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ALMA望遠鏡、赤ちゃん星の「らせん状磁場」を初撮影―30年来のジェット形成理論を裏付け

NGC 1333 IRAS 4Aにある若い星から噴き出すガスを取り巻く、ねじれた漏斗状の磁場を描いた想像図。ALMAの新たな観測データは、この環状構造をかつてないほど詳細に捉え、若い星から強力なジェットが放出され、その形が整えられる仕組みに関する数十年来の理論を裏付けた。(Public.nrao.edu)[写真拡大]
国際研究チームはALMAを使い、生まれたばかりの星から噴き出すジェットを取り巻くトロイダル(環状)磁場を、初めて高解像度で捉えた。この観測により、星の形成時に余分な角運動量を外へ運び出し、星が自転によってばらばらになるのを防ぐという、1980年代から提唱されてきた理論が裏付けられた。今後は、このメカニズムがほかの原始星でも一般的に見られるかを確かめるため、追加観測が行われる見通しだ。
■数十年来の理論を裏付けたALMAの観測
30年にわたり、天体物理学者は、生まれたばかりの星から噴き出すジェットの駆動源を理論上は理解していた。回転する降着円盤が磁場をトロイダル(ドーナツ状)の構造に巻き上げ、ガスを絞り込みながら星の自転軸に沿って外側へ放出する。それと同時に、そのままでは形成中の星を自転によってばらばらにしてしまう余分な角運動量を外へ運び出すというものだ。このメカニズムは数学的に洗練され、物理的にも不可欠である。しかしこれまで、どの望遠鏡も実際に働く様子を直接的に捉えたことはなかった。
米国国立科学財団(NSF)の国立電波天文台(NRAO)で元ジャンスキー・フェローを務めたTao-Chung Ching氏が率いる国際研究チームが、その状況を変えた。チームはチリのアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を使い、ペルセウス座分子雲内にある若い連星系「NGC 1333 IRAS 4A」のアウトフローをきつく取り巻く磁場を、初めて高解像度で捉えた。同天体は地球から960光年(約294パーセク)の距離にある。2026年8月11日付でNature Communications誌に発表されたこの研究成果は、1980年代から1990年代にかけて教科書に記載されながら、説得力はあるものの未証明だった理論的予測を裏付けるものだ。
NRAOのプレスリリースで、Ching氏は「今回のALMA観測は、目に見えない磁場の漏斗を初めて捉えた」と述べた。「私たちの太陽のような星がどのように生まれ、強力な宇宙ジェットを放つのかを説明する数十年来の理論が証明されたことは、非常に刺激的だ」
■NGC 1333 IRAS 4Aが天文学者にもたらしてきた知見
ALMAの観測対象となったNGC 1333 IRAS 4Aは、新たに発見された星系ではない。スペインの宇宙科学研究所(ICE-CSIC)およびカタルーニャ宇宙研究所(IEEC)に所属する共著者Josep Miquel Girart氏の言葉を借りれば、恒星磁場研究における「教科書的な事例」であり、Girart氏自身もその位置付けを確立するうえで中心的な役割を果たした。
2006年、Girart氏らはScience誌に画期的な論文を発表し、IRAS 4Aの周囲にある高密度の分子エンベロープを貫く磁場が、特徴的な砂時計形を形成していることを示した。これは、磁場に制御された重力崩壊の理論モデルが予測していた幾何学形状と一致する。この2006年の論文により、IRAS 4Aは、分子雲コアのスケールで磁場に支配された星形成が確認された初の教科書的事例として位置付けられた。
その10年後の2016年、Ching氏のチームはサブミリ波干渉計(SMA)を使い、この星系から流出するガスの磁場構造を調査した。一酸化炭素の放射から偏波信号を検出し、ジェット内にらせん状の磁場構造が存在する可能性を示した。これは、原始星付近の砂時計形をしたポロイダル(軸方向)磁場から、より遠方のトロイダル(円周方向)磁場への移行を示唆するものだった。しかし、2016年のSMAによる偏波研究だけでは、決定的な証拠を示すには不十分だった。
