SpaceX、Starlink衛星4,400基の軌道を引き下げへ―太陽活動低下に伴うデブリリスクを軽減

2026年8月12日 12:41

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記事提供元:Tech Times

SpaceXは、太陽活動低下に伴うデブリリスクを抑えるため、Starlink衛星約4,400基の軌道高度を550kmから480kmへ引き下げている。(写真:rarrarorro © 123RF.com)

SpaceXは、太陽活動低下に伴うデブリリスクを抑えるため、Starlink衛星約4,400基の軌道高度を550kmから480kmへ引き下げている。(写真:rarrarorro © 123RF.com)[写真拡大]

SpaceXは米国時間8月10日、Starlink衛星の打ち上げミッション「Starlink 10-19」を、打ち上げウィンドウ開始の約2時間前に延期した。同社は延期の理由を明らかにしておらず、次の打ち上げ試行を8月11日に予定している。

一方、Starlinkでは現在、太陽活動の低下に伴うスペースデブリ(宇宙ごみ)のリスクを軽減するため、約4,400基の衛星の軌道高度を引き下げる、運用開始以来最大規模の構成変更が進められている。この軌道変更により、既存ユーザーの通信レイテンシ(遅延)が改善する可能性もある。

■月曜日の打ち上げはウィンドウ開始2時間前に延期

SpaceXは米国時間8月10日、フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地にある第40発射施設(SLC-40)からのFalcon 9ロケットの打ち上げを、予定されていた午後12時20分(日本時間11日午前1時20分)の約2時間前に延期した。WKMG ClickOrlandoの報道によると、延期が決定されたのは午前10時24分(日本時間10日午後11時24分)頃だという。SpaceXは延期の理由を明示していないが、これはエンジニアが原因となった条件を評価してから公表するという、同社の標準的な対応に沿ったものだ。次の打ち上げ試行は8月11日午前10時26分(日本時間11日午後11時26分)に予定されている。

Spaceflight Nowのライブ中継によると、第45気象中隊は、月曜日の打ち上げウィンドウ開始付近で天候条件が良好となる確率を90%と予測していたが、午後になるにつれて75%に低下すると見込んでいた。気象担当者は、海風前線の発達によってウィンドウ終盤に積雲に関する打ち上げ基準に抵触する可能性があることを、主な懸念事項として挙げていた。これはケープカナベラルで夏に見られる気象パターンで、日中に内陸の暖かい空気と大西洋側の冷たい空気がぶつかって対流雲が発達し、飛行経路上の雷や雲に関する打ち上げ基準に抵触することがある。延期の具体的な原因が何であれ、月曜日の飛行を見送ったことで、悪化が予想されていた時間帯の天候リスクは回避された。

火曜日の試行に向けて、第45気象中隊は、ウィンドウ開始付近で天候条件が良好となる確率を90%と予測している。これは、月曜日のウィンドウ終盤に予想されていた条件より良好だ。気象担当者は、大西洋上の高気圧の張り出しが夜間に宇宙港の南側へ移動し、風が非常に弱い南南西風に変わることで、午前中の海風の発達が抑えられると予想している。

■1機のブースターが運んだもの:B1085が持つ異例の記録

今回のミッションで使用される第1段ブースター「B1085」は、2024年8月20日のStarlink展開ミッションで運用を開始した。Block 5ブースターにとっては、その後の重要なミッションに向けて飛行実績を積む、比較的ありふれた初飛行だった。

しかし、デビューから5週間後の2024年9月28日、B1085はNASAの「Crew-9」ミッションで、ニック・ヘイグとアレクサンドル・ゴルブノフを国際宇宙ステーション(ISS)へ送り届けた。宇宙船には2人が搭乗し、残る2席は、2025年3月までISSから帰還しなかったブッチ・ウィルモアとスニ・ウィリアムズのために空けられていた。このミッションは、B1085が次の飛行を行う前に、有人ミッションを担える信頼性を示すものとなった。

