テスラ死亡事故、左折時に運転支援が作動―機能名と事故原因はなお不明

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米イリノイ州バタビアで2026年3月に起きたTesla Model Yの死亡事故について、Teslaが米運輸省道路交通安全局(NHTSA)へ提出した報告から、衝突前に運転支援システムが作動していたことが明らかになった。
一方、公開された報告では具体的な機能名やソフトウェアのバージョン、事故に至る経緯を説明する記述が非開示となっている。FSD(Supervised)が使われていた可能性は指摘されているものの、左折操作をシステムと運転者のどちらが開始したのか、運転支援が事故にどのように関係したのかは確認されていない。
■バタビアの交差点で起きた死亡事故
2026年3月25日午後4時19分ごろ、バタビアのランドール・ロードとマッキー・ストリートの交差点で、南へ向かっていた2026年型Tesla Model Yが左折しようとして、対向車線を直進していたDodgeのピックアップトラックと衝突した。ピックアップ側に優先通行権があり、NissanのSUVも事故に巻き込まれた。
Model Yの前席同乗者だった37歳のマギー・エスピノーサさんが死亡し、Teslaの運転者を含む3人が負傷した。元幼稚園教諭だったエスピノーサさんには、2歳の双子を含む5人の子どもがいた。家族を支援するGoFundMeでは10万ドル超(約1560万円、1ドル=156円換算)が集まった。
バタビア警察は事故の捜査を進め、ケーン郡州検事局が起訴の要否を検討している。Electrekが9月1日に報じた時点で、起訴は確認されていなかった。
警察が当初公表した事故情報には、AutopilotやFSDなどの運転支援機能への言及はなかった。その後、ElectrekがNHTSAの事故報告データと公表済みの事故情報を照合し、Teslaの運転支援システムが衝突前に作動していたとする報告を特定した。
■NHTSA報告が示した運転支援の作動
NHTSAの常設一般命令「Standing General Order 2021-01」は、レベル2の先進運転支援システムが衝突前30秒以内に使用され、死亡、エアバッグの展開、病院への搬送など一定の結果を伴った事故について、対象企業に報告を求めている。
Teslaが提出した報告では、運転支援システムの作動状況が「Verified Engaged」とされ、車両は交差点で「左折中」、衝突前の速度は時速24マイルと記録されていた。Teslaがイベントデータレコーダー、テレマティクスデータ、映像を保有していることも報告に記載されている。
ただし、「Verified Engaged」は報告対象となる時間内に運転支援が作動していたことを示す項目であり、そのシステムが事故を引き起こしたとの原因認定ではない。
公開データでは、具体的な自動化機能のバージョン、事故の経緯を記す記述欄、道路が当該機能の運行設計領域に含まれていたかを示す項目が、機密の事業情報を含む可能性があるとして非開示になっている。このため、公開情報だけでは使用されていた機能や、運転者とシステムの操作状況を確定できない。
■左折機能からFSDの可能性を指摘
Teslaの基本的なAutopilotは、トラフィックアウェア・クルーズコントロールとオートステアを組み合わせ、車速や前方車両との間隔、車線内での走行を支援する機能である。
これに対してFSD(Supervised)は、運転者による常時監視を前提に、交差点の通過や左右への旋回、市街地走行などに対応する。Teslaの取扱説明書も、FSD(Supervised)が交差点を処理し、左右に曲がりながら目的地まで走行を試みる機能だと説明している。
この機能上の違いから、Electrekは、交差点で左折中だったことを根拠にFSD(Supervised)が使われていた可能性が高いとみている。ただし、NHTSAの公開データでは機能名とソフトウェアバージョンが非開示であるため、FSDだったと断定することはできない。
また、報告には「左折中」と記録されているが、システムが左折を選択したのか、運転者が操作を加えたのかは示されていない。運転者による介入やアクセル、ブレーキ、ステアリングの入力を含め、事故直前の操作を明らかにするには、映像や車両データの詳細な解析が必要となる。
■Teslaの事故報告で続く大幅な非開示
Electrekによると、TeslaがStanding General Orderに基づいて提出した運転支援関連の事故報告では、事故記述欄、ソフトウェアバージョン、運行設計領域に関する項目の多くが非開示となっている。
