HBM不足でレノボのAIサーバー受注残が210億ドルに、中国「信創」政策が需要を後押しも供給がボトルネックに

2026年6月30日 20:47

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記事提供元:Tech Times

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レノボのAIサーバーにおける未納入の受注残高が210億ドル(約3兆4020億円、1ドル=162円換算)に達したことが明らかになった。これは、AIサーバーに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)の深刻な世界的大不足が背景にあり、需要に供給が追いつかない状況を示している。この供給制約は、AIインフラの急速な拡張を進める企業や、中国の国産化政策「信創(しんそう)」に対応する企業に直接的な影響を及ぼしており、不足状態は2027年後半まで続く可能性が指摘されている。

■HBM不足がもたらす「210億ドル」の受注残

MWC上海2026において、レノボのAIサーバーにおける未納入の確定受注残高が210億ドル(約3兆4020億円)に達していることが明らかになった。これは中国のAIインフラ競争の激しさを物語ると同時に、サプライチェーンの供給能力が需要に大きく遅れをとっている現状を浮き彫りにしている。

レノボのインフラストラクチャー・ソリューションズ・グループ(ISG)は、2026年度末に過去最高となる19.2億ドル(約3兆1104億円)の通期売上高を報告し、第4四半期単体でも前年同期比37%増を記録した。しかし、製品の出荷ペースを上回る速度で新規受注が舞い込んでいるため、受注残は膨らみ続けている。この問題の本質はレノボの販売力ではなく、同社が製造するすべてのAIサーバーの心臓部に位置するコンポーネントの供給不足にある。

■AIサーバーの構造的課題:3社が牛耳るHBM市場

標準的なエンタープライズ向けサーバーは、CPUやDRAM, ストレージ、電源などを代替可能な複数のベンダーから調達して製造できる。しかし、AIサーバーは根本的に異なる。レノボのフラッグシップであるラック型システム「GB300 NVL72」は、72基のNvidia Blackwell Ultra GPUと36基のGrace CPUを1つの液冷ラックに統合し、135〜155キロワットの電力を消費する。これらのGPUは第5世代のNVLink技術で相互接続され、秒間130テラバイトの内部ファブリックを形成することで、ラック全体が1つの巨大な演算ドメインとして機能する。

各Blackwell Ultra GPUは279ギガバイトの高帯域幅メモリ(HBM)を搭載している。HBMは、複数のDRAMダイを垂直に積層し、GPUの横に配置する特殊な3Dチップアーキテクチャであり、GPUあたり秒間8テラバイトを超えるデータ帯域幅を実現する。この性能は、AIの学習や推論に不可欠な行列演算において代替不可能である。

しかし、サムスン、SKハイニックス、マイクロンの3社が世界のHBM生産の約95%を支配しており、これら3社は2026年分の生産枠をすべて完売している。さらに、ウェハーをHBM生産にシフトすると、標準的なDRAMの生産量が3分の1に減少するため、2026年第1四半期だけでエンタープライズ向けDDR5の価格が90%急騰した。世界シェアの約61%を握るSKハイニックスは、この不足が2027年後半まで続く可能性があるとアナリストに警告している。レノボにとって、受注残の増加は実行力の低さではなく、代替不可能な供給網のボトルネックを証明するものとなっている。

■中国独自の要因:「信創(xinchuang)」政策の影響

レノボの膨大な受注残は、世界的なAI需要だけでなく、中国独自の構造的要因も反映している。それが、中国政府が主導する「信創(しんそう)」イニシアチブである。この政策は、国有企業や政府機関に対し、外国製の技術を中国国内製のハードウェアやソフトウェアに置き換えるよう義務付けるものである。

この義務化により、中国国内のAIサーバーベンダーにとっては、欧米の競合が参入しにくい巨大な調達市場が形成されている。しかし、この市場におけるレノボの競争相手は、国内の強力なライバルである。中国サーバー市場で長年の実績を持つ浪潮(Inspur)や新華三(H3C)は、国有企業や通信事業者との間に深いパイプを持ち、激しいシェア争いを繰り広げている。レノボが信創市場で優位に立つには、国内のGPUやCPUメーカーの製品との適合(クオリファイ)を進める必要があるが、国内のチップメーカーも生産能力を立ち上げている最中であり、調達のリードタイムには不確実性が伴う。

■拡大するAI投資と競合他社の動向

レノボの楊元慶(ヤン・ユアンチン)CEOは、2026年5月22日の決算説明会において、2026年度を「創業40年の歴史の中で最高の年」と評した。AI関連の売上高は前年比84%増を記録し、グループ全体の売上高の38%を占めるまでに成長している。同氏は2年以内にグループ売上高1000億ドル(約16兆2000億円)に達するという目標を掲げているが、これを達成するには、新規受注を獲得するだけでなく、滞留している受注残をいかに早く出荷に結びつけるかが鍵となる。