その後もB1085の飛行は続いた。NASASpaceFlightの打ち上げ報道によると、2025年1月15日にはFirefly Aerospaceの月着陸船「Blue Ghost」と、ispaceの「Hakuto-R M2」を同時に打ち上げた。別々の月着陸船2機が1基のロケットに相乗りして月へ向かったのは、これが初めてだった。Blue Ghostは2025年3月2日に危難の海(Mare Crisium)へ着陸し、Intuitive Machinesの「IM-1」以来となる民間月着陸を成功させた。

2025年3月下旬には、暗号資産起業家のチュン・ワンが資金を提供した民間極軌道宇宙飛行「Fram2」ミッションに使用された。これは、有人ミッションとして初めて地球の両極上空を直接飛行したものだ。4人の乗組員はCrew Dragon「Resilience」に搭乗し、軌道傾斜角90度で地球を周回した。この飛行がB1085にとって6回目となった。

それ以降、このブースターは米国宇宙軍のGPS III-7測位衛星、SiriusXMのSXM-10およびSXM-11放送衛星、EUMETSATと欧州宇宙機関(ESA)のMTG-S1気象衛星、さらに9回のStarlinkミッションに使用されてきた。火曜日の試行は通算18回目の飛行となる。

現在運用中のブースターの中で、有人飛行、月着陸船、民間の極軌道有人飛行、軍事用測位衛星、日常的なブロードバンド衛星群のペイロードを、すべて同じ機体で運んだものはほかにない。B1085は保有機の中で最も飛行回数が多い機体ではない。最多のB1067は2026年7月に36回目の飛行を達成している。しかし、B1085は最も幅広い分野のミッションを担ってきた機体だ。この実績は、政府機関、商業事業者、民間の宇宙飛行参加者が同じ再利用型ロケットを利用するという、SpaceXが10年かけて構築してきた運用体制を象徴している。

B1085は今回が18回目の飛行となるため、SpaceXが2026年6月のIPO前にBlock 5第1段の帳簿価額をゼロまで減価償却する基準としていた25回には、まだ達していない。一般に、この基準を超えた飛行では、機体そのものの費用はほぼ償却済みとなり、主なコストは推進剤、ドローン船の運用、飛行前の整備作業、地上燃焼試験などになる。

火曜日にB1085が飛行した場合、サウスカロライナ州沖の大西洋上、打ち上げ地点から約640km先に配置されたドローン船「A Shortfall of Gravitas」への着陸を目指す。Spaceflight Nowの打ち上げ報道によると、成功すれば同船への163回目の着陸となり、SpaceXの全着陸地点を通算したFalconブースターの着陸としては647回目となる。2021年8月に運用を開始したA Shortfall of Gravitasは、SpaceXのほかのドローン船と同様、故イアン・M・バンクスによるSF小説「カルチャー」シリーズに登場する船名にちなんで名付けられている。

■Starlink 10-19のペイロード:29基のV2 Mini Optimized衛星

火曜日のロケットに搭載されるペイロードは、29基の「Starlink V2 Mini Optimized」衛星だ。各衛星の重量は約800kgで、V1.5世代の約5倍に当たる。そのため、かつて50基を超える小型衛星を運んでいたFalcon 9は、現在では1回当たり24〜29基を打ち上げている。

質量の増加は、機能向上に伴うものだ。Starlinkの技術ページによると、V2 Miniは第1世代のV1.5プラットフォームの約4倍のブロードバンドスループットを提供する。これには、衛星と地上ゲートウェイ間のフィーダーリンクに使用される71〜86GHz帯のEバンドバックホール、通信経路の各段階で地上局を必要とせず、衛星群の内部でデータを中継できる光衛星間レーザーリンク、衛星が割り当てられた軌道位置をより正確に維持するための改良型ホール効果スラスターが含まれる。

現在の生産バッチに付いている「Optimized(最適化)」という名称は、製造面で改良された世代であることを示す。基本的なアーキテクチャを変更するものではなく、プラットフォームの構造やシステムに小規模な変更を加え、ワシントン州レドモンドにあるSpaceXの生産ラインで歩留まりを向上させるものだ。