NRAOのプレスリリースでGirart氏は、「IRAS 4Aが教科書的な事例であることは分かっていた。20年前の2006年にScience誌で発表した研究で、この領域が理論的に予想された磁気駆動型の崩壊に従っていることを発見したからだ」と述べた。今回の新たなALMAデータは、分子雲スケールの崩壊からジェットそのものに至るまで、IRAS 4Aの磁場の全体像を完成させるものだ。
■ALMAはいかにして目に見えないものを可視化したか
違いを生み出したのは、過去の観測に使われた機器より約30倍高いALMAの分解能だった。磁場を追跡するため、チームはアウトフローから放射される一酸化炭素(CO)ガスの微弱な偏波を測定した。磁化された環境にあるガス分子は、局所的な磁場の方向を反映した向きに偏った電磁波を放射する。これはGoldreich-Kylafis効果に関連する現象であり、偏波角をマッピングすることで磁場の方向を調べられる。
測定は、原始星からわずか数百天文単位という内側の領域にまで達した。これは私たちの太陽系の外縁部に匹敵するスケールであり、磁場の形状を判定できるほど鮮明に、その幾何学構造を分解した。2026年のALMAによる偏波データが示した結果は明確だった。磁場はガスの流れに対して垂直方向に延び、ジェット軸を囲む閉じたリングを形成し、流出ガスと同じ向きに回転していた。この幾何学構造はトロイダル磁場を特徴付けるものであり、磁気遠心力理論が数十年前から予測してきた構造と一致する。
NRAOのプレスリリースでChing氏は、「この研究は、原始星から数百天文単位のスケールにあるミリガウス級のトロイダル磁場を初めて観測したものであり、これまでで最も高い解像度を実現している」と述べた。
数ミリガウス、すなわち数千分の一ガウスという値は、家庭用磁石の約100ガウスと比べると小さく聞こえるかもしれない。しかし、星間空間のスケールでは非常に強い。チームは、この磁場が、ジェットを締め付けて細く平行に整える磁気的な「フープ応力」を生み出すと同時に、ガスを星系の外側へ加速させるのに十分な強さであることを確認した。
■磁場のコルクスクリューが星を形成するメカニズム
トロイダル磁場の確認が意味する物理を理解することは重要だ。それにより、「形成中の星は、なぜ自転によってばらばらにならないのか」という、単純に聞こえながら非常に難しかった疑問を説明できるからである。
星間ガスの雲が重力で崩壊して星を形成する際には、角運動量が保存される。これは、フィギュアスケーターが腕を引き寄せると回転が速くなるのと同じ原理だ。雲が数千光年の規模から恒星のスケールへ収縮するにつれて、回転速度は急激に増加するはずである。古典的な計算によれば、角運動量が取り除かれなければ、形成中の星は光速のかなりの割合に達する速度で回転することになる。しかし実際には、星はばらばらにならずに形成される。何らかの仕組みが、その回転エネルギーを取り除いているのだ。
1982年にRoger Blandford氏とRichard Payne氏が王立天文学会月報(MNRAS)の論文で初めて定式化し、1983年にRalph Pudritz氏とChristopher Norman氏が星周円盤に適用した「磁気遠心力円盤風モデル」は、その仕組みを説明する。形成中の星を取り囲む回転する降着円盤を、磁力線が貫いている。円盤が回転すると、磁力線も一緒に引きずられる。磁力線と結び付いたガス分子は、回転するワイヤー上のビーズのように、磁力線に沿って外側へ飛ばされる。磁力線が垂直方向から十分に傾くと、遠心力が重力を上回るためだ。ガスは角運動量を運びながら星系の外へ脱出する。
ガスが外側へ移動する間も円盤は回転を続け、当初はポロイダル、すなわち軸方向だった磁力線を、トロイダル、すなわち円周方向のリングへ巻き上げていく。このコルクスクリュー状の幾何学構造は、アウトフローを細いジェットに絞り込むとともに、磁気圧による追加の加速力を生み出す。トロイダル磁場は事実上、このメカニズムが働いていることを示す、目に見える指紋なのである。
NGC 1333 IRAS 4Aに対するALMAの観測は、この理論的な指紋が実在することを、初めて直接的かつ高解像度で確認したものだ。流れの軸に対して垂直で、アウトフローの回転方向と一致するという磁場構造は、磁気遠心力モデルの予測と正確に一致している。
■恒星磁場をマッピングする新たな手法
