米長期金利が19年ぶり高水準、FRB議事要旨が示した利上げ論と財政懸念
米国の30年国債利回りが8月18日に一時5.33%を超え、約19年ぶりの高水準に達した。背景には根強いインフレや中東情勢に伴う原油高への警戒に加え、米政府の財政赤字と国債発行の増加をめぐる懸念がある。
米連邦準備制度理事会(FRB)が8月19日に公表した7月28~29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、政策金利を据え置いた当局者の一部も、インフレが鈍化しなければ追加の金融引き締めが必要になると考えていたことが明らかになった。短期的な政策金利の見通しだけでなく、財政、インフレ、国債需給に対する長期的な不確実性が、米国債市場を左右している。
■30年債利回りが約19年ぶりの高水準
米30年国債利回りは8月18日に一時5.33%を超え、その後は5.28%前後まで低下した。10年国債利回りも4.7%近辺の高い水準で推移している。
長期国債の利回りは、将来の短期金利に対する市場予想だけで決まるわけではない。満期まで長期間にわたって資金を固定することへの追加的な補償である「タームプレミアム」も含まれる。将来のインフレや国債供給、財政運営をめぐる不確実性が高まれば、投資家が求める上乗せ利回りも大きくなり得る。
アメリプライズ・ファイナンシャルのチーフ市場ストラテジスト、アンソニー・サグリンベネ氏は、長期ゾーンの米国債について、投資家がインフレや金融政策、経済成長だけでなく、長期的な財政持続可能性を重視する傾向を強めているとの見方を示した。
もっとも、最近の長期金利上昇を財政懸念だけで説明することはできない。FRBの7月会合時点では、国債利回りの上昇は主に実質金利の上昇によるもので、市場では将来の政策金利引き上げも織り込まれていた。中東情勢と原油価格、根強い物価上昇、国債の大量発行といった複数の要因が重なっている。
■FOMC議事要旨で広がりが判明した利上げ論
FOMCは7月29日、政策金利の誘導目標を3.50~3.75%に据え置くことを9対3で決定した。クリーブランド連銀のベス・ハマック総裁、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁、ダラス連銀のロリー・ローガン総裁は、0.25ポイントの利上げを主張して反対票を投じた。
8月19日に公表された議事要旨によると、利上げを支持する考えは3人の反対票に限られていなかった。一部の参加者は、7月会合で利上げしておけば、後になって一段と急激で経済的負担の大きい引き締めを迫られるリスクを抑えられるとの見方を示した。また、インフレが低下しなければ金融引き締めが必要になる可能性が高いとの認識も示された。
一方、7月会合後には非農業部門雇用者数の減少や小売売上高の低下など、景気の減速を示す指標も発表された。議事要旨は7月会合時点の議論を記録したものであり、9月15~16日の次回会合で利上げが決まったことを意味しない。今後の判断では、雇用、物価、エネルギー価格などの新しいデータが改めて評価される。
FRBは将来の政策経路をあらかじめ明示するフォワードガイダンスを抑える姿勢を示している。このため、市場は個々の経済指標や当局者の発言に、これまで以上に敏感に反応しやすくなっている。
■膨らむ米政府の利払い負担
米議会予算局(CBO)の推計では、2026会計年度の最初の9か月間に当たる2025年10月から2026年6月までの連邦政府の純利払い費は8570億ドルに達した。前年同期より980億ドル、率にして13%増えた。債務残高の増加と長期金利の上昇が主因で、短期金利の低下が増加幅を一部抑えた。
同期間の財政赤字は約1兆4000億ドルで、2026会計年度の最初の10か月では約1兆8000億ドルに拡大した。古い低金利の国債が満期を迎えるたびに、財務省は新たな市場金利で資金を借り換える必要があるため、高金利が続けば利払い負担は段階的に増えていく。
8月13日に実施された250億ドル規模の30年債入札では、最高落札利回りが5.216%となり、30年債入札としては2001年以来の高水準となった。応札倍率は2.39倍で需要そのものは確保されたが、投資家が長期国債の保有に高い利回りを求めている状況を映している。