月曜日の時点で、Starlinkの衛星群は地球低軌道上に1万800基を超える稼働中の衛星を擁し、100カ国以上で1,000万人を超える顧客にサービスを提供している。火曜日のミッションに搭載される29基は、この衛星網を継続的に拡張する一部となる。SpaceXは2026年にすでに71回のStarlink専用打ち上げを完了しており、火曜日の打ち上げが成功すれば、今年のFalcon 9の総ミッション数は93回となる。

■Starlink衛星4,400基を地球に近づける計画:ユーザーへの影響

2026年のStarlink衛星群を巡る、より重要な動きは個々の打ち上げではない。SpaceXのStarlinkエンジニアリング担当バイスプレジデント、マイケル・ニコルズが1月1日のXへの投稿で発表した、約4,400基の衛星を現在の運用高度である約550kmから約480kmへ引き下げる計画的な取り組みだ。

理由は太陽活動にあり、実施時期も重要となる。太陽の活動には約11年の周期がある。ソーラーサイクル25は2024年頃にピークに達し、現在は太陽活動が弱まる極小期へ向かっている。太陽活動が低下すると、太陽による超高層大気の加熱が弱まり、大気がわずかに収縮して、同じ高度における大気密度が低下する。

Space.comが報じた安全面の説明によると、太陽活動の極小期に高度550kmで衛星が故障した場合、大気抵抗が非常に小さいため、自然に軌道を離脱するまで4年以上かかる可能性がある。その間、衛星はほかの物体を回避する操作ができないまま、制御不能の状態で軌道上を漂うことになる。

ニコルズの発表によると、高度480kmであれば、同じように機能を停止した衛星でも、太陽活動の極小期に、より密度の高い大気の抵抗を受ける。このため、弾道的に高度が低下して再突入するまでの時間は80%以上短縮され、数年ではなく数カ月になるという。この差は小さくない。故障した衛星が何年も軌道上に残る1万基超の衛星群と、数カ月以内に再突入する衛星群とでは、軌道デブリのリスクが根本的に異なる。

太陽活動の周期とは別に、衝突確率の面でも利点がある。高度500km未満では、計画中の衛星コンステレーションや既存デブリの密度が高度550km付近より大幅に低いため、個々の衛星が制御不能な物体に接近する全体的な可能性が低下する。SpaceXは、この再配置について、ほかの衛星運用事業者、政府の規制当局、米宇宙コマンドと調整を進めている。

Starlinkを分析する衛星業界のアナリストらによると、現在のStarlinkユーザーにとって、この変更には性能面の副次的な効果もある。高度が下がれば衛星と地上との間の信号経路が短くなり、往復のレイテンシが低下する。現在のStarlinkの技術ページでは、高度550kmの軌道シェルにおけるレイテンシは約25ミリ秒とされている。高度480kmへの移行によって伝送距離はさらに短くなり、一般的なウェブ閲覧よりも、オンラインゲーム、ビデオ通話、クラウドコンピューティングなど、レイテンシの影響を受けやすい用途で改善が感じられると予想されている。

利用者側のハードウェア変更は不要だ。既存のアンテナとモデムも、通信を担当する衛星の高度が下がるにつれて、自動的に恩恵を受けることになる。

独立系衛星追跡者のジョナサン・マクダウェルは、2026年3月までに1,600基を超えるStarlink衛星がすでに降下を開始していることを確認した。高度550kmの軌道シェルにある約4,400基すべての再配置は、2026年末までに完了する見込みだ。

■2026年は軌道打ち上げ史上最も活発な年となるペース

Starlink 10-19の延期は、宇宙飛行史上最も活発な打ち上げの年になりつつある2026年における、1日だけの遅れにすぎない。SpaceXは2026年の半ばより前に80回を超えるFalcon 9の飛行を完了しており、このペースでは12月までに150回を超えるミッションを実施する見通しだった。

比較対象として、Falcon 9は2024年に132回飛行し、当時の記録を樹立した。現在、同ロケットはフロリダ州のSLC-40とLC-39A、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地にあるSLC-4Eという、東西両海岸の3つの発射台から打ち上げられている。