ジェット形成メカニズムの確認にとどまらず、この研究は予想外の方法論的進歩ももたらした。磁場の幾何学構造とアウトフローを流れる電流との関係を分析した結果、チームは、磁場と電流を結び付ける古典的原理であるアンペールの法則に従う、明瞭な数学的関係を発見した。この新たなマッピング手法の詳細は、Nature Communications誌の論文に示されている。
この関係は線形であり、予測可能であることが分かった。原始星アウトフローの偏波測定値があれば、天文学者は従来より直接的な数学的手法によって、そこを貫く磁場の向きと構造を導き出せる。星が生まれる領域の磁場をマッピングすることは、観測天体物理学において歴史的に最も難しい測定の一つであり、専用の偏波観測と複雑なモデリングを必要としてきた。IRAS 4Aのデータから見いだされたアンペールの法則に基づく関係は、現在、次世代電波観測施設によって調査されている多くの星形成領域へ応用できる可能性がある。その施設には、広帯域感度アップグレード(WSU)が進められているALMA自身も含まれる。
■赤ちゃん星からブラックホールまで、あらゆるスケールで共通するメカニズム
IRAS 4Aでの確認が持つ意味は、NGC 1333をはるかに超える。磁気遠心力によるジェット形成メカニズムは、生まれたばかりの太陽に似た星だけに特有のものではない。回転する降着円盤を持つ、幅広い天体で働くと考えられている。その範囲は、質量とエネルギーにおいて15桁以上に及ぶ。
スケールの対極にあるのが、超大質量ブラックホールが落下してくるガスを活発に取り込んでいる活動銀河核だ。そこでは同じ物理法則が、宿主銀河から数千光年にわたって伸びることもある相対論的ジェットを支配している。2025年11月には、別の研究チームがM87のジェットに関する偏波観測を発表した。M87は、2019年にイベント・ホライズン・テレスコープが撮影した画像で広く知られるようになった超大質量ブラックホールである。この研究では、M87のジェットが、ブラックホール近くのポロイダル磁場が支配的な構造から、より遠方のトロイダル磁場が支配的な構造へ移行していることが確認された。これは、Ching氏らが今回IRAS 4Aで直接的に捉えたものと同じ、ポロイダル磁場からトロイダル磁場への移行である。M87の偏波研究は、Astrophysical Journal Letters誌に掲載された。
一方は960光年離れた生まれたばかりの星、もう一方は5500万光年離れた銀河という2つの観測結果は、Blandford-Payneの磁気遠心力メカニズムが、宇宙におけるジェット形成の普遍的な基本モデルであることを、異なるスケールで裏付ける。この意味でIRAS 4Aは、銀河全体を形作るプロセスを小さなスケールで調べるためのモデルといえる。
■NGC 1333 IRAS 4Aの今後の展開
NGC 1333 IRAS 4Aを構成する2つの原始星、4A1と4A2は、それぞれ南北軸に沿ってアウトフローを駆動している。今回のALMAデータは、それらを取り巻く流出ガス内のトロイダル磁場を分解して捉えた。ただし、各原始星が磁場に及ぼす寄与を個別に切り分けるには、さらなる観測が必要である。
チームが特定したアンペールの法則に基づく関係は、そのための道筋を示す。ALMAの運用が続き、広帯域感度アップグレードによって感度が向上すれば、同じ偏波測定手法をより広範な星形成領域の調査に適用できる。これにより、IRAS 4Aで確認されたミリガウス級のトロイダル磁場が、クラス0原始星のアウトフローに共通する特徴なのかを検証できる。
3本の画期的な論文を通じて20年にわたりIRAS 4Aを研究してきたGirart氏にとって、2026年の成果は、崩壊する分子雲内の砂時計形磁場から始まり、アウトフロー内のらせん構造の兆候を経て、今回、実際のトロイダル磁場の特徴を捉えるに至った一連の全体像を完成させるものだ。教科書に記されてきた予測に、いまや対応する観測画像が加わった。
ALMAは、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)による国際パートナーシップであり、チリ北部のチャナントール高原にある標高約5000メートル(1万6400フィート)の地点に設置されている。
■注目ポイントQ&A
●磁場は目に見えないのに、ALMAはどのようにして星のジェット内部の磁場を検出したのですか?
