日本製鐵が”アメリカの誇り”USスチール買収と発表して、湧き上がる「反対」の声! (2)

2024年2月20日 16:13

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 2つ目は、総額2兆円と言われる買収資金の問題だ。当面の原資は国内の主要取引銀行からの融資を受ける確約があると言うが、借入金が増加すると負債比率が高まり財務効率が悪化する。

【前回は】日本製鉄が”アメリカの誇り”USスチール買収と発表して、湧き上がる「反対」の声! (1)

 買収が円滑に進んだとして、その後「資本構成を見直して最適な資金調達手段」を検討する方針なので、株式の希薄化を嫌う株式市場の思惑に反して「増資」に進む可能性が高い。そんな事態になっても、現在の株主が鷹揚に構えているかどうかは不透明と言わざるを得ない。

 3つ目は、労働組合が日本製鉄の買収に反対していることだ。全米鉄鋼労働組合(USW)は、全米粗鋼生産第2位のクリーブランド・クリフスが買収に名乗りを上げた時には、後押しをするほどの歓迎振りだった。売却先が日本企業に変わったことで、ナショナリズムが刺激されたかのように、感情的な表現を連ねた非難声明を出した。

 アメリカの労働者が日本企業に理不尽な憤りを露わにして、抑えがたい感情を示すことは今までも度々見られたことだ。

 4つ目は、今秋の大統領選挙がらみの有力候補2名が揃って「日本製鉄による USスチール買収に反対する」と見られることだ。トランプ前大統領は1月31日に全米トラック運転手組合の幹部と面会後、「瞬時に阻止する。絶対にだ」と記者団に語った。

 2月2日には、「バイデン大統領が(買収に反対するUSWの)背中を押してくれる確約を得た」と、USWが声明を発表した。バイデン大統領は全米自動車労働組合(UAW)の賃上げにも大きな役割を演じて、労働者の思いを引きつける手管を覚えたばかりだ。

 大統領候補者が2人とも、ポピュリスト(大衆迎合主義者)のような態度を示している。外国からの買収や投資は対米外国投資委員会(CFIUS)の審査対象になり、通常3カ月ほどの審査期間を要すると見られているが、妙な火種を残したくないCFIUSが、大統領選が終了するまで金縛り状態になりかねない。

 万が一、万策尽きて買収を断念する事態に陥った場合、日本製鉄はUSスチールに「リバース・ブレークアップ・フィー(RBF)」として、5億6500万ドル(約836億円)もの違約金の支払いを迫られる。

 買収策を主導した橋本英二社長は、4月1日付で会長に就任し今井正副社長が後任社長に就任する。USスチールの買収は橋本氏が主導すると見られるが、21年にはトヨタ自動車に特許権侵害による損害賠償を請求して提訴に持ち込んだ剛腕だけに、今後の成り行きが注目される。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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