SpaceXは、最短9日で次の飛行に向けた整備を終えられる、約20〜24機の稼働中のBlock 5機体を運用している。アナリストらは、現在の打ち上げ頻度を制約している主な要因はブースターの供給ではなく、発射台の利用可能時間だと指摘している。TechTimesによるブースター再利用600回の節目に関する報道が説明するように、発射台が対応できる頻度を上回って飛行できるだけのブースターがそろっているという。

月曜日のような1日の延期は、高頻度の打ち上げ運用では日常的に起こる。SpaceXと射場チームは、火曜日の試行に向け、追加された時間を使ってすべてのシステムを確認する。

TechTimesのStarlink V3に関する分析によると、このミッションが成功すれば、Starshipロケットでの展開を想定し、V2の約10倍の通信容量を持つ次世代Starlink V3衛星の打ち上げが、2026年後半に始まると見込まれている。これにより、将来的には衛星群のブロードバンド性能がさらに大きく向上する可能性がある。

■注目ポイントQ&A

●SpaceXが月曜日にStarlinkの打ち上げを延期したのはなぜですか?

SpaceXは8月10日午前10時24分(日本時間午後11時24分)頃、予定されていた午後12時20分(日本時間11日午前1時20分)の打ち上げウィンドウ開始の約2時間前に、打ち上げを延期しました。原因となった条件は明らかにしていません。これは標準的な対応で、同社はエンジニアリングデータを確認し、原因を特定してから公表します。

延期は、天候、許容範囲を外れた機体システムのパラメーター、射場側の問題などに関連した可能性があります。第45気象中隊は、月曜日の午後に海風が発達するにつれ、積雲に関する打ち上げ基準へ抵触するリスクが高まると予測していました。ただし、具体的な原因は確認されておらず、ロケットやペイロードの異常も報告されていません。次の試行は8月11日午前10時26分(日本時間午後11時26分)に予定されています。

●Starlinkの軌道が550kmから480kmに下がることは、ユーザーにとって何を意味しますか?

ほとんどのユーザーにとって、日常的な利用で大きな変化が目に見えるわけではありません。高度が下がることで衛星と地上との間の信号経路が短くなり、往復のレイテンシが低下します。主にオンラインゲーム、ビデオ会議、クラウドベースのリアルタイム処理など、応答時間が重要な用途で役立つと考えられます。

より大きな効果は宇宙空間の安全性にあります。高度480kmの衛星は、故障した場合に自然に軌道を離脱するまでの期間が4年以上から数カ月へ短縮され、長期的な軌道デブリのリスクを大幅に減らせます。アンテナやモデムのアップグレードは不要で、衛星群の高度が下がるにつれて自動的に改善の恩恵を受けられます。

●ブースターB1085がほかのFalcon 9第1段と比べて異例なのはなぜですか?

多くのFalcon 9 Block 5ブースターは、Starlink衛星、国家安全保障関連のペイロード、商用衛星など、特定の種類のミッションを数多く担当します。B1085は、これらを含む幅広い分野のミッションを担ってきました。

2年足らずの間に、同じ機体がNASAの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションへ送り届けたCrew-9、Blue GhostとHakuto-R M2を月へ送るミッション、4人を極軌道へ運んだFram2、米軍のGPS衛星、商用放送衛星、9回のStarlinkミッションに使用されています。火曜日の飛行は18回目となります。回収された単一の第1段がこれほど幅広いミッションを担ったことは、SpaceXの再利用型ロケット運用が多様な用途に広がっていることを示しています。

●SpaceXは2026年に何回のStarlink打ち上げを実施しましたか?

8月10日月曜日までに、SpaceXは2026年に71回のStarlink専用打ち上げを完了しています。火曜日の試行が成功すれば、Starlink 10-19は72回目となります。

同社は2026年に合計92回のFalcon 9打ち上げを実施しており、火曜日のミッションが93回目となる予定です。Falcon 9は2024年に132回打ち上げられ、当時の記録を樹立しましたが、2026年の打ち上げペースはこれを大幅に上回る見込みです。

元記事: SpaceX Lowers 4,400 Starlink Satellites as Declining Solar Activity Raises Debris Risk

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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