CBOは2026年度の財政赤字を1兆9000億ドルと見込んでいる。財政赤字の拡大や国債発行量の増加は、それだけで利回り上昇を決定するものではないが、インフレと将来の政策金利をめぐる不確実性と重なることで、タームプレミアムを押し上げる要因となる。
■日本を含む世界の債券市場にも金利上昇
長期金利の上昇は米国に限らない。日本の10年国債利回りは一時2.945%と、1996年以来の高水準に達した。ドイツ、フランス、英国、カナダなどでも長期国債利回りが上昇した。
米国債は世界的な資産価格や借入金利の基準の一つであるため、その利回り上昇は各国の債券市場にも影響を与える。一方、各国の金利には国内のインフレ、財政、中央銀行の政策といった固有の要因も反映されるため、世界的な上昇を米国要因だけに帰することはできない。
日本は米国債の主要な外国保有国である。日本国債の利回りが上昇すれば、為替変動リスクを負って米国債を保有することと、円建て国債を保有することの相対的な魅力も変化する。この資産配分の変化は、米長期債の需給を考えるうえで市場が注視する要素の一つだ。
日米の通貨当局は7月31日、急激で無秩序な円相場の変動に対応するため、円買いの協調介入を実施した。介入は為替市場の安定を目的とした措置であり、米国債利回りの抑制を直接の目的としたものとは位置付けられていない。
■住宅ローン金利はFRBの政策金利だけでは決まらない
長期金利の上昇は、住宅ローンなど家計の借入コストにも波及する。米連邦住宅貸付抵当公社の週次調査では、30年固定住宅ローンの平均金利は8月13日時点で6.67%だった。日々の市場動向を反映する別の集計では、8月18日に6.75%まで上昇した。
金利6.75%で40万ドル(約6360万円、1ドル=159円換算)を30年間借りた場合、税金や保険料を除く毎月の元利返済額は約2595ドルとなる。同じ金額を金利3%で借りた場合の約1686ドルに比べ、月約909ドル多い計算だ。
変動金利型の借り入れやクレジットカードの金利は、FRBの政策金利の影響を比較的直接受ける。これに対し、米国の30年固定住宅ローン金利は10年国債利回りを重要な基準とし、信用リスクや期限前返済リスクなどに対する上乗せ金利も加わる。
そのため、将来FRBが政策金利を引き下げても、長期のインフレ期待やタームプレミアム、国債の需給に対する懸念が残れば、住宅ローン金利が同じ幅で低下するとは限らない。短期金利が下がる一方で長期金利が高止まりし、イールドカーブが急になる展開もあり得る。
■長期金利の方向を左右する三つの要素
今後の米長期金利を考えるうえでは、金融政策、インフレ、財政と国債需給を分けて見る必要がある。
金融政策では、9月15~16日のFOMC会合に向け、FRB当局者が追加利上げの条件をどのように示すかが焦点となる。議事要旨からは利上げを検討した参加者が反対票を投じた3人より多かったことが判明したが、会合後の景気指標は成長と雇用の減速も示している。
インフレ面では、中東情勢と原油価格、関税の価格転嫁、需要の強さが注目される。物価上昇率がFRBの目標である2%に向けて十分に低下しなければ、政策金利の高止まりや追加引き締めへの警戒が長期金利にも及ぶ可能性がある。
財政面では、連邦政府の赤字、利払い費、国債の発行規模に対し、国内外の投資家がどの程度の利回りで資金を提供するかが焦点になる。高い利回りは国債への需要を呼び込む一方、新規発行と借り換えに伴う政府の資金調達費用も押し上げる。
米30年国債利回りは、FRBの政策見通しだけを示す指標ではない。将来のインフレ、財政運営、国債供給を含む長期的な不確実性に対し、投資家がどれほどの補償を求めているかを映す指標として、その意味合いを強めている。
元記事: Bond Market Breaks From Fed: Fiscal Debt Now Drives Long Treasury Yields
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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