同メディアは、Teslaの事故報告のうち99.9%で事故記述欄が黒塗りにされていると分析している。Teslaは業界全体のレベル2運転支援に関する報告の約85%を占める一方、General Motors、Ford、Honda、Toyotaなどは事故記述をほとんど非開示にしていないという。
もっとも、NHTSAは公開する事故データについて、不完全または未確認の情報を含む可能性があり、同じ事故について複数の報告が提出される場合もあると注意を促している。したがって、報告件数のみから各社のシステムの安全性を比較することはできない。
■運転者による操作が判明したテキサス州の事故
2026年6月19日には、テキサス州ケイティーでTesla Model 3が住宅に突っ込み、建物内にいた76歳のマーサ・アビラさんが死亡する事故が起きた。
運転者のマイケル・バトラー被告は捜査当局に対し、事故前にFSDを使用していたと説明した。一方、捜査資料に引用された車両データなどによると、事故直前にアクセルが最大まで踏み込まれ、運転支援による走行が上書きされたとされる。車両は住宅街で時速73マイルに達したとされ、バトラー被告は7月に過失致死罪で起訴された。
この事故では、Tesla幹部がソーシャルメディア上で運転者によるアクセル操作に言及したほか、捜査当局も車両データや映像を入手していた。これに対してバタビアの事故では、事故直前の操作を示す詳細な情報は公表されていない。
ただし、公開情報からは、Teslaがバタビア警察やケーン郡州検事局から正式なデータ提出要請を受けたか、司法手続きに対して資料の提出を拒んだかは確認できない。現時点で明らかなのは、NHTSAが公開した事故報告の重要項目が非開示となっていることだ。
■NHTSAが進める二つのFSD調査
NHTSAは2026年3月18日、FSDの視界低下検知機能に関する調査を技術分析「EA26002」へ移行した。対象はFSDを搭載した推定約320万台のTesla車である。
この調査は、太陽光のまぶしさや霧、空中の粉じんなどで道路の視認性が低下した際に、FSDが機能低下を検知し、運転者へ適切な時間内に警告できるかを検証するものだ。NHTSAは、こうした視界低下に関連する9件の事故を調査対象としている。
バタビアの事故については、公開情報から視界低下が関係していたとは確認されておらず、EA26002が対象とする事故として公表されているわけでもない。この事故を同調査で扱う視界低下の問題と直接結び付けることはできない。
NHTSAは7月2日、EA26002に関連してTeslaへ24項目の情報提出を要求した。この中では「Radar Saves Us」と題されたTeslaの社内文書にも言及し、カメラを中心とするシステムの設計や、視界低下時の検知機能に関する情報を求めている。
これとは別にNHTSAは、FSD作動中の交通違反に相当する挙動を調べる予備評価「PE25012」も進めている。推定約288万台を対象とし、赤信号での交差点進入、対向車線への進入、不適切な車線からの旋回などに関する苦情、事故報告、報道事例を検証している。
■事故データの透明性が焦点
バタビアの事故で確認されているのは、Model Yが左折中に対向車と衝突し、同乗者が死亡したことと、衝突前30秒以内に運転支援システムの作動が確認されたことである。
一方、使用されていた機能の名称、事故直前の運転者による操作、システムが出した制御指示、事故原因は特定されていない。FSDを含むレベル2の運転支援機能では運転者が運転の責任を負い、常時監視して必要に応じて介入することが前提となるため、責任関係を判断するにはシステムと運転者双方の挙動を検証する必要がある。
NHTSAへの報告によって運転支援の作動は判明したが、事故を具体的に説明する項目は公開されていない。死亡事故の原因究明と運転支援システムの安全性評価を進めるうえで、メーカーが保有する映像、テレマティクス、ソフトウェア状態、運転者の操作記録をどこまで検証可能にするかが重要な論点となっている。
元記事: Tesla Withholds FSD Crash Data From Prosecutors in Fatal Illinois Turn Case
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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