G20財務相会議、AI投資とリスク対応を支持―中国は議長声明の4項目に反対

2026年9月3日 22:28

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記事提供元:Tech Times

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米ノースカロライナ州アッシュビルで8月31日から9月1日まで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議は、AI、コンピューティング、デジタルインフラへの投資を生産性向上の手段として歓迎する議長声明を公表した。声明はAIに伴う金融分野などのリスクへの対応やサイバーレジリエンスの強化にも言及したが、先端的なフロンティアAIモデルの公開・展開を管理する国際的な枠組みまでは示していない。

議長声明には中国を除く出席メンバーが合意した。中国はAIに関する部分ではなく、エネルギー貿易の混乱、世界的な経済不均衡、国際通貨基金(IMF)の監視、政府債務再編に関する4つの段落に反対した。

■G20がAI投資とリスク対応を併記

議長声明は、AI、コンピューティング、デジタルインフラへの投資が生産性を高め、幅広い導入を促す可能性を歓迎した。同時に、金融分野を含む各分野固有のリスクに対処し、AIを活用したイノベーションによってサイバーレジリエンスを強化する重要性も盛り込んだ。

声明はさらに、AIを世界経済へ大きな影響を及ぼし得る汎用技術と位置付けた。AIの責任ある開発、導入、普及に取り組む国・地域が、今後の世界経済の成長をけん引する可能性があるとの認識を示している。

金融分野については、金融安定理事会(FSB)が策定を進める「AIの責任ある導入のための健全な慣行」の最終化に期待するとした。FSBが6月に公表した協議文書は、金融機関における組織全体のAIガバナンス、開発・導入段階のリスク管理、サイバーリスクや第三者リスクへの対応など、12項目の実務的な慣行を提示している。

この文書は、金融機関がAIを採用する際に参照できる選択肢を示すもので、国際的な規制基準や一律の義務を設けるものではない。FSBは寄せられた意見を踏まえ、今後数カ月以内に最終報告書を公表する見通しとしている。

■フロンティアAIのサイバーリスクに警戒

会議に先立ち、FSBのアンドリュー・ベイリー議長はG20財務相・中央銀行総裁に宛てた書簡で、フロンティアAIがサイバーリスクの速度、規模、経済性を大きく変える可能性を指摘した。金融システムが共通の技術基盤や少数の第三者サービス事業者に依存しているため、一つの障害が複数の金融機関や国・地域へ波及することを懸念している。

書簡は、金融機関や市場インフラ、技術事業者に対し、脆弱性管理や障害対応、復旧能力を強化し、複数の組織や共通サービスが同時に影響を受ける深刻な事態に備えるよう求めた。重要なシステムとデータを基礎的な環境から復旧できる能力や、主要な第三者技術事業者のレジリエンスも重視している。

ベイリー議長はまた、高度なフロンティアAIモデルの開発、公開、展開を管理する手順を、多くの国・地域がまだ整備していないと指摘した。安全で責任あるモデル公開・展開を国際的に支える取り組みを優先課題に位置付けている。

一方、FSBが6月に示したAI導入慣行は、金融機関による幅広いAI活用を対象とする文書で、近年表面化したフロンティアAI固有のリスクに対応するために策定されたものではない。サイバー管理など一部の項目はフロンティアAIへの備えにも役立つが、モデル提供企業を含む公開・展開プロセス全体の国際的な枠組みは、別途検討が必要になる。

このため、G20声明はAI投資の促進と金融機関におけるリスク管理の方向性を示したものの、フロンティアAIモデルの公開条件や政府間の対応手順について共通のルールを定めたものではない。金融機関にとっては、既存のサイバーセキュリティ、第三者リスク管理、事業継続、モデル管理を、AIの特性に合わせて更新していくことが当面の焦点となる。

■中国は経済不均衡など4項目に反対

議長声明は、出席したG20メンバーのうち中国を除く全メンバーが合意した。同声明の脚注によると、中国が反対したのは第4、10、11、13段落である。

対象となったのは、エネルギー貿易の混乱とホルムズ海峡などでの安全な航行、貿易不均衡を拡大させる非市場的な政策や慣行、IMFによるマクロ経済不均衡の監視、政府債務再編の共通枠組みに関する記述だった。

第10段落は、過度で持続的な対外黒字を抱える国に対し、国内消費を抑制し、成長を輸出へ過度に依存させる原因となる歪みを取り除くよう求めている。文面では特定の国を挙げていない。