Bloomberg Intelligenceのアナリストであるスティーブン・ツェン氏は、需要がハイパースケーラー(超巨大クラウド事業者)から一般企業のAI推論用途へと拡大していることが、レノボやデルのような従来型サーバーOEMに恩恵をもたらしていると指摘する。また、DBSグループのアナリストであるジム・ヒン・クオン・オー氏は、レノボの「グローバル・ローカル」なサプライチェーン構造がメモリ価格の高騰に対処する上で有利に働き、AI PCやMotorola製スマートフォン、エンタープライズインフラにわたる「複数の収益化レイヤー」を創出すると分析している。

競合他社の動向もこの傾向を裏付けている。デル・テクノロジーズは、直近の四半期においてレノボの2倍以上となる513億ドル(約8兆3106億円)のAIサーバー受注残を抱え、通期のAIサーバー売上高見通しを600億ドル(約9兆7200億円)に引き上げた。ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)も、AIサーバーの受注残が「過去最高」であると言及しており、業界全体で需要が供給を上回り、メモリが最大の制約要因となっている。

■市場シェアと中国の法的枠組みに伴うリスク

レノボは世界のAIサーバー市場で約11%のシェアを保持しており、デル(20%)やHPE(15%)を追いかける立場にある。同社の「GB300 NVL72」プラットフォームは2026年度第4四半期に最初のユニットが出荷され、次世代のRubinベースのプラットフォームは2026年後半の投入を目指している。

一方で、中国に拠点を置く大手テクノロジー企業として、レノボが置かれている法的環境は、エンタープライズの調達担当者が理解しておくべき重要な要素である。中国の2017年国家情報法第7条は、すべての中国の組織および市民に対し、国家の情報活動への支持、援助、協力を義務付けている。この規定の実質的な適用範囲については法学者の間で見解が分かれており、明確な強制メカニズムや範囲は定義されていないと指摘されているが、構造的な法的義務は企業のプライバシーポリシーやサーバーの物理的な所在地に関わらず存在する。レノボは顧客データを不適切に共有している事実はないと公に否定しているが、機密性の高いワークロードを扱う企業は、この法的枠組みを調達時のデューデリジェンスの一環として独自に評価する必要がある。

■注目ポイントQ&A

●2026年にAIサーバーが不足している理由は何ですか?

構造的な要因によるものです。NvidiaのAIアクセラレーターに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)は、世界でSKハイニックス、サムスン、マイクロンのみが生産しており、3社とも2026年分の生産枠を完売しています。最新のNvidia Blackwell Ultra GPUは1基あたり279GBのHBM3eを搭載し、8TB/sの帯域幅を実現しますが、この性能は3D積層DRAMでしか達成できません。新規の生産能力増強には18〜24カ月かかるため、不足はすぐには解消されない見通しです。

●レノボのAIサーバー受注残は競合他社と比べてどうですか?

デル・テクノロジーズは2026年中期時点で513億ドル(約8兆3106億円)の受注残を抱えており、レノボの210億ドル(約3兆4020億円)の2倍以上となっています。HPEも受注残が過去最高であると述べており、業界全体で需要が供給を上回る状況が続いています。主な制約要因はNvidiaのGPU割り当てと、それに必要なHBMの不足です。

●「信創(しんそう)」とは何ですか? レノボの中国ビジネスにどう影響しますか?

信創(情報技術応用革新)とは、中国の国有企業や政府機関において、外国製技術を自国製のハードウェアやソフトウェアに置き換えることを義務付ける政府主導の政策です。レノボにとっては、欧米の競合が参入しにくい国内需要を取り込む機会となりますが、同時に浪潮(Inspur)や新華三(H3C)といった国内競合との激しい競争も生み出しています。また、信創基準を満たすには国内のチップメーカーとの提携が必要ですが、それらのメーカーの生産能力はまだ立ち上げ段階にあります。

●中国国外の企業はレノボ製AIサーバーの導入を検討すべきですか?

レノボのAIサーバー(GB300 NVL72など)はグローバルに展開されており、同社は世界のAIサーバー市場で約11%のシェアを保持しています。ただし、機密性の高いデータを扱う企業は、中国の2017年国家情報法第7条が定める、国家の情報活動への協力義務という法的枠組みを考慮する必要があります。レノボは不適切なデータ共有を否定しており、同条文の実質的な強制力については議論がありますが、安全保障や重要インフラに関わる調達においては、これをリスク要因として評価することが推奨されます。

元記事: Lenovo AI Server Backlog Hits $21 Billion as HBM Shortage Stalls China’s Compute Race

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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