も量産化の焦点となる。溶媒を使う従来の湿式工程では、固体電解質や活物質との反応、乾燥工程での材料変化などを抑える必要がある。このため、溶媒の使用を減らすドライ電極プロセスを含め、複数の製造方法が検討されている。

PTFEを結着材として使う方式では、PTFEを微細な繊維状に変形させ、電池材料を自立した電極膜としてまとめる。溶媒と乾燥工程を削減できる可能性がある一方、自動車用電池に求められる大面積、高速、均一な製造へ拡大できるかが課題となる。

■実車搭載で問われる界面と圧力管理

全固体電池の実車試験では、セル単体のエネルギー密度だけでなく、電池パックとして長期間安定して動作するかが問われる。走行中の振動、気温の変化、急速充電、充放電の繰り返しなど、自動車特有の条件に対応する必要があるためだ。

特に重要なのが、電極と固体電解質が接する「固体・固体界面」の安定性である。充放電に伴って電極の体積が変化すると、材料同士の接触が弱まり、電気化学反応に必要なイオンの移動が妨げられることがある。抵抗の増加や容量の低下を抑えるには、材料設計に加え、セルへ適切な圧力を加え続ける構造が必要になる場合がある。

セルを車載パックへ組み込む際には、圧力を維持する機構、温度管理、衝突時の保護、電池制御システムなどが加わる。これらの部品はパックの重量や容積に影響するため、セル単体のエネルギー密度から車両の航続距離を直接算出することはできない。

BYDグループのLian Yubo chief scientistは2026年4月、全固体電池が「重要なブレークスルーの段階」に入ったと述べる一方、固体・固体界面の安定性とリチウムデンドライトの抑制を主要な課題として挙げた。

リチウムデンドライトは、充電時などに負極側から成長する針状の構造である。成長して電解質を貫通すると、内部短絡につながる可能性がある。材料の組成や界面、電流密度、圧力を総合的に管理し、長期間にわたって成長を抑えることが、全固体電池の耐久性と安全性を高めるうえで重要になる。

■400Wh/kgは開発目標、実車性能は未公表

BYDは、全固体セルについて400Wh/kgに近い重量エネルギー密度を開発目標として示してきた。これはセル段階の目標であり、2027年の搭載車が同じ数値を実現するとは限らない。

また、航続距離や充電時間について、Li副総裁は今回のインタビューで具体的な性能を示していない。車両重量、パック容量、電力制御、走行試験の条件などが公表されるまでは、BYDの全固体電池搭載車を既存車や競合車と数値で比較することは難しい。

2027年の実車で注目すべき点は、セル単体の最大性能だけではない。どのような容量のパックを搭載するのか、どの程度の圧力と温度管理が必要なのか、充放電を繰り返した後に性能を維持できるのか、量産工程で品質を安定させられるのかが、商業化への距離を判断する材料になる。

■政府支援を受けて開発を進める中国勢

中国では2024年1月、企業、大学、研究機関、地方政府などが参加する中国全固体電池産学研協同イノベーションプラットフォーム(CASIP)が設立された。技術ロードマップや産業政策の研究、共同開発、試験・検証、知的財産分野での連携を進める枠組みで、BYDやCATLを含む電池・自動車関連企業が参加している。

中国政府が2024年に計画した全固体電池の研究開発支援は60億元超と報じられた。約8億3000万ドルで、1ドル=154円で換算すると約1278億円となる。支援対象にはBYD、CATL、WeLion New Energy Technology、第一汽車、上海汽車、吉利汽車が含まれると報じられている。

全固体電池では、材料開発に加えて、低湿度環境、電極形成、セル組み立て、検査などの製造設備へ大規模な投資が必要になる。中国の支援策は、個別企業の研究だけでなく、材料や製造装置を含むサプライチェーン全体の形成を促す狙いがある。

■各社で異なる「2027年」の意味

全固体電池をめぐっては、複数の自動車メーカーと電池メーカーが2020年代後半を開発上の節目としている。ただし、「2027年」という同じ年を掲げていても、試験車の運用、電池の限定生産、材料設備の完成、搭載車の市場投入では、到達段階が異なる。

トヨタ自動車と出光興産は、硫化物系固体電解質を用いた全固体電池搭載車を2027年から2028年に市場導入する目標を掲げている。本格量産については、搭載車の市場導入と材料の生産体制を踏まえて段階的に進める方針である。

Samsung SDIは、全固体電池の量産を2027年後半に始める目標を示している。CATLも2027年を小規模生産の目標としてきた。各社の計画を比較する際には、年号だけでなく、何をどの規模で完成させる計画なのかを見る必要がある。

実車試験では、Mercedes-BenzがFactorial Energyのリチウム金属固体電池セルを搭載したEQS試験車を公道で運用している。2025年8月にはドイツのシュトゥットガルトからスウェーデンのマルメまで1205kmを無充電で走行し、到着時に137kmの航続可能距離を残したと同社が発表した。

この走行結果は、特定の試験車、経路、気象条件、ナビゲーションによる経路最適化の下で得られたものだ。市販車の公称航続距離を示す認証試験ではないが、固体電池を車載システムとして公道で検証した具体例となっている。

BYDが全固体電池で「先行する位置にある」とする発言は同社による自己評価であり、業界全体で統一された指標に基づく順位ではない。実車試験、生産規模、エネルギー密度、耐久性、歩留まり、コストなど、評価軸によって各社の進捗は異なる。

■現行のブレードバッテリーも進化

BYDは全固体電池と並行して、液体電解質を使う既存のリチウムイオン電池も改良している。2026年3月に発表した第2世代ブレードバッテリーについて、BYDは残量10%から70%まで5分、10%から97%まで9分で充電できるとしている。

同社発表では、第2世代ブレードバッテリーを搭載する騰勢Z9GTのCLTC航続距離は1036kmとなる。中国のCLTCは車両の認証に使われる試験方式の一つであり、異なる試験方式の航続距離とは単純に比較できない。

Lian chief scientistは、全固体電池を電池技術の唯一の進化経路とは位置付けず、液体電解質を使うリチウムイオン電池など複数の方式が、価格や性能、用途に応じて併存するとの考えを示している。

全固体電池の量産が始まっても、現在の電池が直ちに置き換わるわけではない。既存の製造設備とサプライチェーンを利用できる液体系電池は、コスト、量産実績、用途ごとの性能調整で優位性を持つ。全固体電池はまず、性能向上によって高い製造コストを吸収しやすい車種や、特定の用途から導入される可能性がある。

■EV購入者が現時点で判断できること

2027年または2028年にEVの購入を考えている人にとって、今回の発言だけを理由に購入を先送りする必要性は低い。BYDが明らかにしたのは最初の搭載車を用意する計画であり、一般販売の開始や価格、供給台数を約束したものではない。

2027年の搭載車がどのような形で運用されるかも未公表である。限定された顧客へ提供されるのか、社内試験車として使われるのか、特定市場で販売されるのかは、今後の発表を待つ必要がある。仰望や騰勢などの高価格帯ブランドへ先行搭載されるとの見方もあるが、BYDは対象車種を正式に明らかにしていない。

BYDの全固体電池計画を評価する次の材料は、2027年に示される車種、電池仕様、試験条件、生産規模となる。実車搭載は研究室のセルから車載システムへ進む重要な段階だが、本格的な普及を左右するのは、同じ性能と品質のセルを安定したコストで継続生産できるかどうかである。

元記事: BYD Claims Solid-State Battery Lead in 2027 Demo; Chief Scientist Cites Unscaled Dry Rooms

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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