インドの消費減税は、トランプ関税への切り札となるか?

2025年9月23日 11:29

印刷

●インドが米関税対策で減税が好感され株高

 インドが、消費税に当たる物品・サービス税(GST)を減税する。

【こちらも】マスク氏がテスラ株を大量購入、その狙いは?

 現行12%の税率が適用されている食料品や日用品のうち、99%の品目を5%に引き下げ、家電や自動車など28%の税率の品目のうち、90%を18%に引き下げる。

 大型減税によって消費が大幅に押し上げられるという期待感から、インドの主要株価指数SENSEXが、2カ月ぶりの高値となった。

 ロイター通信によると、インドのナゲシュワラン主席顧問は9月10日、米国の関税がGST減税によって一部相殺されるとの期待感を示している。

 日本でも消費税減税が期待されているが、インドのGST減税は株価を押し上げ、トランプ関税対策の切り札になるのだろうか?

●下落傾向だったSENSEX

 インドは、若年層が多い人口ボーナス期で高い経済成長率が期待される新興国である。

 2014年に就任したモディ首相は、製造業の振興策「メイク・イン・インディア」が奏功し、さらに第2次政権では、「デジタル・インディア」により、2025年までに1兆ドル(約147兆円)のデジタル経済拡大を目指している。

 ただここ数年は、米国の利上げによって通貨安が進むなど、新興国通貨ならではの弱点が見られた。高金利政策を続けざるを得ず、企業にとっては打撃を受けやすい。

 トランプ米大統領は、インドがロシア産の原油や武器を購入していることを問題視して圧力を強めており、株価も2024年9月の最高値から2025年3月までの半年で約15%下落していた。

 8月からは、米国は関税を50%に引き上げている。

●切り札になるのか?

 インドは、GDPの6割を民間消費が占める内需大国で、今回の減税により年間19兆8,000億ルピー(約33兆6,600億円)の消費拡大が見込まれ、GDPも0.6ポイント押し上げられるとの試算もある。

 モディ首相は9月20日の演説で、外国の製品使用を取り止め、自給自足を進めるように国民に呼びかけた。

 GST減税が、米関税によるインフレ圧力の緩和に繋がるとの期待や、製造業の成長を促し株価の上昇へ繋がるとの期待もある。

 一方で、消費刺激による需要急増でコストが上昇し、物価高を招くリスクもある。輸出企業が内需企業へと急激に転身できるかという疑問もある。

 コロナ禍で消費減税が導入された国は多かったが、トランプ関税への対策として、インドの消費減税がどれほどの効果があるか注目である。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事