ALMAは磁場そのものを直接撮影したのではなく、ジェットから放射される一酸化炭素ガスの偏波を測定しました。磁化された環境では、ガス分子は局所的な磁場の方向を反映した向きに偏った電磁波を放射します。これはGoldreich-Kylafis効果に関連する現象です。
チームは、高い空間分解能でジェット全体の偏波角をマッピングすることにより、磁場の幾何学構造を再構築しました。磁場がジェットの流れの軸に対して一貫して垂直方向を向き、流出ガスと同じ向きに回転している場合、トロイダル磁場と判定できます。従来のサブミリ波干渉計を使った観測より約30倍高いALMAの分解能により、チームはNGC 1333 IRAS 4Aでこのパターンを初めて分解して捉えました。測定手法の詳細はNature Communications誌の論文に示されています。
●なぜ赤ちゃん星は、この磁場のコルクスクリュー構造がないと自転でばらばらになってしまうのですか?
星間ガスが重力によって崩壊して星を形成する際には、元の雲が持つ角運動量が保存されます。雲は大きく希薄なため、当初の回転は遅いものの、恒星の大きさにまで収縮すると、角運動量保存の法則によって回転速度が急激に増加します。
角運動量を取り除くメカニズムがなければ、形成中の星は光速のかなりの割合に達する速度で回転し、核融合が始まる前に遠心力で引き裂かれてしまいます。磁気遠心力によるジェット形成メカニズムは、その逃がし弁として機能します。磁場によって外側へ飛ばされたガスが、角運動量の一部を星系の外へ持ち去るためです。したがって、ジェットは単なる星形成の副作用ではなく、星が形成されるために必要な構造だと考えられます。
●遠く離れた銀河にある超大質量ブラックホールのジェットも、同じ磁場のコルクスクリュー構造によって駆動されているのですか?
はい。2025年に発表されたM87銀河の相対論的ジェットに関する観測研究では、活動銀河核のスケールにおいて、同じ電波偏波観測の手法を使い、ポロイダル磁場からトロイダル磁場への移行が直接的に確認されました。
M87のジェットは、ブラックホール近くのポロイダル磁場が支配的な構造から、より遠方のらせん磁場が支配的な構造へ移行していることが示されています。これは、Ching氏らがIRAS 4Aで捉えたものと同じ構造変化です。IRAS 4AとM87の結果を合わせると、Blandford-Payneの磁気遠心力メカニズムが、960光年離れた太陽質量級の若い星から、5500万光年離れた超大質量ブラックホールまで、質量とエネルギーにおいて15桁以上異なる天体で働いていることが示されます。物理法則は同じで、異なるのはスケールです。
●新しいアンペールの法則によるマッピング手法とは何ですか? また、なぜ将来の観測にとって重要なのですか?
チームは、ねじれた磁場の幾何学構造とアウトフローを流れる電流との関係が、アンペールの法則に従う予測可能な線形パターンを示すことを発見しました。これにより天文学者は、従来は非常に難しかった偏波測定からの磁場方向の推定を、より直接的な数学的手法で行えるようになります。
ALMAが調査する多くの星形成領域にこの手法を適用すれば、星が生まれる領域の磁場構造を解明するペースを大幅に速められる可能性があります。また、形成中のさまざまな種類の星において、トロイダル磁場を伴うジェットがどの程度一般的に現れるかを説明するモデルの改善にもつながる可能性があります。
元記事: ALMA Photographs Baby Star’s Magnetic Corkscrew: First Direct Proof of Jet Formation
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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