スコット・ベッセント米財務長官は会議後の記者会見で、中国を「世界最大かつ持続不可能な経常黒字を持つ国」と表現し、議長声明への唯一の反対メンバーだったと名指しした。また、中国以外のメンバーが合意したことは、世界的な不均衡に対する問題意識の広がりを示すとの認識を示した。

中国が反対した4項目にAI関連の段落は含まれていない。このため、今回の対立はAI投資やAIリスク対応を巡るものではなく、主として貿易・経常収支の不均衡、エネルギー問題、政府債務再編を巡る見解の違いとして捉える必要がある。

■デジタル資産、決済、不正対策も議題に

議長声明はデジタル金融とデジタル資産について、金融の安定と経済成長を両立させ、健全なイノベーションへの明確な道筋を設ける規制・監督体制を進める方針を示した。

クロスボーダー決済では、G20の改善ロードマップへの支持を改めて確認した。大口決済システムの稼働時間拡大、金融メッセージの国際標準であるISO 20022の調和されたデータモデルの利用、法制度やデータセキュリティに配慮した国境を越える金融関連データの流通を促している。

金融活動作業部会(FATF)に関しては、詐欺集団によるAIの悪用を進化する脅威として挙げた。資金洗浄、テロ資金供与、大量破壊兵器の拡散金融へのリスクベースの監督に加え、官民の情報共有を通じて不正資金を迅速に発見・遮断する取り組みを重視している。

■ロシアの対面参加に欧州から懸念

会議にはロシアのアントン・シルアノフ財務相が対面で出席した。ロシアによるウクライナ侵攻後、同氏がG20財務相会議へ対面参加するのは初めてだった。

欧州側からは、ロシアとの関係正常化を印象付けかねないとの懸念が示された。ドイツのラース・クリングバイル財務相は、シルアノフ氏を通常の参加者として受け入れるように見えることを問題視した。恒例の集合写真は、欧州側の反対を受けてシルアノフ氏を含めずに撮影された。

ベッセント長官とシルアノフ氏は会議に合わせて会談した。米側はトランプ政権のウクライナ和平案を中心に協議したとしており、会談に詳しい関係者によれば、ベッセント長官は戦争が終結するまでロシアへの経済的な緩和や他分野の合意はできないとの立場を伝えた。

ロシア財務省は、両国の金融協力やG20での連携について協議したと説明した。米国とロシアで会談の強調点には違いがあるものの、米側は経済関係の進展をウクライナ戦争の終結と結び付けている。

■金利上昇がAI投資の資金調達環境を圧迫

会議と同時期には、原油価格と世界の国債利回りが上昇し、テクノロジー株が売られた。9月1日の米国市場ではS&P 500種株価指数が0.71%、ナスダック総合指数が1.03%下落した。米国の10年国債利回りは約4.79%となり、日本の10年国債利回りも一時3%に達した。

大規模なデータセンターや計算基盤の建設には長期的な資本投入が必要になる。このため国債利回りの上昇は、企業の借入金利や投資案件の採算性を通じ、AIインフラ計画の資金調達条件を厳しくする要因となる。

FSBも会議前の書簡で、AI関連資産の高い評価、株式市場でのレバレッジ拡大、市場集中、AI企業とハイパースケーラー間の相互投資が組み合わさり、将来の市場調整を増幅する可能性に注意を促した。G20がAIを成長機会として位置付ける一方、その投資を支える金融環境と市場の安定性も政策上の課題になっている。

■次の焦点はFSB報告書と10月の会合

G20財務トラックでは、10月15日にタイ・バンコクで財務相・中央銀行総裁会議が予定されている。G20首脳会議は12月14日から15日まで、米フロリダ州マイアミで開催される。

FSBはAIの責任ある導入に関する最終報告書を今後数カ月以内に公表する予定だ。金融機関向けの実務的な慣行がどのように整理されるかに加え、フロンティアAIのモデル公開・展開を巡る問題が、既存の金融監督やサイバーセキュリティの枠組みの中でどこまで扱われるかが焦点となる。

アッシュビル会合は、AI投資を成長戦略として支持すると同時に、金融機関のリスク管理とサイバーレジリエンスを重視する方向を示した。もっとも、フロンティアAIが国境を越えてもたらすサイバーリスクへの対応は、金融機関向けの任意の導入慣行だけでは完結しない。AIの利用組織、モデル提供企業、技術基盤事業者、各国当局を結ぶ国際的な協力体制が、次の政策課題となる。

元記事: G20 Endorsed AI Investment, Left Frontier Governance to Voluntary Paper as China Stood Alone

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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