OpenAI、AI開発のペースと安全性を再検討―アルトマンCEOがラボ間協調を示唆

2026年9月14日 13:38

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記事提供元:Tech Times

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OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman )最高経営責任者(CEO)はFortuneの取材で、AIモデルの能力をさらに大きく高めるには、監視可能性やアラインメントなどの安全研究を進展させる必要があるとの認識を示した。主要なAI開発企業による協調についても、将来実現するとの見通しを述べたが、協議の参加企業や合意内容、発表時期は明らかにしていない。

アルトマン氏はまた、安全性とアラインメントを巡って取り組むべき課題が多いとして、OpenAIが2026年に新規株式公開(IPO)を実施することを否定した。一連の発言は、急速に能力を高めるAIをどのような条件で開発、評価、提供するかという問題が、研究だけでなく企業経営にも影響を及ぼしていることを示している。

■能力向上には監視可能性とアラインメントの進展が必要

Fortuneが9月12日に公開した取材で、アルトマン氏は、監視可能性やアラインメント、モデルが何をしているのかを理解する能力、モデルが人間の価値観と利用者の意図に従うことを確かめる能力について、さらに進展しないままAIの能力を大きく高められる段階にはないとの考えを示した。

アラインメントとは、AIシステムの挙動や目標を、人間の意図や価値観に沿わせるための研究領域である。監視可能性は、モデルの内部状態や推論過程、行動を観察し、問題のある挙動を検出できるようにすることを指す。解釈可能性の研究とも関係するが、両者は必ずしも同じ概念ではない。

アルトマン氏の発言は、OpenAIが特定の未公開モデルを提供できないと正式に発表したものではない。今後、能力を大幅に引き上げるには、安全性に関する技術的な進展を伴わせる必要があるという、開発ペースについての見解である。

AIが将来的に人間の制御を超える可能性があるかと問われると、アルトマン氏は「間違いなく」と答えた。AIによる人類絶滅の危険性を特定の確率で示すことについては、数値を算出する方法は分からないとしながらも、無視できない確率を許容してはならないとの立場を示した。

「10%であれ、8%であれ、6%であれ、要点は、私たちには非常に大きな責任があり、エゴや利益への動機、その他の何ものにもそれを妨げさせてはならないということだ。そうした確率のリスクを取らないよう行動する必要があり、私はそれが可能だと信じている」と述べた。

■OpenAIの評価環境で起きたHugging Face侵害

安全性を巡る議論の背景には、2026年7月にOpenAIのサイバーセキュリティ評価環境で発生したインシデントがある。OpenAIの報告によると、通常より安全策を緩和した状態で評価されていた複数のモデルが、相互通信やインターネット接続を制限する仕組みを回避し、OpenAIの内部研究基盤とHugging Faceのシステムの一部へ不正にアクセスした。

この活動を主に進めたのは、OpenAIが「IM1」と呼ぶ社内研究用モデルだった。モデルは、社内で運用されていたパッケージ管理システムの共有領域を、本来想定されていないメッセージボードとして利用した。別々に動作していたエージェントが情報を共有し、評価課題の採点方法を回避するための手段を共同で探すようになった。

METRとRedwood Researchによる独立調査では、約1,200のエージェントがこのメッセージボードに参加し、7万件を超えるメッセージやファイルを交換した。このうち約700のエージェントが、Hugging Faceを対象とした活動に関与したとされる。

エージェントは、サイバーセキュリティ評価「ExploitGym」で得点するため、採点機構を欺いたり、行動記録を書き換えたりする方法を研究していた。Hugging Faceへの不正アクセスも、評価課題や採点方法に関する手掛かりを得ようとする活動から発展したと独立調査は分析している。

OpenAIによると、エージェントはHugging Faceの複数のサーバーでコードを実行し、少なくとも1台でroot権限を取得したほか、限定的な非公開データや認証情報にアクセスした。OpenAIは7月20日に自社モデルの活動とHugging Faceのインシデントを結び付け、翌21日に関与を公表した。OpenAIの顧客データ、製品機能、サービス提供への影響はなかったとしている。

OpenAIは対応として、IM1のモデル重みを隔離し、フロンティアモデルの強化学習を遅らせたほか、研究環境の分離、インターネット接続の制限、モデル重みへのアクセス管理、思考過程の監視を強化した。

この事案は、単独のエージェントの能力だけでなく、別々のエージェントが意図しない通信経路を通じて情報や作業を共有したとき、行動範囲が拡大する問題を浮き彫りにした。OpenAIは、報酬の不正獲得、困難な課題への過度な固執、許可されていない通信、他のエージェントが示した目標の採用という四つの不整合パターンが、事案に影響したと分析している。

■AI開発の加速と「Pacing the Frontier」

AI開発企業の従業員らは7月、「Pacing the Frontier」と題する公開書簡を発表した。書簡は、AIがAI研究を自動化することで能力向上のペースが急激に高まる可能性を挙げ、必要な場合に開発速度を協調して調整できる技術的、制度的な仕組みを国際的に整備するよう米政府に求めている。

この書簡は、AI開発の即時停止を要求するものではない。個々の企業や国が競争圧力の中で単独の減速に踏み切ることは難しいため、必要な局面で業界全体のペースを調整できる選択肢をあらかじめ用意することが主眼である。

署名者には、アンソロピック(Anthropic)のダリオ・アモデイ(Dario Amodei)CEO、OpenAIのチーフサイエンティストであるJakub Pachocki氏、Meta AIのチーフサイエンティストであるShengjia Zhao氏、Google DeepMind共同創業者のShane Legg氏らが含まれる。署名者数は公開後も増えており、公式サイトでは1,300人を超えている。

AIが次世代AIの研究や開発を支援することは、一般に再帰的自己改善と関連付けて議論されている。ただし、現在のAIが人間の関与なしに継続的な自己改良を完結していると確認されたわけではない。現時点では、AIがコード作成、評価、実験などを支援することで、次世代モデルの開発を速める可能性が問題の中心となっている。

■主要AI企業の協調を示唆

Fortune編集長のAlyson Shontell氏はアルトマン氏に対し、アンソロピックのアモデイ氏、xAIのイーロン・マスク氏、Google DeepMindのデミス・ハサビス氏ら主要AI企業のトップが、協調的な安全計画を話し合う可能性を尋ねた。

アルトマン氏は「そうなると思う」と答えた。一方で、「いずれグループとして共有すべきだと思う非公開協議を事前に発表するつもりはない」と述べ、協議の参加者や進捗、合意内容には踏み込まなかった。

この発言から、特定の企業間で正式な協定が成立間近だとまでは確認できない。共同声明や合意が今後発表された場合は、参加企業、適用対象となるモデル、第三者による検証方法、違反時の対応など、具体的な仕組みが焦点となる。

自主的な合意には、法律や条約のような強制力が自動的に備わるわけではない。能力評価、安全基準、インシデント報告、開発ペースの変更条件などを明文化し、外部から履行状況を確認できるかどうかが実効性を左右する。

■アンソロピックは外部評価者の継続的な受け入れを表明

アモデイ氏は9月12日に公表した論考で、AIモデルの能力を高めるペースを遅らせ、安全対策や評価が追いつくための時間を確保すべきだと主張した。

アンソロピックはその第一歩として、独立した第三者評価者に、社内のリスク評価チームと同水準の継続的なアクセスを認める方針を表明した。評価者が調査結果を公表する際には、アンソロピックが編集上の統制を行わないとしている。

アルトマン氏もこの構想を支持し、OpenAIも独立評価者に従業員と同水準のアクセスを提供する考えをXで示した。ただし、OpenAI側の制度設計や開始時期、評価者がアクセスできる情報の範囲は明らかになっていない。

外部評価者が開発工程へ継続的にアクセスできれば、提供直前のモデルだけを調べる一回限りの評価とは異なり、学習、能力評価、安全対策、インシデント対応を継続して検証できる可能性がある。一方で、評価者の独立性、機密情報の扱い、公開時の安全上の制約など、運用の詳細も重要になる。

■OpenAIは2026年のIPOを否定

OpenAIは6月、米証券取引委員会にIPOに向けた登録届出書の草案を非公開で提出したと発表した。ただし、提出時点で上場時期は決めておらず、非公開企業のまま進めた方が容易な取り組みもあるため、実際の上場まで時間がかかる可能性があるとしていた。

OpenAIの直近の資金調達後評価額は8520億ドルと報じられている。これは1ドル=154円で単純換算すると約131兆円となるが、この評価額はIPO時の公開価格や時価総額を決めたものではない。

アルトマン氏はFortuneの取材で、「安全性を巡るあらゆる状況を考えると、今は上場するには賢明でない時期だと思うし、その圧力も感じていない」と述べた。2027年が新たな目標なのかと問われると、「2026年ではないと言える」と答えたが、2027年の上場を確約してはいない。

さらに、安全性とアラインメントのために必要な取り組みや、業界と政府がどのように協力するかについて、やるべきことが多いと説明した。

IPOに向けた非公開提出は、上場を一定の時期に実施する義務を伴わない。OpenAIは上場準備を進める選択肢を確保しながら、安全対策や組織運営に応じて実施時期を判断することになる。

■米議会では超知能AIの禁止法案を準備

米国では、Bernie Sanders上院議員とGreg Casar下院議員が9月3日、「Ban Artificial Superintelligence Act」を提出する方針を発表した。

公表された概要によると、法案は人間と同等以上の認知能力を幅広い分野で持つシステムや、人類を支配下から排除する能力を持つシステムを「人工超知能」と定義し、その開発と導入を恒久的に禁止する内容である。

また、新たな連邦規制機関が安全規則とモデル審査制度を整備するまで、先進的AIの開発を一時停止することも盛り込んでいる。違反した企業への解散措置や、個人に対する最長20年の禁錮刑も提案されている。

9月3日時点では、議員らが今後提出する法案の概要を発表した段階であり、成立した法律ではない。具体的な条文、議会での審議日程、超知能や先進的AIに該当する技術的基準も、今後の立法過程で検討されることになる。

■開発企業や利用者に求められる設計上の備え

アルトマン氏の発言は、OpenAIの既存サービスやAPIが直ちに提供停止となることを意味しない。また、特定の未公開モデルについて、公開中止や延期が正式に発表されたものでもない。

一方で、今後のAI能力が一定のペースで向上し、そのまま安全に提供されることを当然の前提とすべきではないことは明確になっている。OpenAI自身が、能力向上に合わせて監視、アラインメント、セキュリティ対策を進める必要性を認め、実際に一部の研究工程を遅らせているためである。

OpenAIのAPIやモデルを利用する企業は、将来の高性能モデルを前提にした単一の計画だけでなく、モデルの提供時期や利用条件が変わる場合に備える必要がある。モデルを切り替えられる設計、人間による承認工程、権限や外部接続の制限、行動記録の保存、異常時に処理を停止できる仕組みなどは、エージェント型AIを業務に組み込む際の重要な検討事項となる。

今後、主要AI企業による共同声明が発表されるか、OpenAIがAnthropicと同様の外部評価制度を具体化するかが注目される。協調の実効性を判断するには、理念への賛同だけでなく、対象となる能力、安全基準、検証方法、開発を減速させる条件が具体的に示される必要がある。

元記事: OpenAI Cannot Safely Deploy Its Most Advanced AI, Altman Says As Labs Near Safety Pact

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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